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カテゴリ:日本映画
フリーライターの明日香(内田有紀)は、締め切りを抱えている。
初めての連載コラムだ。 しかし、書けてない。 その800字が、書けてない。 日々の取材はてんこ盛り。 家に戻ればもう深夜。 パソコンの画面の中で、活字が生まれたかと思うと、また消える。 催促の電話が、メールが、携帯に続々かかってくる・・・。 「たかが800字が、なんで書けないの???」 私は内田有紀のように若くも美しくもないけれど、 フリーのライターをやっている。 彼女がこの状態からOD(オーバードウズ=薬を過剰に飲むこと)に陥ったことは、 私も一歩間違えばこれか?という戦慄を感じさせた。 ・・・などというと、 ものすごーく深刻なおハナシに聞こえるかもしれませんが、 そこは松尾スズキ、 ありえないほど爆笑・失笑・唖然の展開が続きます。 「薬を飲んで倒れた」状態を「自殺」と勘違いされて、 運び込まれた精神科の入院病棟。それも、「閉鎖」病棟。 精神科の入院患者が「私は正常です」とマジな目つきで言うことが、 どれほど説得力を持たないか。 医者や看護師とのやりとり、 他の患者との交流、 「正常」な世界から「異常」のレッテルを勝手に貼られた悲喜劇を、 その深刻さなんかどっかに吹き飛ばして、ものの見事に描いています。 しかし。 ただの「異常者イジリ」とは違うのです。 明日香は追いまくられる生活から遮断されて、 いやおうなしに自分と向き合うようになります。 物語が進んでいくうちに、明日香がなぜODになったかが少しずつ明らかに。 前のダンナのこと。 今のダンナとのこと。 仕事のこと。 親のこと。 そして・・・。 この「クワイエットルームにようこそ」は、明日香が入院していた2週間という限られた期間の物語。 「入院」によって、 彼女がありのままの自分をまっすぐ見られるようになって 「社会復帰」するまでを綴っているのです。 女ならば誰でも抱える悩みの数々が、 明日香や、他の入院患者たちの人生から浮き彫りになっていきます。 松尾スズキよ、 あなたには、どうしてそんなに女のナヤミがわかるんスか? 「これって、私のこと?」 きっと誰もがそう思うでしょう。 「じゃあ、私も入院しろってこと?」 「異常」と「正常」の境など、どこにだって線が引ける。 ある瞬間、 入院病棟が、温かくさえ感じられる。 傷つきやすい人々が守られている空間。 立ち止まることの大切さをおしえてくれる映画でもあります。 内田有紀、体当たりの演技です。彼女じゃなきゃ、この味は出せなかった。 蒼井優、涙ぐむだけで人を酔わせる、大物です。 大竹しのぶ、りょう、憎たらしさ100万倍。 宮藤官九郎、妻夫木聡、サイコー。 そして 庵野秀明からしりあがり寿、俵万智まで豪華脇役陣。 10月公開です。 人生にちょっと疲れている人、 過去を断ち切れない人、 着ているヨロイに押しつぶされそうな人、 必見。 いろいろ身につまされることの多い2時間でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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