どっぷりレビュー

こういう社会的、政治色の濃い娯楽作品、暴力（この映画は痛いシーンが少ないけど）の末、人がたくさん死んで血がダラダラみたいな、いわゆるアクションノワールといったジャンルが苦手な人は多いと思います。暗いし地味だし楽しい話ではけしてないから。

四天王の一人チャン・ドンゴン、チョン・ジュノ、イ・ボムスら人気俳優が出演し、脚本に『JSA』『オールド・ボーイ』で監督を務めたパク・チャヌク氏が参加しています。このあたりで興味を持ってもらえれば観る人も少しは増えるんじゃないかしら。

1920年代の上海。無政府主義者（アナーキスト）のロシア人セルゲイ（チャン・ドンゴン）、朝鮮人イ・グン（チョン・ジュノ）、ハン先輩（キム・サンジュン）、トルソク（イ・ボムス）、サング（キム・イングォン）の五人は抗日テロ活動「義烈団」の一役を担い活動していた。

忠実なテロリストである反面、一仕事する前に彼らは全員で写真を撮る。そんなロマンチストな一面もあった。一人生き残ったサングが当時を回顧しながら物語は進んでいきます。

チャン・ドンゴンにチョン・ジュノ。男主役が二人いて、なんと贅沢な作品かと思いきや、チャン・ドンゴン氏はあっさりお亡くなりになられます。「主役がこんなに早く？」と呆気にとられて思い出すのは『クローサー』のスー・チーさん。時間的にはそんな感じ。

およそテロリストとは思えぬ服装に魅力的な容貌、内に秘めた美学をもち、どことなく影がある。そりゃ女性にもてるはずです。それに引き換えセルゲイとグンから思いを寄せられる日本人女性かねこ役の女優さんに華がない。化粧前と化粧後の顔があまりに違うので、ずっと別人だと思っていました。日本人役の日本語には必ず字幕をつけて欲しいと思います。

多勢に無勢で結果は目に見えていたとはいえ、夢や理想から縁遠くなってしまった私には彼らが少し眩しく映りました。2005年の韓流シネマフェスティバル上映作品です。


アナーキスト