イザベル・アジャーニは奇行で有名だが、すでに今年52歳、しかしこの間見たコンスタン原作<ドミニック>の映画化である「
惑い」(2002)のとき47歳にしても、その若い役を少しも違和感なく演じているのには驚いた。文芸作品の映画化として作品はさほどでもなかったが、アジャーニの若さには少々吃驚した。
そこでイザベル・アジャーニの名前で「
ボン・ヴォヤージュ」(2003)を見てみたら、これも年齢相応とはとても言えない役で、共演の実際27歳
ヴィルジニー・ルドワイヤンと同年齢くらいの現役のスター女優を演じて
ジェラール・ドパルデュー扮する大臣に岡惚れされるのだからまたまた驚いた。
パリ陥落当時を舞台に、緊迫ただならぬ世情を軸にしてたびたびうそ泣きなどして見せながら男たちを籠絡、絡む男を殺害しての発端だから、動きの多い画面の中を泳ぐさまは、とても48歳時のそれではない。冤罪を幼馴染の作家に押し付け、自らは嘘にウソを重ねて権力を利用という役柄の若さは、意外に映画を面白くさせてはいた。
確かにド・アップなどすればその肌の衰えか、整形の末いささか能面じみたのっぺりした肌理も伺えようが、ほとんどがフル・ショット、そのあたりもしっかり計算された上の出演なのではあろう。そのスター女優に翻弄されて戦時のドサクサに便乗、脱獄して逃げ惑う
グレゴリー・デランジェールと獄中の同僚であった
イヴァン・アタル(シャルロット・ゲンズブール夫君)と、結構てんやわんやの追っかけハチャメチャが退屈せずに見れるのである。
フランス映画らしいエスプリの面目もあって、まだまだ若きスター女優を演じて無理のなかったアジャーニ以外も、テンポ良し、遊び心も及第点の、まずは拾い物の一篇。