
アメリカと戦争をしたことすら知らない若者の存在も脳裏に浮かべて企画されたのだろう「あなたは廣田弘毅を知っていますか?」という終幕に導く城山三郎原作・テレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル「
落日燃ゆ」、名だたる歴史上の人物が登場して、こんな役もやるようになったかとその貫禄にふさわしい俳優もいれば時期尚早にしか見えない貫禄不足もいて、それだけでも面白いが、風貌そっくりさん随一は津川雅彦の扮した吉田茂だろうか。
所詮、当時の二重構造のような<統帥権の独立>という概念はアメリカ側には理解の外、軍部の独走の歯止めともならなかった内閣の運命は濁流にのまれる小枝の如し、東京裁判の中で軍部と同様の裁断を受ける。
きわめて地味な宰相であったらしい廣田弘毅とその家族を中心としてドラマは進行するが、吉田茂との対比もこの人物の肖像を明らかにするに功だが、強権そのものとなった軍部とのやり取りにはもはや人種が違うという趣。過ぎ去りしこの日々を転じて、現代の日本を見てもカタチは異なれども大同小異、進歩しとらんなあといささか天も仰ぎたくなるが……。
妻を映じる高橋恵子は関根恵子時代の「
遊び」('71)から38年、北大路欣也また「
濡れた二人」('68)より41年、子役時代から知らぬではないから半世紀を超えたか、先のTV「
華麗なる一族」といい、山村聰や佐分利信の役どころを演じるのを観るとは、うたた今昔。
そっくりさん第2位は神山茂の高橋是清か。
粛々ととは、よく聞く政治家の言い逃れのことばに聴こえてしまうが、字句通りいかなる抗弁もせず断頭台に消えたという廣田弘毅を知るだけで、現代政治家に飲ませたい爪の垢代わりにもなる人物像ではある。若者とともに現代政治家にも向けられた作品と思えたが、ご本人たちは思わぬだろうなあ、そして歴史の同じ轍を踏まぬとことばでは言うだろうが……。
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