第九巻 愛の疾走/午後の曳航/肉体の学校「愛の疾走」☆ 諏訪湖の漁師・田所修一は、仕事に誇りを持ちながらも 近代的なデルタ・カメラ工場に勤める若い女性たちに憧れを抱いている。 小説「愛の疾走」を実際の恋愛を辿って描こうと思いついた大島十之助は、 修一とデルタ・カメラの従業員・正木美代を引き合わせ… 「午後の曳航」 ☆ 十三歳の登は、横浜の谷戸坂上の家で三十三歳の母・房子と暮らす。 母にせがんで貨物船洛陽丸を見学した登は、船を案内してくれた 二等航海士・竜二を慕いつつ、母と彼の情事を覗き見していたが、 二人が結婚すると告げられたとき、仲間たちとあることを実行に移す… 「肉体の学校」 ☆ 上流階級出身で戦後は洋裁店を経営する浅野妙子は友人との例会のあと、 ゲイ・バア「ヒヤシンス」で美貌のバーテンダー・千吉と出会う。 千吉の傲慢さに翻弄され、同棲を始めた後も主導権を握られ続ける妙子は、 互いの浮気を認め合うことを提案し… |