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2007年10月19日
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カテゴリ:外国映画 は行
ファンタジーは好きです。だから、ファンタジー映画はなるべくもれずに見たい。というわけではるばる銀座のシネカノンまで見に行った。しかも、シネカノンは、上向いてますね。知らない間になんと劇場が増えていた。いままで、有楽町のビックカメラの上にあったシネカノンがいつのまにか、シネカノン有楽町一丁目にになっていて、最近新しく出来た銀座イトシアにシネカノン有楽町二丁目という新しい劇場が出来ていた。すごい。

シネカノンは、いまどきのシネコンとは一線をかくして、ちょっとそこいらでは観ることのできないような、くせのある名作を上映しています。

だから、期待していったんだけど。ちょっとなあ。

  パンズ・ラビリンス

ダークファンタジーなんだそうで、見ていて目を覆いたくなるような残酷なシーンも出てきますし。話はチョー暗いし。

1940年代のスペイン。内戦のさなか。軍とゲリラの闘争を背景に、大尉と再婚した母につれられて、ゲリラ戦の激しいとある山中に引っ越してくるヒロインオフェーリア。そこには、パンズラビリンスという不思議な遺跡があった。

そしてこの大尉。継父となるはずなのなのだが、この大尉がものすごく残酷な男。当然オフェーリアは、なつかない。

ファンタジーを通しての、スペインの内戦をテーマにした話なのか、内戦を背景にしたファンタジーメインの話なのか。と、一瞬戸惑う。けれど、この大尉の残虐さはあきらかに、性格異常としか思えない。捕まえたゲリラの顔面になんどもナイフを差したり、妊娠した妻が危なくなってきたら、妻が死んでもいいから、子供の方を助けるように医師に言う大尉。彼は妻を愛しているわけではなくて、自分の分身としての息子がほしいだけなのだ。だから、義理の娘となったオフェーリアにも当然冷たい。というより、まったく、関心すらない。

内戦のさなかという状況で相手がゲリラだから、大尉がどんな残酷なことをしても、非難されないけれど、平和な時代であれば、明らかに、性格異常か、変質者。今の日本でも、同居する子連れの妻(女、恋人)の自分とは血のつながらない子供を義理の父親(男、あるいは恋人)が殺してしまう事件が最近何件かあるけれど。まさに同じことだと思う。

この母親はなぜこんなひどい男と結婚したのか。こんな男の子供を妊娠したのか。かなーり不思議である。ヒロインの母親なのに、存在感がない。

内戦の悲惨を語っている映画ではないと思う。見ていて悲惨なのは、あくまでこの大尉の残虐な行動の部分であって、内戦ゲリラ戦自体ではないのだ。ただ、この継父が、戦争という状況の中で大尉という役職ゆえにその悪行が問われないだ。もっともそれゆえにまた、大尉はラストにゲリラによって殺される。平和な時代には、法によってさばかれるから、場合によって納得のいかない甘い判決である場合もあるけれど、内戦の最中ゆえにゲリラによって殺されうるのだ。

そして、その悲惨な日々の中で、オフェーリアは、パーンに出会う。かつて地下にある妖精の王国の王女であった彼女が、ふたたびオフェーリアとして、肉体を持って生まれ変わったのである。らしい。彼女がもう一度父王のまつ地下王国に戻るための案内人なのが、このパーンなのだ。パーンは、オフェーリアが地下王国に戻るためにいくつかの課題を出す役割なのだ。

このパーンのデザインと作りがなかなかうまい。こういうクリーチャーが不出来だと途端にファンタジーとしての物語は地に落ちるほどに白々しくなるものだから。

それから、大尉と重なる存在としてのモンスターの作りもなかなかすごい。かなり怖い。

多くの客を招いて、大きなテーブルいっぱいのご馳走を振舞う大尉が座っていたホスト席に、オフェーリアが使命を果たすために行く幻想世界のモンスターもまた、テーブルいっぱいのご馳走とともに、座っている。このモンスターが大尉をあらわしているのは明らかだ。

これは、ファンタジーであるけれど、オフェーリアがみているパーンや、妖精やモンスターが、ほんとうにある世界なのか、彼女の幻想世界でしかないのか。ちょっとわかりにくい。物語のラストで、オフェーリアと一緒にいるはずのパーンは大尉には見えないのだ。

物語のラストは、ファンタジーとしては、よくあるパターンの結末で、ちょっと物足りない。結局こんな終わり方だったのかとがっかりした。いろんな雑誌などでは、すばらしいファンタジーだと絶賛されているのだけれど、私にはどうも、そうは見えなかった。

大尉を必要以上に残虐な人間にすることで物語の悲壮感を際立たせただけで、オフェーリアにとって悲惨なのはその部分だ。結局お産のあと、母親は死んでしまうし、山荘から逃げ出そうとしたオフェーリアはつかまってしまう。そして、最後には大尉に撃たれて死んでしまう。(駄作なのでネタバレします。というか、最初でわかるんだけど。)そのことで彼女は地下王国に戻れるけれど、はたしてこれは、ハッピーエンドなのか。アンハッピーエンドなのか。

悲惨な現実からの逃避の場としての幻想世界を描いてあるだけで、ダークファンタジーとして各雑誌の映画レビューなどで褒め称えるほどのいい作品とは、私には思えなかった。

ただ、平和な社会なら、あきらかに性格異常の犯罪者として断罪されるような人間が、社会的に評価され出世してしまうというところに、戦争や内戦の怖さがあるのだなとも思えた。


        


パンズ・ラビリンス@映画生活







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最終更新日  2010年12月11日 10時38分55秒
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