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この広い空のどこかで今日もいい日旅立ち

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Oct 31, 2008
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カテゴリ:映画
久しぶりに作家性の強い、それも衒いに終わることなく、見事な語り口で、その主題をゆくりなく浮かび上がらせ、しかもそれが静謐な説得で、巻を置くその終焉の中に再生の光明を照射して見せた作品。あまりデータが無いのが残念だが、その名を覚えておきたいメヒディ・ノロウジアン演出のいま知る唯一の「レオポルド・ブルームへの手紙」(2002)である。

囚人ものというジャンルには幾つもの収穫があるけれども、これはその新たな大いなる収穫であろうし、それを超えても、フラッシュバックの意味が幾重にも重なるその語りをこそ、改めて観る映画でもあるだろうか。筆者などは、ヘッセがヘッセという名を捨て、エーミール・シンクレール名義で書いた「デミアン」の――エピグラフ<私は、私の中から出て行こうとしたものを、ただ出て行かせようとしていただけなのに、何故、それがそんなに困難だったか>という、この主題にも響くことばを思い出したほどである。

物語は、母親の一種神経症染みた存在がその子スティーヴンの生涯に翳を落とし、やがては母親の愛人を殺害してしまい、刑に服する中で少年レオポルド・ブルームに手紙を書くことで自らの救済と再生を目指していくという表面の成り立ちではある。しかし、その結構を徐々に破るが如くに主題が息づいて行くさまが、まさしく見どころで、出所後の就職先での雇い主や女店員、常連客とのいきさつが触媒となってスティーヴンの寡黙な人間像が明確に成立して行くことこそが映画の巧みというべきだろう。

スティーヴンを演じるジョセフ・ファインズも見事だし、母親役のエリザベス・シュー、脇を固める役者陣がいずれもどこが欠けても点睛を欠く案配の隙間なき演じっぷりで、デニス・ホッパーが比類なき性悪男を果敢に演じてもいる。
ここには全くステレオタイプなものはひとつも無くて、いずれの登場人物も切っ先鋭く生の棲み家を希求しているように見え、その結果である出来事はどれも必然の如く炙り出される。そして、それを静かに見つめ通したスティーヴンあるいはレオポルドが、ゆくりなき救済と光明に近づくさまがまるで文学の贈りものとでも言えるような面持ちで終局を飾るのが絶妙なのである。
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Last updated  Oct 31, 2008 04:44:41 PM
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