肺と腎強める冬虫夏草冬虫夏草は古来、中国で不老長寿、滋養強壮の高貴薬として珍重されてきました。肺と腎を強める働きがあるため、他の生薬と組み合わせて、肺気腫や喘息の根本治療によく使われます。チベットに隣接する中国青海省産のものが最上質とされ、最近日本にも青海冬夏泉のようなドリンク剤が輸入されています。中国漢方には「肺は呼気をつかさどり、腎は納気をつかさどる」という言葉があって、呼吸を肺と腎の共同作業とする考え方があります。つまり、空気を吐き出す(呼気)のは肺の力だが、吸い込んで(吸気)、下腹部の丹田に納めるのは腎の力だとしています。喘息や気管支炎の慢性の発作に悩む患者の中には、体力の消耗から、話すのも、息を吸い込むのもつらいという人がいます。この場合、肺や腎を強化することで、よい結果を得ることが多いのです。 冬虫夏草が配合されている漢方製剤で、唯一日本に輸入されているものに、双料参茸丸があります。処方の中身は、人参や黄耆のように肺の働きを高めるものと,蛤介(オオヤモリ)や鹿茸のように腎を強化するものに大別されます。処方中にあって冬虫夏草は、肺と腎の双方に働きかけるとともに、他の生薬の効果を高める触媒のような働きをしています。双料参茸丸は全体として温性なので、肺腎陽虚(冷えを伴う機能低下)からくる呼吸器系疾患の根本治療に、理想的な処方といえます。 路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1994/10/30 讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』に掲載された原文です。
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