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ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti@ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2009.07.07
XML
カテゴリ:歌舞伎・伝統芸能
五月の歌舞伎座公演の感想は、
「暫」や「毛剃り」については既に書きましたが、
もっともグッときたのは、実は「夕立」という演目でした。

尾上菊五郎が中間(ちゅうげん)実はけちな盗賊の小猿七之助。
その七之助が前々から一目惚れして
いつかモノにしてやろうと狙いをつけていた奥女中・滝川に時蔵。

橋のたもとで突然の夕立に遭って、
上臈を載せた駕籠の駕籠かきたちは散り散りに。
取り残された籠のなかの上臈も、雷に驚き気を失ってしまう。
人っ子一人いない洲崎の川端。
そこへ、七之助。
介抱しながらもこの機を逃さず、彼女をモノにしようとします。

七之助の腕の中で意識を取り戻した滝川は
匕首で脅され、そのまま近くの茶屋に引きずり込まれてナニされてしまいます。
しかし、
彼女はすっかり七之助が好きになり、
お役目なんか振り捨てて、なんと七之助の女房にしてくれと頼みます!

これって、
今でいえば、ストーカーがナイフで脅して拉致してレイプする
女フミツケの物語の上に、
女がレイプされた男に積極的についていっちゃう、という
見ようによっては男性に、とっても都合のいい話。
「ヤっちゃえば女はなびく」みたいな神話は
こんな昔の歌舞伎の中にまではびこっちゃってるわけです。

だから、
女性である私が「感動」なんかしてはイケナイ…とは思うものの、
菊五郎の男っぷりがあまりにいいのと、
時蔵の感情の変化の表現が見事ということもあって、
本当に心に残る一場でありました。

若いとき、「菊さま」と呼ばれ、ものすごい人気だったという菊五郎。
そのフィーバー(死語!)ぶりは、いまの海老蔵かそれ以上?
夫によると、今は亡き義母も、菊さま目当てに歌舞伎座通いをしていたとか。

でも、私が歌舞伎を観るようになってからは、
すでに重鎮ということもあり、
渋い役が多かったんです。
フェロモン出まくりの色男タイプの役柄で菊五郎を見るのは初めてで、
「女を知り尽くしている」っていう感じの、
余裕しゃくしゃくな女性の扱い方は川の流れのごとし。
だからといって単に欲望丸出しではなく
かつて屋敷に忍び込んだときに盗み取った彼女の簪を
今も懐深く、大事に持ち歩いているなど、
「ほかの誰でもない、お前にこそ惚れている」という気持ちがにじみ出ています。

かたや、時蔵。
いわゆる「帯解き」のクルクルクルっていうのも、
襦袢姿を恥じ入るところも色香が匂い立ちますが、
単に「イヤよイヤよも好きのうち」的な安易ななびき方ではなく、
自分の心のうちに、爆発寸前の何かを抱えていたことがわかります。
幼いころからの屋敷勤めで、いわゆる色恋はご法度。
品行方正な女軍隊、あるいは贅沢な暮らしとはいえ刑務所みたいな生活の中に
日ごろから虚しさというか、
「ああ、私のなかの女って、このまま花開かずに朽ちてしまうのねー」と
人生、半ばあきらめていたようなところへ、
降ってわいたような「色恋」の花火が待っていたわけですよ!
夕立、雷、いきなりクライマックス。
鈍く光る匕首で迫るのは、水もしたたるいい男、
それも、今まで接したことのない、野性味あふれる……。

人生は一度だけ。
自分を変えたかったのかな、
飛び出したかったのかな、と
妙に共感してしまった私でした。

幕末から明治にかけて活躍した河竹黙阿弥の作。
当時の女たちは、
今の私たちよりずっと自分らしさを押し込めて生きていたはず。
結婚だって、好きな人とできる時代ではなくて
親とか店主とか後見人とかが勝手に決め、
初夜の日まで顔を知らないことだって多かっただろう。
たとえ出会いは偶然だったり力ずくだったりしても、
その縁にすがって自分を変えていくしかない、
女にはそういう選択しかなかった時代。
この演目は当時の観客に、どんな感慨を呼び起こしたんだろうか。
どっこい生きていく、
そんな女性のたくましさもまた、
感じられた一場だった。

この「夕立」、黙阿弥が清元の舞踊として作ったものを、
作者本人が「網模様燈篭菊桐(あみもよう・とうろうのきくきり)」という
お話の中に再び舞踊劇として入れ込んだもの。

だからこの場面だけでなく、
盗賊のおかみさんになってからの話も続く。
先行きがすべて見えてしまった屋敷の中の不自由な安寧を捨て、
「冒険」と「未知」を選んだ女性に
いったいどんな波乱万丈が待っているのか、
七之助は、ずっと彼女を捨てずに添い遂げてくれるのか……。
いつかは全幕見てみたい、と思わせる幕切れでありました。

つい2ヶ月前にやったステージですが、
歌舞伎チャンネルでは、
8月にもう放送します。

菊五郎の情感あふれる魅力を、
盗賊で遊び人風情という崩れた形ながら、その崩れた形が端正で緻密、という
完璧な芸を、
どうぞお楽しみくださいませ。





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Last updated  2009.07.08 11:20:44
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