
この作品も見ながら以前見たことに気づいたが、細部のすばらしさに思わず最後まで見た。
さすがのワイラー作品「
女相続人」('49)である。これを見ずして「
風と共に去りぬ」('39)のみでは
オリヴィア・デ・ハヴィランドの真価を見失うこととなる。
ジョーン・フォンテンが先にアカデミー賞を受けそれも姉妹仲を悪くした一因と言われるが、負けず嫌いでなければ勤まらぬだろう女優業としてはいたし方もあるまい。
それにしても見事な感情演技、悲しみをひそめながら一瞬の惑溺に震えるとき、或いは能面のような表情にもひそかな喜怒哀楽を秘めて、全編がハヴィランドの名舞台と化する。
父親が
ラルフ・リチャードソン、叔母が
ミリアム・ホプキンスという芸達者にも囲まれて、まるで舞台芸術の精華を見るべきあんばいである。外景には
モンティ・クリフトがいて、劇的振幅の触媒の働きをする。見事というしかない作劇である。
ウィリアム・ワイラーの映画を見た後は今日の映画の多くは色褪せる稚拙さだ。
いったん駆け落ちを仕組むモンティが、相続も何も投げ打って今すぐにと、倍して積極的となるオリヴィアに心胆寒々と退いていく若き野心の挫折――しばらく見ていなかったような新鮮な心理劇の展開に、またまた舌を巻く想いで見入った。ワイラーまた恐るべし。
映画好きが類推していくと、オリヴィアはこの後、「
見知らぬ人でなく」('55)で
ロバート・ミッチャムを相手に、モンティは「
陽のあたる場所」('51)で
エリザベス・テイラーを相手に、それぞれこの延長戦をやっていることとなる。ご興味の向きはいずれも見所充分、ご覧あれ!
聞けば
ヘンリー・ジェイムズの中篇をゲッツ夫妻が戯曲化、その映画化という。'30~40年代は才能のレベルが違うという感じを、痛く強める。展開が、巧過ぎるくらい巧いのである。
モンティは永くリズと一緒になるような噂がありましたが、「愛情の花咲く樹」あたりを最後にそれも立ち消え、内省的と共に、神経質すぎたのかもしれませんね。フロイトまで演じていますからね。
「女相続人」は一種悪役、でも作品は見事なものです。騙されても好き、かも知れません。(Apr 28, 2007 07:25:48 AM)