やきもの屋の『モー娘』たち

えーと、ぼくは年間16ケ所くらいのクラフトフェアや陶器祭に
出展して、自作を売ってますが・・・
ここ4、5年で顕著なのが陶芸界の『モー娘現象』。
彼女たちだけが元気がイイ。

やきもの屋の世界、陶芸界に『モー娘』たちが出現してます。
「女流陶芸家」とは趣を異にして、『芸術』なんて大きいコトバは意識の外で、 リラックスしてて技術があり、おもしろいものを作り、陶器祭やクラフトフェァに 出展してリーズナブルな価格で器を売る女の子の作り手たちです。 彼女たちは、ぼくみたいなやきもの屋のライバルでもあり、脅威です。

毎年毎年、美術系短大・大学/訓練校/試験場から陶芸をめざす人たちが
出て来ます。就職先がない。うちにも毎年求人依頼が来ます。

それでか、訓練校の志望者数がへって倍率が下がりはじめてるそう。
それと女性の比率があがって来てる。

京都の訓練校はロクロ科では30人中6人が女性ということですが、
図案科は20人中ほとんど女性。ロクロは男、絵つけが女という旧来の
図式のまんまなんですが・・・

瀬戸の訓練校に目を転じると
成形科:産地後継者養成20人:若年者対象で半数が女性。
デザイン科:広義の陶磁器装飾技術修得コースは全員が女性。
成形デザイン科:陶芸技術全般修得コースは3分の2が女性。

妻子を養って行く男の職業としてのムズカシさがこういう数字に反映されつつ
あるってことなんでしょうか。アジアではやきもの作りは女の仕事。
『銀花』の「母は陶芸家」という特集もありましたね。

『やきものつくりはお金にならない仕事なのでバリでは女の仕事です』という
言葉をバリ島ボナの製陶工房のチョー美少女から聞いたことも思い出されます、

http://www.t-craft.com/happuyo/bali3.html
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今年の五条坂陶器祭、うちのおとなりは京都訓練校の在校生と卒業生が
グループ出店してるテント。全員が窯元の息子か娘でした。
同期の男の子が遊びに来て「いまなにやってンの?」と聞かれ

『やっぱり訓練校出てるし、それを生かして・・・旅館の配膳係り』

とギャグとばしてたけどなぁー

男の仕事は『狩り』。マンモスを獲りにいくことなんやけど、
このマンモスがこの頃ごっつう痩せてしもてて、見る影もないトホホな状況。
2003年から労働者人口が減りはじめます。2005年からは人口減少。
パイは確実に縮小中。
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25年前、京焼窯元での実見。
後輩の絵つけ師(嵯峨美短大陶芸科卒)が同期の女の子にせがまれて
昼休みにロクロ場でロクロやって見せてたら、窯元の奥さんが見とがめて・・・

『ロクロ場は遊び場やないっ!
あんたらが遊びでロクロやらんといてっ!』・・・と、
キツーに怒られてました。

ところがここんところで風向きはダイブ変わってきたようで・・・

ふみよ

いま30才前後の『やきもの屋のモー娘』たちは10年ほど前に美術系の学校を出て、

女にきびっしい京都の場合は窯元の現場で裏場や絵つけしたり、
陶芸教室の講師/アルバイトしつつ先輩たちが切り開いた共同の仕事場を
ひきついだり、最近京都にもできた貸し工房を共同で使いつつ、腕をみがき陶芸からはなれず公募展入選をねらい、同時に陶器祭で『新感覚』のうつわを売って『作り手の思い』と『使い手の思い』の差を感じ取り、自作に反映してきたヒトたち。

信楽/益子なんかの場合は女のロクロ師だって女の機械ロクロ操作師だって伝統。信楽は縄でまわすロクロだったころは姫弟子(ひでし)、ロクロの駆動力としてロクロの前にすわりこんで縄ひっぱって仕事してましたしね。昔っから産地の現場では女も男も労働力として共同の生産体制の中に組込まれてました。農家の女性と同じですよね。

この地のモー娘たちは試験場の研修生二年やって製陶所で働いたり、作家の弟子生活を経験して、友人の仕事場を引き継ぐ、ごく狭くても自分の工房を持つ。そんな流れで来てるかなー。

いまの産地の現場をくぐって『やきもの屋の気風』を身につけた彼女たちは
「アートも陶器まつりも両方あってやきもの」を肩の力ぬいて実践してます。
おんなし技術でやきものを焼いて、時に『芸術家』にもなれば『職人』にもなり、『商売』もできなくてはダメ・・・これを楽しそうに実践してます。

益子:蹴りロクロで個人でやってて人から譲られた1立米のガス窯焼いてるヒト

「蹴りロクロでも機械ロクロでもおんなしですよー。窯おっきいから大物ばっかり作ってるうちに、やさしいちっちゃい物つくれなくなっちゃいましたー」

産地のメリットのひとつ『人の交流』にめぐまれてかわいがられ、友人の穴窯/登り窯に自作を入れてもらって渋いものも焼くことができる。官制の交流プログラムにも乗っかって韓国で毎年女性たちのグループ展をやってます、とか。女であることを『売り』にしていないのに世間の勝手な潮流が『強み』に展開する。

彼女たちの一番の『強み』は
妻子を養わなくていいことと、ローンをかかえてないこと。
独身、好きなやきものを作って自分が食べれれば良い。
または自由に陶芸をやらせてくれる理解ある堅い勤め人の夫がいる。
親の家に住んでてその中に工房がある。

彼女たちは現場をくぐってるし、産地の技術で切磋琢磨を10年してますから、思いだけが先行することなく、技術があり、うつわの使い手の主婦と感性を共有し、うつわ作陶についても細やかな気配りもでき、『表現』の分野をやる時には売ることを考えずに思いきってそれをやる、楽しい『遊び』として。
分かる人だけが分かってくれたらいいと達観してるから、理屈こねて説得なんてしない。権威主義的肩書きも必要としない・・・人格も立派。陶芸家/やきもの屋の鑑(かがみ)かも。

・・・男はなかなかこうは行かんやろー
・・・これに太刀打ちできるかなぁ
・・・うーん、くやしいなぁ

『やきもの屋のモー娘化現象』は
彼女たちの自然体の立ち居ふるまいのまわりで自然発生的に起こっている。
彼女たちのような『やきもの屋のモー娘』たちが工芸としての手づくりのやきものを変革し担っていくことになるでしょう、かなりの部分。

どうするオレ!



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