PS 100pieces 31-40☆31まだ閉じた 瞼を射抜く 燃える色に驚きて 窓に駆け寄り 見渡せば 敷き詰められた 華の紅 薔薇の色 「朝ぼらけ 有明の月と みるまでに 吉野の里に ふれる白雪」 ☆32 誰かとめて 僕をとめて 吹き寄せ めぐり 轟々と鳴る 満座の非難を 浴びたとしても 僕はそこにはいない いないから 誰かとめて この足が踏み出る前に 「山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり」 ☆33 ときが移り こころ変わる 時が流れ 心あらう 花は去っても 色は残り きみなくしても 僕は静か 「久方の 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ」 ☆34 私の幼馴染は 孤独を知る人 私の旧友は 自分を愉しむ人 私の親友は まだいない 私の盟友は 夢路を漕ぎ続ける人 「たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに」 ☆35 傷つき倒れ 手を延べる先に触れたもの なお立ち上がる 覇気をくれたもの たとえあなたが 忘れていても 蘇えり照らす あの言の葉の灯 「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」 ☆36 冬はよる 君といて 冷たき月を愛でるとき こわばりかたまる腕を 合い組み またほどくとき 肌の熱さに驚いて ひとり なお追う時間 「夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿らむ」 ☆37 みて この野に溢れる 無数の宝珠 瑠璃(るり)玻璃(はり)白珠(しらたま)、 瑪瑙(めのう)に琥珀(こはく)、 珊瑚(さんご)と沈香(じんこう)、 紅玉(るびい)青玉(さふぁいあ)緑玉(えめらるど)、 黄金(こがね)白銀(しらがね)金剛石(だいやもんど)、 ならびならべて とがらせて さあ なにしてあそぶ? 「しらつゆに 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける」 ☆38 あの不実な月 満ちてはかける月に誓うのはおやめになって もしどうしてもとおっしゃるなら どうぞあなた自身にお誓いくださいますように あなたを神と頼むわたくしなのですもの 「わすらるる 身をば思はず 誓ひてし 人のいのちの 惜しくもあるかな」 ☆39 秘めたる恋に どれほど耐えるか なんて どんどんとハードルを高くして 葎に埋もれてしまったよ 自分の姿も見えやしない 自分の思いもわかりゃしない この草薙ぐ剣 つるぎをおくれ 「浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき」 ☆40 本と猫と少しの林檎 それさえあれば 何もいらないはずなのに 映画とお風呂とチョコレート それさえあれば 十二分の贅沢なのに ああまた 周到にも 恋に恋しておちてゆく からりと思いが晴れるまで 「忍ぶれど 色にいでにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」 |