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2007年01月21日
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カテゴリ:外国映画 あ行
見よう見ようと思いながらなかなか手がでず。今頃です。

潔癖症の人間が増えましたが、それも度を越すとさすがにこの人危ないよと思うものですが。人が触ったものは触りたくないとか、他人が触れたドアノブに触るのもいやとか、電車の座席に座るのもいやとか。

でも、そういう極度の潔癖症が、精神とか、自分の行動、価値観、道徳観、倫理観の部分で現れるとどうなるのでしょうね。ちょっとした悪行も許せないほどまで行くとなるとそうとう怖いんじゃないのかなと思う。たとえば大概の人なら、信号が赤でも、無視してちょろっとわたっちゃったり。会社の備品をいただいちゃったりとかね。悪いことって知りつつやっちゃったりしてるよね。

でも、それがものすごく厳格に育てられてちょっとした悪行も許せないほどの感覚、価値観を持ってしまった場合は。

エミリー・ローズはアメリカの片田舎の非常に厳格なカソリックの家庭に育っています。そして、都会の大学にやってきます。そこで知り合った友人の誘いによって彼女は今まで田舎の自宅にいた頃は決してありえなかった悪いことをしてしまう。それが何だったのかはわかりませんが、私たちにすればそのくらい誰でもやっているようなちょっとしたこと。けれど、厳格な家庭に育ち、牧師さんからも、「聖人と呼んでもいい」と言われるほど潔癖であった彼女とっては、とてもシッョクなことだったにちがいありません。その罪悪感は少しづつ彼女の中で、彼女のこころを苦しめ、責めたて始めていきます。

「あんな悪いことをするなんて私はいったいどうなってしまったのだろう。私はもう悪魔と同じだ。私の中には悪魔がいるんだ。そうだ。あれはきっと私の中に入り込んだ悪魔のせいに違いない。」そんな考えがだんだん彼女を侵食し始め、とうとう悪魔にのっとられたという彼女の意識は実際に彼女の精神状態や肉体を犯し始める。

悪魔つきのようになった彼女は、微妙に精神疾患とはちがいます。罪悪感による精神的な恐慌状態にある彼女に医学による薬は効くはずもない。
彼女自身の罪悪感を消し去らない限り直るはずはありません。だから、じっくりと考え自分の内面を見つめ直さなければいけないその状態の時に薬によって脳の考える機能を麻痺させてしまったのではだめなのです。

裁判ではまず、医学的な治療の観点から論じられていきます。当たり前なことですが。

精神疾患だったのだから、きちんと治療薬を投与していけばよかったはずなのに、それをしなかったから彼女は死んだのだと。この部分にまさに現代医療の問題点を見るような気がします。医療にかかる上で現代の科学技術医療技術があくまで開発途上のものなのに、今の最新治療を施しているのだから、必ず直るはずだし、自分たちは正しいことをしているのだと彼らは言う。ここにまさに今の医学の傲慢と科学の傲慢さを感じます。

つまり、現代の人間に精神的な疾患が増え、うつ病やそのほかの精神的な病理が増えたのも、実は科学技術の発達により、いままであった精神的なものや宗教があまりにも否定され、追い払われてしまったということによるのではないかということです。

医学にはたしかに精神科という人の心の部分を直そうとする分野もあります。

そして、科学の発達により、悪魔つきや悪魔祓いが精神的な疾患によるものだという科学の光があてられ、解明されたように見えます。けれど、うつ病やいじめや自殺のような精神的病理が医学の力で直せるものであるのなら、それでもなお、現代社会に精神的な追い詰められおかしくなっていく人間が増え続けていくのはなぜなのでしょう。それは、精神医学がまだまだ発展途中であること、そして医学だけでは直せない、あるいは、予防できないものだからなのではないでしょうか。

人は善という光だけでは生きていけない。どんな人間の中にも闇の部分、悪魔の部分はあるのですから。そういう人の心の闇の部分を拾い出し、許しを与え、自分を責めて苦しむ人々の精神を救い、予防するための装置として、宗教は全世界のいたるところに古代から現代まで、決してなくなることなく、あり続けたのではないかと思います。

戦争映画を見ていると、戦士たちは「神様。自分たちをお守りください」と念じながら、戦闘に向かい、「きっと自分たちの神は自分たちを守り、勝利に導いてくれるはずだ」と信じています。これが、戦闘する両方の兵士たちがどちらも神に対してそう祈るわけです。変な話ですよね。神という存在は一つであって、どんな宗教の形をとっていても、その神は共通の一つのものだし、人が善行をするように導いているはずなのに、おたがいを殺しあおうとするそれぞれの兵士たちに味方するなんて。
けれど、兵士たちは、相手を殺さなければ自分が殺されてしまうから、なんていう理由だけで、人間を殺した罪悪感をそんなに簡単に消し去れるものでしょうか。本当は悪いことをしていることにきずいているはずです。だからそのままなら、こわれてしまうかもしれない兵士たちの精神を守るための保護装置がまさに、宗教なのではないのかなと思うのです。神様はきっと自分を味方し、まもり、たたえてくれるはずだと。

けれど、現代社会は科学によってそれらの宗教の存在を否定し、軽視し、取り去ろうとさえしてきてしまった。人が宗教なくして、自分の意志と精神力だけで自分の心を守るというのは、かなりきついのではないかと思います。強い人もいますが、弱い人もいます。そして、とても、正直で素直でまじめで感受性の特別に高い人間であれば、それはさらにきついことなのではないでしょうか。

悪魔祓いというのは、そういう人の精神の追い詰められた心の状態を解きほぐすための儀式化された手法であると思えます。昔から、その手のデリケートすぎる人たちを救うためにつくられ、システム化マニュアル化によって、ある程度のレベルの宗教従事者、(たとえば神父とかまたは牧師とか、僧侶とか、)でも出来るように作られたものなのでしょう。

科学はそれらを非科学的で意味のないものだと否定してきました。そして、その一方で、精神医学を開発してきましたが、まだまだ研究の途中なのですから、それらが、宗教のもつ意味に到達するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。けれど、そういう人の心と部分と宗教のからみを研究している一人の学者が映画の中にもでてきます。まさにこのシーンこそがこの映画の大事なところですが、彼女の説明を理解しきるのはかなりむずかしいのではないかと思えます。

さて、映画の最後の方でエミリーの手紙が読まれ、エミリーが聖母マリアに出会い、マリアの言葉によって生きることをうけいれることが語られます。

「私の中の悪魔をどうしても追い出すことが出来ない」とエミリーはいいます。
マリアは応えます。
「悪魔は貴方の中から出て行くことはありません。貴方はその良き心だけを持って今私と一緒に来れば楽になれますが、それでも、それらの六体の悪魔とともに生きていく道もあるのですよ」と。

人の中には、善の部分と悪の部分があってそのどちらも切り捨てることは出来ないし、それらが自分の中にあることを認め、受け入れ、その苦しさに耐えながらもなお生きていかなければならないのだと、エミリーはこのとき初めて気づいたのでしょうか。そして、自らの手に聖痕を作ります。それは奇跡でもなんでもなく、エミリーが自分で自分の手を有刺鉄線にさして、作ったもの。彼女がそれを意識してやったのか、無意識にやったのか。けれど、人はすべてキリストの末裔であり、キリストが人の罪を背負ったように、自分もまた、人の罪を背負って生きていかなければならないという覚悟だったのかもしれないと思うのですが、どうでしょう。

けれど、皮肉にも、過渡の拒食によってすでに彼女はその命を保つことが出来なくなってしまっていたのでした。悪人である自分は生きていくためにものを食べる価値もないのではないかと、そうい意識が彼女を追い詰めていったその結果なのでしょう。

きちんと正しく生きることは大切だけれど、それが過渡になりすぎたり、潔癖になりすぎたり、厳しくなりすぎたりするのは良くないんでしょうねえ。ま、何事もほどほどにってことで。

ところで、山岸涼子の『天人唐草』を思い出しちゃった。厳格な父親に育てられた主人公が最後にとうとう精神的におかしくなってしまう話。これを読んだ当時私はまだ若かったので、このお話はものすごく怖かったんですよ。今でも怖くて絶対二度は読めないなあ。



      


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最終更新日  2007年01月21日 11時58分09秒
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