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テーマ:本のある暮らし(3187)
カテゴリ:日々の読書(ミステリー)
現代は、ローン社会である。家を買うときは、住宅ローンにお世話にならない人はほとんどいないであろうし、クレジットカードを一枚も持っていない人も少ないであろう。 このローン社会は、いたるところに落とし穴が隠れているといっても過言ではない。ローンを組んで家を買ったが、払えなくなったり、クレジットカードを使いすぎて自己破産という話もよく聞く。 収入のほとんど無い学生や、まだ給料の少ない新入社員に近い者が、クレジットカードを何枚も持っていたりする。全く異常としか言いようがない。カードはけっして打出の小槌ではないのだが、カードを簡単に発行する方にも大きな問題があろう。 テレビや新聞などでよく消費者金融のCMを目にする。「借りすぎに注意しましょう。」なんてとってつけたように言っているが、そんなに計画性があるなら、暴利をむさぼる消費者金融から借りたりはしないと思うのだが。 「火車」(宮部みゆき:新潮社)は、このようなローン社会の問題点をモチーフにしたミステリーである。この作品の主人公本間俊介は、休職中の刑事である。ある日、死んだ妻の甥から、婚約者が急に姿を消したので行方を探すよう依頼される。 ところが、この婚約者と言うのが曲者で、全くの別人が入れ替わっていたのである。別人が入れ替わっていると言うのは、宮部みゆきだけでなく京極夏彦なんかも好きなテーマのようで、良く作品に使われている。ただし、この作品では、人間が入れ替わっていると言うのは別にオチでも何でもなく、かなり早くから分かる。どうやって甥の婚約者が入れ代わりをたくらみ、その相手を見つけたかを本間が追求していく過程がこの作品の見所である。 現代のローン社会に潜む闇を、鋭く描き出した良作と言っても良いだろう。しかし、あまり救いの無い話ではある。やはり、私は、宮部作品は人情たっぷりの時代物の方が好きだな。 ○このブログ、ランキングで何位かな。覗いてみてね。 ●「人気ブログランキング」 ⇒ ●「にほんブログ村」 ⇒ 「火車」(宮部みゆき:新潮文庫) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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