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カテゴリ:反原発・脱原発
2月9日に経済産業省で、総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会・第5回会合」が開催されました。私は傍聴できませんでしたが、資料として、中間とりまとめに関するパブコメで寄せられた意見と、意見への回答(考え方)が配布されました。
●リンク:総合資源エネルギー調査会基本政策分科会電力システム改革貫徹のための政策小委員会・中間とりまとめに対する意見募集結果について 意見への回答なので、個々人への回答ではありませんが、PDFファイル全69頁に目を通したところ、私の送った意見の文章が引用されている箇所が見付かりました。事実上、私の意見に個別に回答してくれたようなものです。 これまでの経緯と経産省の「構想」 先ず、おさらいを。今年1月13日付の当ブログの記事の繰り返しになります。 この小委員会の中間とりまとめの骨子は、2020年度以降、託送料金(送配電料金)に、以下の二つの金額を上乗せし、全消費者から徴収するというものです。 ① フクイチ事故の賠償費用として、2020年度以降、40年間に渡って凡そ2.4兆円 ② 既存の原発の廃炉費用の積み立て不足分(金額は地域によって異なる) 2019年度までは、原子力発電を持っている事業者から、一般負担金という名目でNDFへお金が流れます。 この中間とりまとめに関するパブリックコメントが、1月17日締切で、30日間に渡って行われたので、私は下記の意見を、ネットのフォームを通じて送りました。 ====私の提出したパブコメ、ここから====
2.発電方法として原子力を用いると決め、その方針を継続してきたのは東京電力を含む電力事業者であり、株主総会でも、その方針は了承されてきました。金融機関は社債購入・融資等で電力事業者を資金的に支援し、同時に利益も得てきました。又、約半世紀に渡って原子力災害に備える制度を作らず、「原発のコストは安い」と主張してきたのは、電力業界や、資源エネルギー庁ではありませんか。廃炉・賠償費用は、電力事業者・株主・金融機関の利益や国費(増税を伴わない)を優先すべきで、国民負担は最後の手段です。 3.小売での電力自由化が全面的に開始されたのは2016年度であり、それ以前は、一般家庭では地域独占の電力事業者としか契約できませんでした。選択の自由が無い中で、私自身も、請求書・契約通りの料金を支払ってきています。「中間・・・」に盛り込まれた考え方は、決済完了後の追加請求に等しいもので、消費者としても、主権者国民としても、認められません。 4.賠償相当分の「過去分」を託送料金に上乗せし、全消費者・全地域から徴収すれば、その中には福島第一原発事故の被害者も含まれることになります。被害者が賠償の原資を負担するのは本末転倒です。金額の問題ではなく、あってはならない事です。 5.3.11当時、未成年であった世代は有権者として投票による意思表示はできず、経産省言うところの「相対的に安価な電気」以外の選択肢は有りませんでした。又、3.11後に生まれた世代は、3.11前の電気の「受益者」ではありません。これらの世代が廃炉費用や「過去分」を請求される謂われは無く、公平性に著しく反する不当な請求です。 2020年度以降の託送料金に、原発の廃炉費用や、賠償費用の過去分を上乗せして全消費者に請求する考え方は、何の道理も正当性も無く、認められません。中間取りまとめの考え方は白紙に戻し、事業者・株主・金融機関・歴代取締役に相応の負担を求めることを前提として、議論を一からやり直すべきです。 尚、この意見は私個人のものであることをお断りしておきます。 寄せられたパブコメに対する経産省の回答(考え方) 前置きと振り返りはここまでで、ここからが本題です。 パブコメの結果と考え方を、締切から一ヶ月も経たずにまとめたということは、経産省が先を急いでいることの表れでしょう。 経産省の回答をまとめたのが、下の資料です。詳細は当記事冒頭のPDFをダウンロードして下さい。 経産省の回答は、提出された意見と全く噛み合っていません。 昨年の9月以降、有給休暇を食い潰して傍聴を続け、プロセスを追い続けてきた結果が、「これ」です。官僚が政策を実行に移していくプロセスの勉強にはなりましたし、報道が上っ面だけを撫でて手いるような伝え方しかしていないということは分かりましたが、それだけです。内容は噴飯ものです。 結局は政治の問題に行き着きます。託送料金への上乗せは、省令で実行できますし、貫徹小委員会のまとめを承認しているのは世耕弘成(せこう ひろしげ)経産大臣です。経産大臣は内閣総理大臣の任命ですし、内閣総理大臣は衆議院議員の指名で、衆議院議員を選んでいるのは私たち主権者・国民です。 このような道理も何も引っ繰り返したようなやり方を、国権の最高機関たる国会に諮ることなく、一省庁の権限内で実行しようというのが、現政府・現内閣の方針ということでしょう。国会で世耕大臣の不信任決議案や問責決議案が可決されれば話は違ってくるかも知れませんが、今のところ、託送料金への上乗せが国会の中で対立事項になる気配は有りません。最終的には、私たち主権者が、選挙で判断を下すしかないでしょう。 それにしても、大卒のエリートの筈の人達が、よくもまあ、こんな支離滅裂な論理を堂々と書き、公文書として公表できたものです。主権者は蔑にされているということがよくわかった回答(考え方)でした。 当記事のポンチ絵の無断利用・転載はご遠慮下さい。 春橋哲史(ツイッターアカウント:haruhasiSF) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.07.28 15:30:58
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