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2006.05.31
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カテゴリ:教育全般
 
 もう20年近く経つが、清水義範の『永遠のジャック&べティ』という小説があった。

 英語の教科書の主人公、ジャックとベティが三十数年ぶりに再開したら、中学生当時のままの奇妙な会話しかできなかったというパロディ小説だ。視点もユニークで、面白く斬新に感じるが、実は今の直訳の教科書英語を暗に批判しているようにも見える。こんな直訳の英語、習っても使えないよと。じゃあどんな奇妙な会話だったか、少し再現してみよう。


 路上で再会した二人は、懐かしさのあまりに言語中枢が30年分退化し、中学時代の奇妙な言葉遣いに戻ってしまった。そして路上で奇妙な会話を始めた。

「あなたはベティですか」
「はい。私はベティです」
「あなたはベティ・スミスですか」
「はい。私はベティ・スミスです」
「あなたはジャックですか」
「はい。私はジャックです」
「あなたはジャック・ジョーンズですか」
「はい。私はジャック・ジョーンズです」
「私はいくらかの昔の思い出を思い出します」
「一杯のコーヒーか、または一杯のお茶を飲みましょう」

 発展例文の反復をする二人。そして飲み物にはそれぞれ一杯のをつけなければならない。
 二人はコーヒーショップに移動する。

「これはテーブルですか」
「はい。これはテーブルです」
「これはソファですか」
「いいえ、これはソファではありません。これは椅子です」
「あなたの息子は野球をしますか」
「いいえ、彼は野球をしません」
「私はあなたの二人の姉を覚えています」
「私もまた、覚えています」
「あなたのお父さんは元気ですか」
「いいえ、彼は死にました」
「オー、悲しいことです」

 イエス、ノーの基本例文だ。「もまた」がにくい。
 やがて会話は展開していく。

「あなたは上着を着ていません」
「今日は上着を着ているためには暑すぎます」
「私は今までにこんな暑い日を知りません」
「今日は今まででもっとも暑い日のひとつです」
「あなたは涼しくなるために上着を脱ぐでしょう」
「上着を脱ぐやいなや私は涼しくなるでしょう」
「これは窓です」
「これは床です」
「私はペンを持っています」
「私は短い鉛筆を持っています」
「これはあなたのペンですか」
「いいえ、それは私のものではありません」
「あなたが今住むところの家はどこにありますか」
「この通りを東へ行き、三番目の角を左へ曲がりなさい。そうするとあなたは左側に白い建物を見るでしょう」
「多分、私はそれを見るでしょう」
・・・・・・・・・


 素晴らしい会話だ。
 しつこいまでの反復。忠実に繰り返される冠詞と形容詞。非の打ちどころのない完璧な疑問文と否定文。特に上着のやりとりは時制の変化もあり、構文としても秀逸である。

 直訳を並べると、ここまで見事な非現実的な世界になってしまう。でも我々はこういう訳を一生懸命に習ってきた。too=もまた、as soon as=するやいなや、やったよね。みんな真剣に覚えたけど、日本語の会話では普通間違っても使わない。でも怖いのはこういう直訳の方が英作文しやすいということ。例えば今風の「マジ?」「ヤバくね?」を英訳する時も、「本当ですか?」「それは最悪ですね」となっていればすんなり来る。それにしても、中学で初めて習う英語って、なぜこうも現実とズレた日本語を使っているのか。誰もが気付いているのに、みんな当たり前のように黙々と学んできた。
 「彼はとても親切なので私は彼が好きです」。有名なso that構文。中学生の普段の会話ではどう言うか。
 「彼ってチョー優しくて好き」。同じだ。教科書さんも、学ぶ時の日本語訳をもう少しひねってくれるとありがたいんだが。

 ちなみに私が習ったのはジュニアクラウンで、「トム」と「スージー」が主役だった。「私は1冊の本を持っています」「あなたは1冊のノートを持っています」・・・・やっぱりその後の人生で一度も使ったことのない例文をみんなで声を合わせて読んでいたな。同じだね。

 でもこの小説楽しいなあ。ノスタルジーあふれるこの流れはこれでいいのかも。最後のオチはナイショだけど。 





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最終更新日  2006.06.01 04:33:07


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