この地球の、同じ時間を   *百世のカフェ・ルーチェ*

この地球の、同じ時間を   *百世のカフェ・ルーチェ*

子どもが産まれたら、3年間は外出するな?

信田さよ子さんの講演に行った。アダルトチルドレン系の著書をたくさん出している人だ。
何か役に立つかと思ったら、哀しいほどガッカリした。

信田女史いわく、「これまでは自分がみている患者さん達は特別な人たちかと思っていたが、社会全体に新種の親が大量出現している」
その新種の親とは・・・

信田女史(以下、信に省略):「ひよこクラブ」にhappyという言葉がしょっちゅう出てくる。
  母親がハッピーじゃなきゃいけないという脅迫観念がある。
  だから、母親が「自分の欲望を満たす」ことを中心に考えている。
  例として、小田原のアウトレットは1~2歳の子連れママばかり。
  子どもが寒さに震えていても、半袖のまま、買い物に夢中。
  表参道にはベビーカーの母親が一杯。ブランドあさり。
  ベビーカーの高さは、ホコリや排気ガスだらけ。
  しかも、ベビーカーで横に並んで歩き、他人の迷惑を考えない。
  芸能人のような生活を、ハッピー強迫観念で追いかけている。
  「子どもが邪魔」と平気で言う母親達。
  保母が「(赤ちゃんの)爪を切ってください」と言っただけで、
  傷つき、かみつくように言い返してくる母親も。
  子どもにビデオを見せて、放りぱなし(ネグレクト)。
  食事が家族バラバラ。
  朝食に夫はバナナ、自分はインスタント麺、子供はクリームパン。
  レトルトカレーにトマトをつけただけで、
  「今日はがんばった」なんて言う母親。
  こうして食費を切り詰め、ディズニーランドだけが楽しみ。
  昔はそれを巧妙に隠していたが、いまは恥ずかしげもなく、
  「何が悪いんですか」と、親に罪悪感すらない。
・・・・等々、いまの母親たちはいかにダメ母か、を力説する。

信:私たちの時代は、いろんなことをガマンした。
  だが、その娘の世代になって、お母さんみたいに、
  自分を殺してガマンするのは嫌だということで、
  こんな新種が大量出現してしまった。
  正社員人口が、いま3割程度。
  年金問題以前に、フリーターは日本の不良債権だ・・・と。
  最後に、アドバイスとして、
  1.親子関係を土壌から耕し直す。
  2.親は快楽をガマンする。
    子どもが3歳くらいまでは、買い物を含め、外出をガマンすること。
       ・
       ・
あきれました。ガッカリしました。
どうしてこんなひどい目でしか、親(特に母親)を見れないんだろう。

私は、「いまの時代ほど、母親の負担が大きい時代はない」と思う。

子育てというのは、元々地域社会が担っていたもの。
そして、大家族で、母親だけじゃなく、父親や祖父母や叔父・伯母・いとこ、たくさんの親族。つまり、地域と大家族の多重構造で、複数の人間が子育てに関わっていた。
それがいまは、どうだろう?
母親という、たった一人の人間に全てを押しつけているじゃないか。

特に、専業主婦で責任を全面的に負わされた母親はストレスが大きい。
それを裏付けるように、働く母親よりも専業主婦の方が出生率(子どもを産む数)が低い。
だいたい、子育ては神経が疲れる。うちの子も、レジでお金を払っている隙に、もう姿が見えなくなったりした。ほんの一瞬の間に外に出て、道まで曲がっていた。
たった1人の人間が、24時間神経を張りつめて、育児に従事するなんて・・しょせん無理な話なのだ。

なのに、社会はそれを強要する。
それでいて、子ども連れを邪魔者扱いする。
ある母親の「子どもが産まれてから、謝ってばかりなんです」という言葉が忘れられない。

今の時代は、かつてないほど、母親を追い込んでいる。
私は思う。
「育児力を失っているのは、母親じゃなく、社会の方だ」。

お母さんたちが「子どもが邪魔」と言うのは、
「社会が子連れを阻害し、子どもは邪魔」というメッセージを発信しているからじゃないのか?
お母さんたちが赤ちゃんや子どもの扱いにとまどうのは、
自分が産むまで、全く赤ちゃんに接する機会がなかったからじゃないのか?
地域が機能して、大人になる前に赤ちゃんや幼児と接する機会があったなら、いろんな予備知識が自然に入るだろう。そうすればきっと不安も少ないはずだ。
「いまの母親は・・」と、責めてどうするよ!

「信:食事が悪い、大人の快楽をガマン」と言うけれど、
ディズニーランドや、子ども服をアウトレットで買うのが、大人の快楽だろうか?
逆に言えば、私は大人の快楽で、自然食を志向している。
「大地を守る会」という宅配の食材を中心に生活するのは、娘のアトピーがきっかけだけれど、野菜に香りがあり、魚も肉も変な薬の匂い(スーパーのものには感じてしまう)がないからだ。それはもう肉体的な欲求。毎日の生活をガマンして、目標のためにお金を切り詰めるなんてエライと思うよ。
むしろ、母親教室とかで有機野菜の香りや味を実感させる試食会を開いた方がよっぽど効果的だと思う。

「信:ベビーカーの高さは、誇りや排気ガスだらけ」って言うけど、
小さな子どもが立って歩くのと、どれだけ高さが違うんだよ?
3歳まで外出しない?・・・そんなに追いつめたら、虐待へ走らせるだけじゃないか!

「信:フリーターは日本の不良債権」だって?
本人たちが正規就職しないんじゃない。企業が安くつかうために、正規雇用しないんじゃないか。
私は知人や取材からいかに日本が若者層を福利厚生や方に守られた正規雇用をしないか知っている。
そして、すでに就職した人たちを追い出す一番の手段が「結婚・妊娠」だ。
責任は、企業と社会にある。

ともかく、変わらなくちゃいけないのは、社会の目。
いいかげん、「なんでもかんでも母親のせい」にするのはやめてほしい。

その背景は、私の本やHP(スマートウーマン→母性神話)にも書いたけれど、これじゃ子育てがどんどん辛くなるばかりだよ。

ハワイに旅行(2歳までは飛行機代タダだったので)をしたら、日本とは全く対応が違うのにすごく驚いた。
子どもを連れていると、どこでも優先してもらえるのだ。
トローリー電車も、障害者や子連れが優先乗車。いろんな施設や場所でもそう。周囲が譲ってくれたり、助けてくれたりする。ともかくす~ごく気持ちがよかった。
自分はただ子どもを産んだだけなのに、社会にとっていいこと(財産を育んでいる)のような・・・子育てに誇りがもてた。
そして、日本に帰ったとたん、どうだろう? そんな気持ちは、一気にしぼんで吹っ飛んだ。周囲の批判まじりの冷たい目。ちゃんと並んでいる老人や子どもを、追い越して乗車するサラリーマン達。

信田さんのバカ母の話に、同調して笑うおじさん達。それでいて、DVの話になると、そしらぬ顔。
大切なのは・・・「社会認識」だと私は思う。

ちょうど、別の仕事で「お父さんの家事はなぜゴミ捨てなんでしょう」と質問され、答えつつ気がついた。
「それは社会が、TVコマーシャルやドラマでそういうシーンを流すことで、ゴミ捨ては男性に要求していいという意識を社会に浸透させているからでしょう」と。
「男性の家事はゴミ捨て」が共通した社会認識になる以前の時代だったら、夫本人からも、舅、姑、小姑等々から、ガンガン文句を言われたことだろう。

つまり、社会認識の数が変われば、社会はコロッとだまされる。
小泉首相をはじめ自民党が、「みせしめ」のようにイラク人質の3人へ「自己責任」論追及をして、
「やっぱり迷惑かけたんだし謝罪すべき、って世論」を引き出したようにネ。

誰もがなんかおかしいと思い、苦しくて、子育てしにくい社会が、少子化に実体化している。
だけど、それに反論するのは、いい妻・いい母親から逸脱視される危険・・・イラクの人質家族のように、それで、みんな黙ってただガマンをする。長いものには巻かれろだ。

だけど、声を上げようよ。私があなたの代弁をしましょう。
保育園や幼稚園の学習会、小学校のPTA講演、生協の勉強会等・・気軽に呼んでください。ギャラは問いません。今の社会認識を放ってはおけないよ。
私が口火を切る中で、どうぞ皆さんの思いの丈を、ふだんガマンしてきたことを、なんだか疑問だったり、解消されない思いを、出してください。
あなたの言葉を待っている人がいる。
きっと小さな何かができる。


© Rakuten Group, Inc.