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白亜のレストラン建築大計画 [全38件]
大まかなデザインが決定し、次は大きさをどうするか。大きさをどうするかによって、必要となる材料の量が決まってくるので、予算によって建物の大きさが決まってくるということだ。 これは経済寸法を基準にして考える。 型枠の板が182cm×91cmなので、これの倍数でいけば良いのである。 高さは364cmで決定なので、あとは広さをどうするかだ。 横91cmをつなげて行くと、10枚で910cm=約9m。9m四方の真四角の建物を作ると、81平米の建物が出来上がることになる。 基礎に使う砂利は、60cm以上ひかないと冬の凍結があるらしい。 となると、81平米×0.6m=48.6平方メートル分の砂利が必要だということだ。 さらに、型枠板は単純に考えれば10枚×4方×2段+天井50枚=130枚必要になるのだが、これを前述した方法で三分の一にする。
![]() あそこは気温は高いが日陰は涼しい、その条件の下でお金のかからない建築様式になっているらしい。 そこでひさしの下にアーチをつけて、外観をリッチな雰囲気にしようという事になった。 しかしデッサンすると 「大工さんどうやって作るの?」的なものになってしまい、デザインは良いが出来るかわからないシロモノになってしまった。 これにはさすがの尾藤さんもうーっとうなっていた。 しかし後日尾さんから連絡があり、その部分を大工に聞いたら、 「できるってよ。こう、こうするんだってよ」と説明が入った。(説明は長いので省略します) じゃあ出来るのかー、ということで、ひさしの下にアーチをつけるということで決定。
でも、夏は南の窓だと暑すぎないだろうか。それから、レストランの前は雪が溜まったらそのまま下に落とせるようにしないと雪を除ける作業がものすごく大変なので、レストラン前は狭くしたいが、夏は広々とした前庭があったほうが良い。 少しでも快適かつ合理的なデザインにしなければならない。 夏は30度冬はマイナス20度の環境の中で、いかにデザインするか。 予算があれば超機密性の設計で、夏はクーラー冬は暖房で済むが、こちらの事情はそうではないので、金のないやつは頭と体力を使うしかないのである。 そこで一つのアイデアが湧いた。 基本はコンクリートの箱型の建物である。 これを、南側の屋根を180cm壁より出して、ひさしにする。 そうすれば雪はある程度防げるし、夏は日よけになる。 このアイデアで建物そのもののデザインは決った。あとは細部のデザインである。
おおまかな工法を理解した後は、外観のデザインの話になる。経済寸法でいくと同時に、冬にトラブルのない設計にしなければならない。 モデルになったモービル小屋には人が住んでいないし、雪を除けるという発想のもとに建てられていない。 降ったらそのまま、人が入らなくてもよいスタイルである。 しかしレストランはそうはいかない。 お客さんの事を考えると、まず冬の事が頭をよぎる。 まず、建設予定地は北から風が吹くので(つまり北側に雪が多く積もる)、南に窓をつければ北の窓は必要ないのではないかと考えた。 また、南側の窓を開閉式にすると暖房効率が悪いから、はめ殺しの窓にしよう、と尾藤さんは言う。
こんな話しを1回で理解した訳ではなく、尾藤さんの海荘に何度も出向いてはその度に同じ話しを聞き、ようやく理解したのである。ある時は、秋田の友達から新米のきりたんぽ送ってきたから鍋しようよーと、持ちかけては建築の話し、 あるときは知り合いがシャコをどっさり持って来たから食べに来ないかと言われ、シャコの殻をむきながら建築の話し。 密漁のアワビがどっさり来たから来ないかと言われ、アワビのステーキ(生より火を通したほうが断然美味しい)を食べながら建築の話し。こんな感じだった。
後日、尾藤さんの海荘にまた遊びに行った。 もうレストランの事は望みの薄い気持ちになっていたので、特にその話をしにいった訳ではなく、 「この前の建築士の筑紫がこう言ってたよ。無理だよなー」というような話を何気なく尾藤さんにした。 すると今度は尾藤さんが、 「何言ってるのー!プロの話は信じるなって。 経験のある大工はサイズさえ分かれば図面なくても建てれるの。まず、何せ経済寸法で建物のサイズを決める。いわゆる材料の規格で建物を作るの。規格そのままで使えば切らないで済むしロスもないからね。 そして単純な形にする。それは長方形、それ以外ダメ。こっちを少し出すとか引っ込めるとか、ちょっと変わったことをしようとすると、手間と材料がかかる。そしてそれが全て金額にはねかえってくる。 そうすると、経済性でサイズと形が決ってくる。それからデッサンなど繰り返しして、イメージを創り上げる。 大体決ってきたら、内部の間取りなどを考える。 そして入り口の位置、窓の位置、トイレ・厨房などの水周りの位置が決れば、配管の位置が決る。あとコンセントの位置も大事だな。 そういうのを全部決めたら、土木の重機を借りて、引退した土木作業員でも頼んで1週間で土木工事を終える。 そこに砂利をひいて配管を床下に作り、それから大工に頼む。 大工はそこに型枠を造っていく。 型枠が出来たら生コンを流し込む。 型枠は経済寸法でいくから切る作業もない、切っていないので使い回しがきく。 どういう事かというと、型板は約180×90センチだから、天上までの高さを2枚分の高さつまり360センチにする。 まず型枠を組んで下段を作り、そこにコンクリートを流し込む。そうすると建物の下半分が出来る。固まったら下段で使った型枠を外して、上段で使う。壁上段が固まったら、さらにそれを外して天井で使う。 そこまで使いまわすと、型枠板の必要数が三分の一で済む。 あと、屋根は特に大事だ。雨漏りすると困るし。 屋根は壁より20センチ位外側に出せば壁を伝って雨漏りしない。 断熱材は型枠の内側に入れてコンクリートを流せばそのまま完成となる。 あとは浄水槽が必要だ、あそこら辺は下水道がないからな。手順は分かっているから心配するなー。 これを全部プロに頼んだらどうなると思う? 現場監督は必要だし、設計士が図面を書くし、おまけに建築会社の利益まである。資金がいくらあっても追いつかないよ。」
やはり現状でいくらかかるか全く分からなかった。尾藤さんが物置を建てた頃とは資材の値も違うだろうし、同じ土木工事・同じ地域でも、場所が違えば条件は全く変わる。 ある週末、尾藤さんの別荘(海荘)に遊びに行こうと出発し、買い物がてら大型スーパーに寄った。 そこで偶然一級建築士の友達筑紫君に会った。 「何してるの?」 「ブラブラしてたよ。」 「これから友達の家に行くけど一緒に行かない?」 「いいの?」 「いいよー、行こう行こう」 と、筑紫を連れていった。 そして海荘でお互いを紹介して、庭でバーベキューをしながら建築談議となった。 その後、レストラン計画の話を打ち明けた。 「いいねー、安く設計するよ」ってな感じでワキアイアイだったが、金額を言うと筑紫は 「全く何を言ってるの??」となった。 「土を自分で盛って竪穴式住居を作っても、まぁ家として住めるからねー」と。 つまるところ、尾藤さんの言った金額では土盛り程度しか出来ないということだ。 しかし、実はこの別荘(海荘)も尾藤さんがスノーモービル物置と同じ工法で建てたものだったので、話しは早かった。 建築法の全てを、その建物の中で壁や天井を指差しながら説明した。筑紫は色々な質問をして、尾藤さんは答えていたが、こっちは基礎のきの字も知らないド素人なので、はたで聞いていても全く分からなかった。 帰りの車の中でもう一度筑紫に質問攻めをしたが、帰ってきた答えは 「絶対無理。お前が無職で時間があって、なおかつ尾藤さんくらい知識とバイタリティーがあれば別だけど。」 そーかー、まず無職が無理だなー。と思い、少し落ち込んだ。 その時はプロの筑紫の言う事をそのまんま信じてしまったのである。 |一覧| |
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