トニー滝谷 @リトルシアター
寒波が訪れた昨晩、開催中のBath Film Festival(11月12日まで)の上映作品の中から市川準監督・ロカルノ映画際審査員特別賞受賞の「トニー滝谷」を鑑賞してきました。主演:ひとり芝居で有名な個性派俳優・イッセー尾形、近頃は本格派女優に仲間入りしますます綺麗になった宮沢りえ、原作:村上春樹、音楽:坂本龍一と豪華な顔ぶれ。日本では2004年公開だったので、すでにご覧になった方も多いのでは?会場はBath中心部の小さな映画館その名もLittle Theatre。以前隣町の友達にリトル・シアターはもうないといったのは勘違い。ここでお詫び訂正!平日の夜9時と遅い上映だし、月曜日にチケットの確認に行ったときに「結構混みそうですか?」と尋ねたら、「Not really(いや、別に)」とそっけなく答えられたので、ガラガラなのかしら~と恐る恐る映画館の近くまで行くと、入場のためにちょっとした列ができており、会場はほぼ満席(9割くらい)。日本人としてはなんだかほっとしました♪この映画館の中には、なつかしの小シネマ系の映画館(三軒茶屋とか中目黒とか)っぽいの雰囲気が漂っていました。映画祭の主催者の挨拶のあと、上映開始。 とても淡々とした静かな映画。余分な装飾と無駄なキャストが削られ、村上春樹の作品独特の喪失感とちょっとシュールな感覚が上手く描かれていたと思いました。坂本龍一の抑えられた繊細なメロディーがすごくさりげなくマッチ。イッセー尾形が中年の孤独と悲哀を丸い背中とうつろな表情で見事に表現し、宮沢りえは買物依存症でどこか浮世離れした、はかなくも美しい女性を演じ切っていました。全体的にあまりに淡々としているので、一体この映画館にいる何人のひとがこの感じを理解できるのかしら、とちょっと心配になりました。こちらには村上春樹のファンのひとも多いから、そういうひとにはじんわりくるのかもしれませんが、こういう日本的な繊細な心のひだとか、抑制された表現とか、異文化ではどれくらい伝わるものなのかな~。相棒は「Beautifulな映画だね」と余韻をかみしめていたようでしたが。そして、あんまり書くとネタばれになるのですが、買物依存症で悲しい事態に陥るこの女性に対して、相棒は「こういう悲しい事態に陥らないように、ファッションに気をとられ過ぎて、買物ばっかりするのはよくない」 と言い、私の反論は「こういう悲しい事態に陥らないように、女性に買物を我慢させるのはよくない」。男女のファッション感、買物論の相違が露呈(笑)さて、いつも思うんですけど、イギリス人の映画館でのマナーでいいなと思うのは、面白いシーンがあったら、声を出してみんなで思いっきりガハハと笑うこと。最初にイギリスで映画を観たときはこの大笑いにはびっくりしましたよ!けれど今では慣れたもので、この静かな映画でも一箇所みんなが笑ったシーンでは、私が一番ばか笑いしてたかも・・・(*'-'*)?逆に嫌なマナーは、エンドロールが流れると、さっさと席を立って、大声でしゃべったりするところ。日本だとエンドロールを楽しむのも映画の一部って感覚じゃありませんでしたっけ?この前ピンボケだったので、リベンジ・夜のバースアビー再び 村上春樹の他の作品は結構好きで読んでいるんですが(ダンスダンスダンス、ねじまき鳥クロニカル、羊シリーズ、旅のエッセイなど)これは読んだことがないので、今度は原作(短編集「レキシントンの幽霊」に所収)も読んで映画と比べてみようと思っています。