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テーマ:おすすめ映画(4017)
カテゴリ:日本映画
夏目漱石の名作「夢十夜」を、10人の監督が1夜ずつ作っていくという話題の映画です。
「平等に」ということで、ベテランも若手も、製作費は同じ。 あとは「自由に撮ってください」。だから、まったく色の違った10作品が揃いました。 さあ、一体あなたはどれが見たい? 以下が、監督名と主演俳優です。 第一夜:実相寺昭雄(小泉今日子、松尾スズキ) 第二夜:市川崑(うじきつよし、中村梅之助) 第三夜:清水崇(堀部圭亮、香椎由宇) 第四夜:清水厚(山本耕史、菅野莉央) 第五夜:豊島圭介(市川実日子、大倉孝二) 第六夜:松尾スズキ(阿部サダヲ、TOZAWA、石原良純) 第七夜:天野喜孝・河原真明(声・Sascha、秀島史香) 第八夜:山下敦弘(藤岡弘、山本浩司) 第九夜:西川美和(緒川たまき、ピエール瀧) 第十夜:山口雄大(松山ケンイチ、本上まなみ、石坂浩二) 私の感想。 とにかく、松尾スズキの第六夜が、群を抜いて面白かった。 大体「運慶」の第六夜は、原作でも十話中屈指の話。 その筋にのっとり、ものすごいテンポで松尾ワールド全開! 満員の試写室、思わず大爆笑。 主人公の阿部サダヲ、運慶役のTOZAWAのエネルギー圧巻。 オチも含めて、スキのない作りでした。 笑いの中にも話は深い。 もしかしたら、漱石を越えたのでは? 帰りに原作を読みながら、そこまで思わせた秀作でした。 市川監督は、さすが。 「第二夜」とタイトルが出てきたその瞬間、 「これは市川作品だ」とわかるからすごい。 作りもサイレント風で、形式美にこだわり、すばらしかった。 モノクロの中に「朱」が映えます。 製作サイドの話では、今までに夏目作品を映画化している大御所・市川監督に ダメモトでオファーしたところ、すぐにOKが出たとのこと。 90歳の御大は、楽しんでこの小品を作ったようです。 もっとも「漱石」らしさが滲む作品ではないでしょうか。 「ゆれる」が評判の西川監督も、第九夜で持ち味を発揮しています。 原作にある「語り手=漱石」の視点を残しつつ、 設定は換骨奪胎。そこに女性の心理を描写して、親と子の内面に迫ります。 「夢」というハコをうまく使ってあっぱれ、です。 清水崇監督の第三夜は、筋に忠実ながら、漱石自身を描いて見ごたえがありました。 主演の堀部圭亮・香椎由宇のすっとぼけた会話が、 ホラーとしての底流とのコントラストを際立たせ、奥行きを作っています。 私好みは、以上の4話でした。 とはいえ、他の話にもついついひきこまれ・・・。 故・実相寺監督の第一夜は、オープニングにふさわしい不可思議世界。 脚本も故人の久世光彦です。 ものすごーく気持悪いんだけど、 実は原作をそのままなぞって作っているというのが、第十夜。 脚色は漫☆画太郎。 ここまで自分ワールドのオリジナリティを大切にしつつ、 漱石のユメをきちんと伝えているのは、見事というしかありません。 ただ、市川崑の10分を見るために、 この10分も見させられる常識的マダムたちは、 ちょっと気の毒かもしれない。目をそむけたくなるシーンあり。 でもよくできてる。印象、強いです。 飛ぶ鳥を落とす勢いの松山ケンイチもいいが、安田大サーカスのメンバーも好演。 「世にも奇妙な・・・」的なセピア色ドラマが第四夜、 ちょっとホラーなサイコ映画が第五夜、 藤岡弘の存在感満点な第八夜、 そして唯一のCGアニメ、第七夜。 110分とは思えない、中味の濃さ! そしてバラエティに富んだ表現方法。 普段見たことのない監督作品への 未知への扉を開ける鍵となるかもしれませんね。 1月27日より、シネマスクエアとうきゅう、シネリーブル池袋などで、いよいよ全国公開です。 *2006年12月8日のMixi日記をもとに書き直しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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