カテゴリ:その他、芝居(ドラマ・映画・舞台)
──この世界は歪んでいて。
『彼』もまた、そんな歪な世界の住人。 メタ・フィクション(入れ子細工の物語)。 その強みが、それが属する『ドラマ』の存在そのものを揺るがすことで、発揮されていました。 『ブス恋』が描く『歪み』。 それを抱えているのは、果たして“虚構”なのか。 あるいはその外の“現実”なのか。 ──『歪み』に気づく度に、知る度に、その存在を受け入れてきた。 そのことを端的に表した一言でしたね。 その『歪み』を受け入れることで、同時に『軋んで悲鳴を上げる』部分からも無意識に目を逸らして来たんですね。 けれども、その『軋んで悲鳴を上げる』部分に気がついてしまったとき、『おさむ』の心まで軋んで悲鳴を上げるのを感じました。 それは、単に良心が動いたことを示すのではありません。 ただ『その業界に染まる』ことに身を委ねていた主人公が、初めて『業界』そのものに疑問を抱き、反発した瞬間でもあるんです。 (私はそのことに気づいた時、彼の小さな、けれど重要な変化に胸打たれ、涙ぐみました) 彼自身は誠実さも秘めています。 その一方で、『放送作家』として成功するうちに、『歪み』をその体に蓄積してきたんだと思います。 その『歪み』の果てに、前回のような『超サイテー男』になってしまったのだろうと思いました。 とはいえ、彼は完全に染まっていたわけではありません。 「先生と呼ぶのは止めてください」 その言葉が、彼が完全には染まっていないことを示しています。 もしも彼が『先生』と呼ばれることを受け入れるなら、その時は『歪み』が彼を完全に蝕んだときでしょう。 そんな『おさむ』も、少しずつですが自分の『歪み』に気づいてきています。 その大きな理由が『美幸』です。 彼女の行動や考え方は、『歪み』によって失ってしまったものを象徴しています。 つまり、『良識』であり、『お笑いに対する情熱や誠意』であり、『間違っていることに、正面向かってぶつかっていくこと』であり、『ただ人を人として接すること』であり…。 『おさむ』はそれらの失ったものを、彼女との触れ合いで求めています。 だから『美幸』と接する時に、『失ったものを持っていた頃の自分』を象徴する『昔の彼女』を思い浮かべるのだろうと、そう思いました。 ですから、彼の中ではまだ『恋愛』感情にはなっていないんですね。 この感情を恋愛感情に昇華するには、まだ時間が掛かりそうです。 着飾ることを止めても。番組制作への情熱を取り戻しても。 『おさむ』の中にはまだまだたくさんの『歪み』が蓄積しているはずです。 それを『美幸』との触れ合いで吐き出すのが先か。 あるいは『業界』の中で飲まれるか。 これからの変化が楽しみであり、不安でもあります。 そしてこのドラマを観ているうちに、 「この『ブス恋』を作っているキャストやスタッフ自身も、『歪み』を抱えながら仕事をしているのか」 という疑問も生まれました。 キャストのファンであるからこそ、それはすごく重い疑問でありました。 現実と虚構の境目が曖昧になる『メタ・フィクション』だからこそ、“作品自身を否定する問題提起”が生きてくるんですね。 程度の差はあれ、世の中の人々は皆、『家庭や社会からの歪み』を引き受けてるんじゃないでしょうか。 そして違った『歪み』を持ち合わせた人々が、そのことに気づかないまま、互いを傷つけていることもあるかもしれません。 ふと、そんなことを思い、怖くなりました。 大切なのは『歪み』に気づき、それに対して責任を持つ強さと誠実さなのかもしれませんね。 美幸の気持ちについて。 “異性に対し『最悪』のイメージから始まると、その後にはいいところしか見えなくなる”とどこかで聞いたことがあります。 その真偽はともかく、美幸も途中で『悪いだけの奴じゃない』と見直したようですね。 彼女の『女優の夢』をバカにするのではなく、それをちゃんと受け止めた上で話を聞いてくれたのが意外だったんでしょうね。 彼女の視点からすると『おさむ』の印象は“自分の都合と価値観しか見えないエゴイスト”に違いなかったはずですから。 その意外なほどの誠実さが、彼女を口説き落としたのかな。 まぁ、簡単に許しすぎの気がしますけどね(苦笑)。 「こっちで思いついたこと、『めちゃデス』に流してないだろうな?」 …これ、元ネタは 「『SMAP×SMAP』と『めちゃイケ』のマラソン企画バッティング」 では? 当時、両方の番組に参加していた鈴木おさむさんがスパイ容疑で疑われたとか聞いたことがあります(笑)。 今回、そんなことをつらつら考えつつも、実は稲垣君の声に腰砕けになりかけました(←大丈夫か)。 改めて、彼の声の『甘さ』を実感しております(おひおひ)。 『おさむ』はこれからもどんどん変わっていくんでしょうね。『アングラ堕ち』の可能性も含め、いろんな表情が観れそうで楽しみです。 心の中に多くの『歪み』を抱えて、それでも『歪んだ業界』に染まりきらない男。 『歪み』に気づいても、それに真っ直ぐにぶつかる女。 『歪む』ことの出来ない誠実さが、二人を繋いでいく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/04/19 10:08:23 PM
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