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2007年07月12日
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カテゴリ:2007年04月読書
[1] 読書日記


   <一九六九年は我々にとって記念すべき年である。
    哲学者たり、理学者たり、詩人、刺客、音楽家たる我が「読書クラブ」から、
    “王子”が生まれたのだ。
    これは偽王子であって、後々、学園に不幸をもたらす事件になったが、
    我々としてはまずまずの満足である


  との書き出しから始まる第一章「烏丸紅子恋愛事件」を皮切りに、5編の連作短編が
 収められた、

   桜庭一樹 「青年のための読書クラブ」(新潮社)

   

  を読了。

  本の装丁は、いかにも「青年のための読書クラブ」というタイトルの響きをそのまま表現
 したかのようで、古めかしく、美しい。

  物語は、東京山の手のお嬢様学校・聖マリアナ学園の、あらゆる年代で起こった読書倶楽
 部絡みの5つの事件を、その当事者たる読書倶楽部の面々が、自分たちの視点からその事件
 を記録、記述したもので、寓話的。

  それぞれの物語(事件)はどれも、華美で、饒舌な文体をもって単純化、戯画化されてお
 り、いかにも文学少女たちの書き残した手記であるよう。
  年代と共に、その時代に合わせた文体が取り入れられており、年を経ることで文章がくだ
 けてくるのも面白い。

   <ポニーテールにバルーンスカートを穿いて、
    薄化粧でおしゃれして待ち合わせの場所に現れた。
    学園にいるときとは別人の如き女っぷりであった。
    くわえ煙草で、ハイヒールを輝かせてディスコクラブに入っていき、
    馴染みの不良少年にしなだれかかった


   <ここにいると、アポロが月に飛び出す音も、安田講堂で戦う声も、
    すべてが聞こえる気がした。
    新宿の花園神社に誘われて顔を出すと、
    白塗りの男たちが暗黒神話の真っ最中だった
> (→参照唐十郎

  ただ戯画化され過ぎている為に、各時代の空気的なものが、イメージままの(ステロタイ
 プ的な)60年代の学園紛争やアングラ、ジャズ喫茶であり、80年代バブル期の様相で、執筆
 者(文章を綴っているの)が主に当時の女子校生という設定なのに、同時代的なリアリティ
 には欠けている。

  連作短編集としての配列・構成は綺麗で、各編合わせて一本の長編として読める。
  というか、一本の長編だけども連作短編集としても読める、と言った方が正しいか。


   著者引用文献

    エドモン・ロスタン 「シラノ・ド・ベルジュラック」(岩波文庫)
    シェイクスピア 「マクベス」(新潮文庫)
    ホーソン 「緋文字(ひもんじ)」(岩波文庫)
    バロネス・オルツィ 「紅はこべ」(創元推理文庫)


   外部リンク

    桜庭一樹『青年のための読書クラブ』|新潮社

    桜庭一樹オフィシャルサイト Scheherzade - Entrance





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最終更新日  2007年07月12日 13時28分36秒
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