天声塾語 3
眼の調子が悪ければ、眼科に行く。 腰が痛いといって、まさか歯医者に診てもらう者はいない。 専門医がいて、患者がそれを使い分ける。 まじないや、自然療法などの知恵を入れれば、恐らく有史以前から行われていた営みだ。 塾にも人は集まる。 生徒を患者に例えるなら、それはもうカラフルだ。 喉の調子がおかしい、左の脇腹が痛い、転んで怪我をした、熱が下がらない。 色々な症状を持った者が次々と集まり、何度も治療に通ってくる。 そんな総合病院のような日常が、連日繰り返される。 塾に部門別の治療窓口があったらどうなるだろう。 たとえば、「英語文法科」「理科第1分野計算科」「国語読解科」「小学算数科」 そしてそれぞれに、専門の担当医がいる。 「どうしました?」 「はい、英語の読解ができなくて・・・」 「いつ頃からですか?」 「そうですねー、もう2年近くなるかと」 「では、ちょっとこれを解いてみてください」 「・・・・・・」 「どうしました? 最初の単語の意味は何ですか?」 「・・・・分かりません」 「なるほど・・・どうしてこんなになるまで、放っておいたんですか」 「済みません」 「しばらく入院しますか?」 「いえ、それはちょっと・・・」 「では、週4回はここに来て、しっかり治療してください。お薬も多目に出しておきましょう。あと、普段の生活は○○を心掛けてくださいよ」 塾を病院にイメージしてみる。 すると、こんなあり得ない会話も、何か現実味を帯びてくる。 学びの悩みや症状は、複雑だ。 治ったと思い安心すると、すぐに他の症状が現れてくる。 そして、「まだ大丈夫だ」 と高をくくっていると、やがて慢性化し、合併症を引き起こす。 自覚症状が出たなら、すぐに相談したい。 何が分からないのか。 テストの点数が検査値だと思い、よく自分のことを知っておくことだ。 普段のそんな心構えが、差につながる。 問診に対しての説明には、そんな姿勢が素直に出る。 「どこが分からないの?」 「ぜーんぶ!」 たったこれだけの会話で、回復までの時間が見えてくるものだ。