医者にも色々なタイプがいるが、中にはこんな医者は絶対にごめんだと思うような者もいる。しかし、
「イン・ザ・プール」(奥田英朗:文芸春秋社)に出てくる医者を超えるものは、そうはいないであろう。
なにしろ、見るからに変人でマザコンで注射フェチという設定である。私なら、診察室に入ったとたんにUターンをして帰ってしまうであろう。
この医者の名前は伊良部一郎。伊良部総合病院の跡取り息子で神経科を担当している。跡取り息子の癖に、診察室は地下に追いやられ、来る患者もほとんどいないようである。それに、この先生、患者を巻き込んで、夜のプールに忍び込もうとしたり、ライバル病院に石を投げ込んだりしたりと、とんでもない人なのである。
来院する患者は、プール依存症の男、陰茎硬直症の男、被害妄想のコンパニオン、ケータイ依存症の高校生、強迫神経症の男、それぞれの患者の話が独立した短編となっている。
しかし、一見大変人に描かれている伊良部先生であるが、よく読めば、ある意味徹底的に患者に向き合っているのではないか。クリスマスに誰からも声のかからない高校生には、入院患者たちとのパーティにさそうような優しさも見せている。
結局、患者はみんな自分の抱えた問題を解決しており、この先生、実は名医だということかもしれない。
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2008年03月21日 19時53分48秒