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カテゴリ: X'mas企画 サンタクさんの贈り物
********** x'mas 企画 15 days of Christmas in 花園 ************** 第1夜 一人ぼっちの誕生日 (前編)
張玲虹(チャンリンホン)は、11月半ばの天気の良い日、豪豪花園の児童公園で勤め先の家庭の一人息子、鈴木大樹を遊ばせていた。幼稚園が終わるのが12時ちょうど。花園敷地内の幼稚園に迎えにいって、直接家には帰らずに公園でひと遊びさせていく。幼稚園の午前中のおやつの時間にたくさんたべているようで、今帰っても昼食をろくに食べてくれないから、この方が都合がいい。
同じ幼稚園に通う子どもたち数人も、毎日のように公園によっていく。まだ昼食には早いし、この時間は母親たちにとっての格好のおしゃべりタイムにもなっていた。
そんな母親たちに話しかけられることもなくはないが、たいていの場合リンホンは、母親たちとはちょっとはなれたベンチに腰を下ろし、自分も一休みする。ちょっと恥ずかしがり屋で、遊んでいるお友達の輪の中にあとから入って行くのが苦手な大樹も、幼稚園で散々遊んだあとのこの時間の公園では元気いっぱいだ。リンホンの助けは要らない。
ちょっと前まではそうでなかった。滑り台をすべるにも、ジャングルジム登るにも助けが必要だった。大樹のうちに働きにきてからもう半年以上たつ。2歳だった大樹も3歳になり、いろいろできるようになった。子どもはどんどん大きくなっていく。時間がたつのは早い。 リンホンがそんな風に思ったのは、今日が彼女の23歳の誕生日であるからかもしれない。20歳になったばかりの11月、家政婦という職業について、右も左もわからないQ市に出てきた。あれからもう3年、いろいろあったようで、あっという間であった。 今働いている鈴木家の奥さんは優しいので、昨日がリンホンの誕生日と知っっていたら、お祝いをしてくれたかもしれない。彼女はしょっちゅう親戚や友達の誕生日を祝っている。花が好きで、自宅の居間に飾る以外に、花束を買っては人にあげている。でもここ数週間、奥さんは具合が悪い。特別な用事がない限り自分でしていた、大樹の送り迎えや夕食の支度をリンホンに任せ、横になっていることが多い。
その日の夕方、リンホンは大樹をお風呂に入れた。大樹だけ裸にして、リンホンはズボンのすそをまくってバスタブの横で世話をする。以前は奥さんが一緒にはいっていたが、奥さんの調子が悪くなって以来、大樹の入浴はリンホンの仕事になった。まず浴槽に浮かべたアヒルでひとしきり遊ばせて、顔に水がかからないように大樹の体と頭を洗う。最後に、シャワーで流しておしましい。風呂場から出ると、起きてきた奥さんが大樹のパジャマを準備をして待っていた。リンホンは、風呂場の片付けに回った。しかし背後で、大樹が駄々をこねだした。 「いやだ、お着替えリンホンがいい。」 「そんなこと言わないで、リンホンはお風呂のお掃除してるから、さめないうち着替えちゃいましょう。」 「いやだ、いやだ、リンちゃんがいい。」 「ほら大樹、パンツはいて。」 「やだ、ママ嫌い。リンちゃんがいい!」 大樹は泣き出した。奥さんは、血色の悪い顔でため息をついた。その顔がとてもさびしそうだった。 そのあと、大樹はすっかり機嫌を悪くしてしまい、リンホンと奥さんをてこずらせた。早めの夕食もリンホンが隣に座ってないと嫌。ご飯が終わったら、リンちゃんとご本を読みたい、そして寝るまでそばにいてほしい。 リンホンは通いのお手伝いで、仕事は通常10時半から6時半までだ。でも、就業時間が過ぎてしまってからも、大樹はリンホンを帰えそうとはせず、ドアのところで「とうせんぼう」をした。そんな大樹を、見るに見かねた奥さんが、無理に抱き取って目配せした隙に、リンホンは小走りに鈴木家を出た。大樹は泣き叫び、その声はリンホンが階段を下りてすっかり暗くなった外に出てもまだ聞こえてきた。 (つづく…)
魔の2歳児、なーんてよばれてますが、うちの子は3歳になってもかなり「魔」だった気が。そのうち楽になるとは言うけれど、子育てはいつでも「今が大変!」ですよね。 ランキングクリックよろしくです!
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