巡り逢いこそが人を紡ぐ――<SMOKING GUN~決定的証拠~>
人は人と関わることで変わっていく。 災いも幸いも、その“縁”で生まれていく。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 科捜研、大好きです。 記憶ネタ、大好物です。 聖書ネタ、泣いて喜びます。 ということで、これでもかと管理人の趣味が詰まったドラマでした! 毎回、前のめりで見入ってしまいましたよ。(ちょうどPBWで動かしていたPCが似たシチュエーションに突入したこともあり。テンパってしまった中を、このドラマでの縁の行動に刺激されたり、勇気や冷静さをもらったりと、それもありがたかったです) 縁の仲間もキャラクターが立っていて、それぞれに見せ場があって、魅力的でいいなぁと思います。この辺りは安心感があって見ていて楽しかったですよね。 そして真犯人の大島も、個人的には大好きなキャラクターです。 その小物っぷりも、くるみとの交流も、そして最期も。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆ 「先入観を捨てて、逆に一番ありえない残留物を見てみた」 縁の中に生きている、エミリの言葉の一つです。 人と関わることが徹底的に苦手で、自分を乱す存在を許せなかった過去の縁。 それが、エミリとの交流で変わっていくのが印象的です。 エミリの言葉は縁の中に生きて、その死後も彼の中で一部は糧となって導いていきます。 さらにその言葉は、縁を通して科捜研のチームのみんなに伝えられ。それがまた皆を導くことになります。――波紋のように。 人と関わる、変わっていく、変えられていく。人は死んでも誰かの中に残っていくのだと、そう思える。 その意味を象徴するようです。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆ 縁 上述のように、エミリとの出会いで縁は少しずつ変わっていきます。他人にその影響を分け与えられるぐらいに、少しだけ外交的に。 そしてエミリを失うことで、破滅願望を内側に抱くように。 仲間達を大事に思うようになり、それが踏み外さないための軛とするように。 教授夫人との出会いが、悲しみを受け止めるきっかけとなるように。 まっすぐな言葉に、「12時間の間」の自分を信じられるように。 大切な人を失ってなお、誰かと交わって変わっていく。 時に独白としてその時の心境が語られ、それが少しずつ積み重なって彼の中で確かになっていきます。 彼はその名の通り、人との縁が生み出す奇跡を体現する存在として描かれているのですね。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◆悲劇も救いも紙一重で。 天才と出会って夢を見て。 その夢の大きさ故に、その陥穽さえ見えずに、走り抜けた大島。 Kh04と天才に出会わなければ、彼は平凡な人生を送っていたかもしれない。それなのに彼の人間性は、我執によって抑えられてしまったのですね。 ですが、くるみと仔犬との交流によって、我執だけで動いていた筈の彼に変化をもたらしました。 それまで封じていた確かな人間性は、初めて我執に囚われた彼を揺さぶったのです。だからこそ彼は、動揺のあまり「黙れ」と叫んでしまったのですね。 この少女との関わりからくる一度目の揺らぎは、そのあとの揺らぎへの呼び水になったのでしょう。「殺したのはお前だ」 縁に無茶苦茶な理論を振りかざしてしまったのは、相手を非難することで、比較して自分の正当性を上げようとする防御本能。 復讐という正当な理由で殺されかけた恐怖と、それだけの負の感情を向けられるだけの理由がある事実を、必死に振り払うために。 縁の爆発しそうな感情もまた、大島の我執に対して揺すぶりをかけるに十分だったでしょう。 そして『エミリの動画』。 自分がついさっき、非難した相手。その非難した相手への、己の全てを懸けた肯定がそこにありました。 己の我執よりも、はるかに大きな思いを込めたエミリの行動。それは自分の行動を否定し、自分が先ほど振りかざした理論を根本から壊すには十分でした。 そうして、自分の我執に気づき、間違いを認めた時。本来の人間性がよみがえったのでしょう。 そんな風に、私はドラマを見ていて感じました。 全てを救われるには流した血は多すぎるけれども。それでも最期に、我執を手放せたのはたった一つの救いだったのかもしれません。 弱くて脆い、そんな大島というキャラクターは自分にとってとても印象に残った存在でした。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ドラマの中で、どの登場人物も誰かと交わした言葉や経験から変わっていきます。 父親を偽善者と非難する桜子が、誰よりも他人のために迷わずに動けるようになったり。 他の科捜研の仲間も、くるみも、夏生も、成長したり、変わっていきます。 物語の主軸となるテーマが細部までぶれずに丁寧に描かれているのが、とてもうれしいことでした。 扱っているネタが大好物、というだけでなく。物語そのものを誠実に描こうとする姿勢が感じられたのが、今回の一番のうれしい部分でした。。 ドラマスタッフの皆様、出演者の皆様、素敵なドラマをありがとうございました! そして原作の方はまだまだ続いているようですね。ドラマの中でも「ひょっとしてまだ裏が……」と思う部分にこれから踏み込んでいくのでしょうか そちらの方も、時間を作って手に取って読みたいなと思います。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 己を知るには、他人と交わるしかない。 そうして変わり、揺らぐ先に、自分の未来はあるのだと――。