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カテゴリ:日々の読書(学術・教養)
生命とは何だろう。多くの人は、繁殖をするもの、すなわちDNAの複製を繰り返し、次々に子孫に伝えていくものであると、思っているのではないだろうか。難しい言い方をすれば、「生命とは自己複製を行うシステムである」ということである。しかし、ここで一つ困ったことが出てくる。ウィルスである。ウィルスは、自分では栄養摂取も呼吸もしない。ある条件を与えると、結晶化もするのである。これが、生物と言えるのだろうか。しかしウィルスは増殖することができる。生物の細胞を借りて、自己のDNAを複製させることにより増えるのである。昔から、ウィルスは、生物か無生物かの二元論では割り切れないものという扱いをされていた。
しかし、今回読んだ「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一:講談社)という本では、はっきりとウィルスは生物ではないと言い切っている。この本は、分子生物学の立場から、生命とは何かについて論じたものである。 福岡氏は、生物の定義は、「生命とは自己複製を行うシステムである」だけでは、不十分であるとして、これに「生命とは動的平衡にある流れである。」という第二の定義を付け加える。簡単に言えば、生命を構成するタンパク質は、作られる一方ではどんどん壊されていき、作られるタンパク質と壊されるタンパク質の量が釣り合っているということである。鴨長明は、方丈記で、「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」と述べた。それが、そのまま、生物の体の中にも当てはまるのである。この定義を入れると、代謝をしないウィルスは生物ではないことになる。 本書は、専門的な内容が、平易な文体で、たとえ話などを使いながら、分かりやすく書かれている。また、DNAの2重螺旋構造発見の裏話などもあり、非常に興味深くよく事ができる。新しい生命感を与えてくれる一冊である。 ○応援してね。 「生物と無生物のあいだ」(福岡伸一:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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