翠　の　風

題名：「昔の恋人」
編者：藤堂志津子
発行：集英社文庫
頁数：２７１
読みやすさ：４／５
おすすめ度：３／５

　久々にこういう本を読むことができました。しかも小説で恋愛モノ！
　ん～～ふつうのオジサマをしている私にはいろいろと考えさせられ
る内容でしたねぇ。

　一冊に４編の小説がインデックスされた短編集でしたが、主人公は
いずれもひと歳いった女性で、過去に良くも悪くもちょっと屈折した恋
愛過去を持っていて、今なお何らかの形でその影を引きずっている、
といった設定でした。

　若い頃経験した恋愛の形も様々で、燃えるようにエネルギーを傾け
たものもあれば、その当時は恋愛とは認識しないでただ流れのまま
過ごしていた関係もあります。でも何年もの月日を経て、その当時の
関係を振り返る時、思い出される状況の一つ一つに分析を加えるこ
とができるんですね。
　そして、潜在意識の中にあって、何年も背負ってきた深い傷やわだ
かまりを、時を超えて整理していく主人公たちの気持ちの動き方がと
てもうまく描かれています。

　読んでいてとても切なくなってくる反面、霧が晴れていくような開放
感もあり、不思議な心境になる内容でした。
　設定されれている年齢も自分に近く、妙な緊張感が漂うストーリー
に引っ張られてしまいました。

　短すぎない短編が４本、と暇を見つけて読むには手頃な構成で、
読みやすい本でした。