皆で鍋を囲んでみた。沢田君的な日常episode4~みなでなべをかこんでみた~ 外は寒風。インフルエンザが猛威を奮い、外で眠ろうものなら一撃であの世に送られる季節。 そんなとき、食卓に頻繁に現れるようになる食事。 あるときは、友情を深め合う場であり。またあるときは何かのお祝いであり、さらにあるときは、お母さんのただの冷蔵庫の掃除だったりする。 そう、鍋である。 鍋はいい。冷え切った人間の心を暖かくしてくれる。 「いりゃあああぁぁ!!」 「さっせるかあああぁあ!!」 「・・・・・・ひょい」 「もぐもぐ。あっ、そのお肉できてますよ」 「にく~~~!!」 「もらったぁあああ!!」 「・・・ひょいぱく」 「てめ!?」 「おう、じーざすくらいすと!!」 「あったかいですねぇ」 「はっ、その肉はもらったああ!!」 「ざけんなぁ!てめぇはしいたけでも食ってろ!!」 「・・・ひょいぱくひょいぱく」 「てめ!俺のほうが先に箸つけたろうが!!」 「はぁ!?よく見てみろ!俺のほうがより真ん中を掴んでるだろうが!」 「どこのルールだそれは!」 「ポン酢とって頂けますか?」 「はいどうぞぉ」 鍋はいいね。うん。 と、いうわけで、只今沢田邸ではタコさんの歓迎会と称した鍋パーティをやっている。 ちなみに、親友の健吾も誘ってもないのになぜかいる。 こいつは、なんかもう凄い奴で、以前ケロ子を見つかってしまったときも「俺の妹、生まれつき小さくて」という説明で納得してくれた。 馬鹿なのか、それとも実は大物なのか。 なにはともあれ、騒がしいながらも今日は良い一日になりそうだ。 どっご~んっ!! ・・・騒がしすぎじゃね? 「なっ、なにごと!?」 叫ぶ健吾。 「あっ、すみません。ごまダレとってもらえます?」 「これですね」 「どうもすみません~」 へぇ、意外と普通の人だったんだな健吾。 「食事中だぞ。列車が突っ込んできたくらいでみっともない」 「うあ!なんか出てきたぞ友則!!」 あっ、この鶏肉もういいころだな。 「ぎゃぁ!つかまったぁ!!助けてくれぇ!!」 ふむ。奮発して地鶏を買った甲斐があったな。 「あっ、うどんも買ってますよぉ」 「でかしたぞケロ子。やはり締めには欠かせないよな」 讃岐うどんって、鍋に入れてもこしが落ちないんだよなぁ。 「ヘルプ!!ヘルプ誰か!!なんかよくわかんない棒状のものを押し付けられてる!!」 うむ。この喉越し。さすがは天下の三大うどん。 「すみません。本日は私などのためにこんなに盛大に」 「またまたぁ、水臭いですよタコさん」 「そうだぞ。俺たちは友好の印を交し合った仲だろ?」 にっこりと微笑むタコさん。 この人の笑顔は珍しいので、こちらがどきりとさせられてしまう。 「ぐはっ!!なんか得体の知れない液体がぁ!!」 「って!うるさいわああ!!こっちが淡い恋心を楽しんでるときにぎゃぁぎゃあ叫んでんじゃねぇ!!!!」 見ると、健吾がなにやらゴリラとうちの親父を足して2で割ったような人になんか棒状の水鉄砲みたいなもので水をかけられていた。 「おまえ、すごいことになっとるな」 「あれは第1342569番宇宙人の方ですね。温厚な人たちですよ」 「だそうだ。よかったな」 「え~!!比較的温厚といわれる日本人だって危ない人多いじゃん!!」 「なんか言いたそうですよぉ」 見てみると、その第13・・・、まぁ、宇宙人の方は必死で何かを叫んでいる。ように見える。 「口パクか?」 「いえ、地球人の方には聞こえない音域で喋っているだけですよ」 「タコさん分かるの?」 「少しなら。ですがちょっとお待ちください。なにやら白菜が歯に詰まってしまったみたいで」 「あ~、困りますねぇ。爪楊枝持ってきますね」 ぴょんと台から降りるケロ子。 「できるだけ早めにお願いします」 おぉ、「そんなこといいじゃん!」等と言わない辺り、二人のことをよく分かってきたな健吾。 二分後。タコさんの白菜も取れたところで、話し合いを開始する。 「なんて言ってるの?」 「どうやら、燃料が切れてしまったようですね」 本当に通訳をするタコさん。宇宙人のことはよく分からないが、実は結構博識なほうなんじゃないだろうか。 「ガソリンかなんか?」 「いえ、かなり高価なものらしいです」 ほう。ロケット燃料かなんかか。 「違うそうです。なにぶんこの星の価値基準とは違いますから」 なるほど。たしかにそうかもな。 「あの~、タコさん?俺はなんで捕まっているんでしょうか?」 未だ、宇宙人の腕の中の健吾が聞く。 「あぁ、なんか、燃料渡さないとコイツをぶっ殺すぞ!と言ってます」 「えぇ、それはいけませんよ。殺したら生き返らないんですよ」 「今いいこといったなケロ子。俺たちは今一度、命の大切さについて考えてみるべきなのかもな」 「おーい!その命が消えそうですよ!!いま!まさに!」 必死の健吾。なにやらさすがに可哀想になってきたので、ここら辺で助けてやらないと。 「燃料の名前とかは?」 そうだよ!と首を振る健吾。 「それが、すみません。固有名詞なのでどんなものなのか」 すまなさそうにうな垂れるタコさん。 あぁ、なんて健気なんだ貴方は!! えぇ!!と叫ぶ健吾。貴様!タコさんに謝れ!! 「なんて名前なんですかぁ?」 ケロ子が話の通じない宇宙人に聞く。 「なんでも、このかたの星では「ポンーズ」というそうです」 なるほど。 「ありがとタコさん。たぶんなんとかなるよ」 作者もそこまで複雑にはしないだろう。 「うぐっ、えぐっ。ありがとうタコさん」 泣きに泣く健吾。男の涙ほど見苦しいもんもない。 「ひぐっ。あと、友則殺す」 「なんでだよ!あれ、うちのポン酢だぞ!!」 ついさきほど宇宙人さんはお帰りになった。どうやら、恩人には誠実みたいで、お礼にと、よく分からない形の肉をくれた。 「鍋も途中だったしな」 健吾も肉を見て泣き止んだ。子供か。 「それ、なんのお肉ですかぁ?」 「宇宙ガエルのかもな」 うわ~んと泣き出すケロ子。 「違いますよ。うわ、これケンタロスビーフです」 手元を覗き込んで驚くタコさん。 「・・・硬そうだね」 てか、タコさんが「うわ」などと言うのを初めて聞いた。 「・・・実は凄い肉?」 「最高級品です」 ほう。 「おぉ、さっそくいただきましょうよぉ」 「そうだそうだ」 すでに健吾はテーブルにスタンばっている。てめ。 「まぁ、せっかくだしな」 宇宙の高級食材なんて食べれる機会はそうそうないだろう。というか、そんな珍しいものを知ってるあたり、ほんとにタコさんは物知りだなぁ。 「では、私が仕込みを」 「手伝いますよう」 台所に向かうタコさんと、その肩に乗るケロ子。 「味見はまかせろ!!」 と、台所に駆けていく健吾。 「あっ、てめ!ふざけんなよ!!」 健吾に向かい右ストレートを放つ。 「甘いわ!!」 なにぃ!?クロスカウンターだと!? 健吾のカウンターが俺の顎を打ち抜く。 「はっははは。死線を潜り抜けた俺に敵はいないぜぇ」 くそうまいったな、脳震盪だ。健吾め、なかなかやりおる。 「これ、小さめに切りますかぁ?」 「いえ、せっかくです。大きめでいただきましょう」 ただ、今夜のパーティはまだまだ続きそうで。 ・・・うん。鍋はいいね、鍋は。 ・・・・続きます。きら~ん。 |