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昆虫倶楽部リターンズ 岡山矢掛編

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2011/07/01
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見てきたぜ、エクレール お菓子放浪記

ただ今改めてプログラムを開きロケーション・ガイドで撮影地を確認していたら、泣きが入って困っている。
鼻水をすすりながら書いてみようと思う。


東京では公開が終わってしまった。

よし!大阪で見たる!と、思うも、なかなか梅田に足を運べないでいた。

本日まさにギリギリセーフでようやくテアトル梅田に辿りつくことができた。
映画の神様が導いてくれたとしか思えないラッキーをかみしめ席についた。

見終わっての率直な感想、見に来て良かった。

いま、このときに、この映画を見に来て本当に良かったと、心から思った。

「お菓子放浪記」原作を子供の頃図書館で借りて一気に読んだ。
子供の頃、父を亡くしてから結構厳しい生活を送っていたので、この物語の主人公ほどではないが、エクレールに焦がれ周囲の大人の優しさを心の糧に精一杯明るく生きようとする主人公に共感を抱いた。
その後、1976年「木下恵介アワー」の18作品目としてテレビ放映されたが、原作を読んでいたからということもあってかいまでも記憶に新しい。ストーリー、作品の挿入歌「お菓子の好きなパリ娘」は、いまでもそらで唄えるほどに心に残っている。
ちなみに木下恵介監督の映画で猫山が印象に残る作品「カルメン故郷に帰る」「破れ太鼓」「この子を残して」「新・喜びも悲しみも幾歳月」「父」。

そして今回の「エクレール お菓子放浪記」

映画全編を通して描かれていたのは、人間讃歌だ。それは、木下恵介を彷彿とさせた。

たぶん、自分が10代20代の、たかが10本20本偏ったこだわりで映画を見た位で世界を知った気になっていた、鼻持ちならない若造の頃にこの映画を見ても、きっと、お涙ちょうだいのおセンチなメロドラマと斬って捨てたろう。もったいなくも。


そういう点においても、いまこのときにこの映画と出会えたことを心から幸せに思う。
映画の価値は、映画ごと、それぞれに存在する。ひとつではないのだ。

そして本作品の価値は、なによりも日本の美しい原風景「在りし日の善き姿」をフィルムに焼き付け遺してくれたことではないか。

自分も素人ながらにレンズ越しに人を撮るようになって実感したのだが、撮影者の心情が少なからず映り込むものだ。

映像が、イギリス映画のように、繊細でとても優しい。

たとえば、作品の冒頭を彩る満開の桜並木。こんなに美しい桜並木を映画で鑑賞した記憶がない。
映画は、そのほとんどを東日本震災前の宮城県と福島県で撮影された。

完成した映画を上映する予定だった、宮城県の岡田劇場は津波で跡形もなく流されてしまったために、現地で上映するめども立っていないと聞いた。

その岡田劇場は映画では芝居小屋という設定になっていた。

いしだあゆみさん、女優が、老いをさらけ出して演技をするのはともすると壮絶で見るほうが苦しくなってしまいがちだが、むしろ生き生きとしていて素敵だった。主人公に注がれるまなざしの優しさが終始隠しきれていなかったのは人間味のあらわれ、良かったと思う。

主人公役の吉井くん、大変良く頑張りました。嫌味にウマぶったところがなく素直に等身大で演じているのが良かった。

浜田先生役の早織さんも、同様。背伸びをしない演技がさわやかだった。

高橋恵子さん、ちょっとしか出てこなかったがずっと見ていたかった。

人類史上最も映画を愛した人、故淀川長治先生がもしもこの映画をご覧になられたらどう評されたことだろう。

「日本版ニューシネマパラダイスと申し上げるとちょっと大げさになっちゃいます。でもね、この映画の監督さんが、人間を見つめるまなざし、優しさがじわじわと伝わってくるんです。
それから主役の子、昭和の子供らしい子供、よく見つけてきましたね。それから撮影、なんて美しい、美しい、宮城県、福島県。忘れかけていたノスタルジックな日本の美しい自然を、思い出しました。この映画は、日本人の、誰もが、心のなかに、ずっと温めていて、忘れかけていた日本の原風景を、呼び覚ましてくれる、誰もが愛さずにおれない、映画です。」

なんちゃって。

エンドロール、エキストラの皆さんのひとりひとりの名前が、ずらりと並ぶ。圧巻のもうひとつのラストシーンに納まりかけた涙が再びあふれてしまった。

出演した人のなかには津波にのまれて、還らぬ人になってしまった人もいらっしゃったという。

作品のなかで、恩人の死を主人公に告げる巡査が、かみしめるように言う一言
「善い人だって戦争では死んでしまうんだ」

胸に突き刺さる。
けれども思うのだ。

希望を捨ててはならない。
生きている限りは、生き抜くことだ。

ラストシーンの幻想的な雪景色を感傷的な夢と言ってしまえば身もふたもない。

あきらめてしまったらそれまでだ。

いま世の中は、怒りとか絶望が大きな渦を巻いて人々をのみこもうとしている。

ぞっとするほどの憤りがあふれている。

けれども私は信じたい。

人は、人に救われると。

強く願おう。

復興と、再生を。





この映画に関わったありとあらゆる人たち、この映画を上映してくれた映画館に感謝したい。ありがとう。









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Last updated  2011/07/01 05:49:53 PM



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