原発ミニえほん 『核のゴミが捨てられる?!』
げんぱつミニえほん(1)核のゴミが捨てられる?! 原子炉等規制法 『改正』 に反対しよう! 1986年3月28日 発行1987年4月 3刷発行 核のゴミ野放し法案をつぶそう 3.28実行委員会【解説】高木仁三郎 西尾 漠え・しみずゆりこ 原発による発電量が、全発電設備の発電量の4分の1(関西電力は3分の1と宣伝している)を占めるいきおいです。そこで、≪原発は私たちのくらしに欠かせないもの≫と思われるようになりました。けれども、本当にそうなのでしょうか? 原発の発電量がふえているというのは、実はそれだけ、他の発電所を遊ばせていることです。 全発電設備の稼働率は、ここのところずっと50%にも達していない状況がつづいているのです。原発は、電力需要の変動にあわせて出力の調整ができず、いったん動かしたらフル出力で発電のしっ放し! 放射能のゴミも、もうれつないきおいでたまってきています。 原発を動かせば、いろいろな種類の放射能のゴミがかならず生まれます。放射能のゴミ‥と聞くと、すぐ頭に浮かぶドラム缶は、雑多なゴミをつめこんだものです。【低レベル】 などと呼ばれますが、それでもドラム缶の中には、数百人の人を殺せるだけの放射能が含まれているのです。各種の原子力施設をあわせると、そんなドラム缶がいま、日本全国に60万本もたまっています。 【高レベル】 と呼ばれるのは、死の灰を高濃度に含んだ廃液や、それをガラスなどでかためたもののことです。この 死の灰汁は超猛毒の上に、強く発熱する ため、いつも冷やしておかなくてはならない、やっかいなものです。 ふえつづける放射能のゴミを一時は、太平洋の海底に捨ててしまおう、という計画がありました。ひろい海の中なら、ドラム缶が破れて放射能がもれ出ても、うすまってしまうだろう、という乱暴な考えです。日本政府はこの計画をまだあきらめていませんが、太平洋の人びとの力強い反対で、実質的には実行不可能となっています。 そこで電力会社や政府は、ドラム缶を地下の浅いところに埋め捨ててしまおう と考えました。この埋め捨ては、いまの法律のもとではできないので、法律を変える必要があります。3月7日に国会に提出された 『原子炉等規制法の一部改正案』 がそれです。 この 『改正案』 の最大のねらいは、これまで捨てられず処分にこまっていた放射能のゴミを捨てられるようにする、しかも、きわめて無責任な形で捨ててしまおうというものです。 ≪廃棄物埋設の事業≫なるものを、あらたに法律にもりこみ、放射能のゴミの埋め捨てを認めています。そして、現在は電力会社が負っている 安全の確保と、事故のときの損害賠償の責任を廃棄業者にうつしてしまう。 さらに、高レベルの廃棄物(死の灰)についての廃棄事業をも可能にしている。これらが、法 『改正』 の大きなポイントです。電力会社は、自分の手を汚さずにゴミ捨てができ、原発の運転を心おきなく続行できるわけです。 ドラム缶を埋めたり、捨てたりする仕方にも、いろいろなやり方が考えられています。まず、【低レベル】 をさらに3段階にわけて、レベルの低いものから簡単に捨てられるようにしようというのです。 とくに問題になるのは、ある放射能レベルを決め、これを 【無拘束限界値】 として、その値より低いレベルのものは、放射能として扱わなくてもよいようにする ということです。寿命がつきた原発(廃炉)を解体すると、50万トン以上もの放射能のゴミが生まれますが、その多くを占めるコンクリートなどを、どこにでも捨てたり、あるいは再利用したりできるようにすることが考えられています。 【無拘束】 のものより、やや強い 【極低レベル】 のゴミは、ちょっとした溝をほって埋め捨てにされます。その処分地には、人が立ち入ってもよいとされ、原子力安全委員会のレポートには 「公園などに利用したらよい」 と、気味の悪いことまで、本当に書いてあるのです。それよりレベルの高いものは、コンクリートの施設に埋められますが、何十年かたって、放射能のレベルがさがったら、同じように処分地を使ってもよいということです。 けれども、放射能に 「これ以下なら安心」 というレベルなどありえません。それなのに、捨てる側の都合でしゃにむに決めてしまおうというのですから、危険きわまりない話です。 コンクリートなどで囲った施設に、ドラム缶を埋めて捨てる 核のゴミ捨て場 としてねらわれているのは、下北半島にある 青森県の六ヶ所村 です。ドラム缶を埋めて、はじめは 【貯蔵】 と呼び、放射能のレベルがある程度までさがったら、そのまま捨てたことにする‥という、なし崩しのゴミ捨て計画です。 1991年までに施設をつくり、日本各地の原発から毎年5万本、最終的には300万本ものドラム缶を運びこんで、埋め捨てる計画で、世界のどこにも、そんな例はありません。地下水を汚染して問題になり、閉鎖されたアメリカの核のゴミ捨て場のあやまちを、さらに大規模にくり返そうとしています。 六ヶ所村には他にも、原発の燃料となっている濃縮ウランをつくる工場や、原子炉で燃やしたあとの使用済み燃料をきりきざんで、あと始末をする再処理工場を建設する計画もあります。これらをひっくるめて、核燃料サイクル基地計画 と呼んでいます。 再処理工場には、使用済み燃料を水で冷やしながらためておくプールと、再処理のあとに残る 高レベル廃棄物 などを貯蔵する地下施設もつくられます。1990年代には、イギリスやフランスで再処理してもらっている、海外からの返還廃棄物 も、ここに送りこまれる計画です。まさに、あらゆる核のゴミを集中させる計画! 地元の人びとが猛反対をするのも当然です。核のゴミが捨てられる?!≪その2≫ へ つづきます。