オリジナル小説第1弾 「問.今すぐ金が必要。どうする?」
今すぐ金が必要だ。 どうする? 今までアイツ 借金取りのことだが の指を折らせるのに一生懸命働いてき た。指一本。あの人差し指が曲がるのをどれだけ待ち望んでいたか。 なのに 。 「約束どおり、これで借金の100万はチャラだな」 そう言って、俺は持っていた札束をあいつに渡したんだ。 でもな。 「はぁ?コレでチャラになるわけねぇだろぉ?」 アイツは俺の目の前で人差し指を立てた。 「お前、この指一本、いくらだと思ってんだよ」 「100万だろ?」 100万だ。そのはずだ。 俺はそいつ 人差し指 を折るためにここに来た。 「テメェ、ふざけてんじゃねぇぞ!いいか!金貸したら利子ってのがついてくんだよ!そんなこともわかんねぇか!?オイ? こ い つ 一度だけ言うぞ、人差し指一本一千万だ!」 「一千万!?そっちがふざけるな!大体、利子って高すぎ 」 最後まで言えなかった。こいつらに理屈は通用しない。 「一週間だ。それまでに1千万耳揃えて持ってこいや。なんとしてもだ」 手っ取り早く稼げる方法ってありますか? 夜。俺はネットの住民達に助けを求めた。こうする以外なかったのだ。 あまり期待はしていなかった。だからだろうか、この文章を読んだ時、妙な感覚に陥った。 「強盗でもしろよ」 まるで、自分が分かっていても自分の知識ではそれを言葉で表現できないとき、誰かが代弁してくれた。 そんな気分だ。 心の底ではなんとなくわかっていた。 消去法で考えれば非合法以外にないことを 。 だがわかっていても考えなかった。いや、考えたくなかったのか。 考えてしまえばその時点で俺はそれを実行しなければならない。 解決の手段を見つけたかった、なのに見つけたくなかった。 可笑しな話だ。 見つけてしまった以上、実行するしかない。 かくして、俺は借金を全額返済したのだった。 だが悪夢は終わらない。 追われる対象が借金取りから警察に代わっただけ。 遠くへ逃げなければ。 その為には金が必要だ。 どうする? 答えはすぐに見つかった。そして実行した。 どうやら俺には強盗の才能があるらしい。前より上手くいった。 それからも、金が必要になる度に何度も強盗を繰り返した。 今までどうして気づかなかったのだろう?どうしてその結論にたどり着かずにいたんだろう?真面目に働くよりよっぽど楽じゃないか。 捕まりなんてしないさ。俺には才能があるんだから。 ある日。 俺が隠れ家として使っている廃墟に、刃渡りが大人の男の腕の長さほどあろう、巨大な魚の解体に使う包丁を持った男が入ってきた。 「強盗だ。有り金全部出せ」 男は身長180センチくらいの細身で、包丁を持っているというよりは抱えているように見えた。 「残念ながら、今は一文無しなんです」 でも明日になれば8回目の強盗で金が一気に入る。 「ちっ、やっぱりこんなトコ住んでる奴に金なんかねぇか」 男が立ち去ろうとした瞬間、目があった しまった。 「ん?アンタひょっとして指名手配犯の・・・」 バレたか。 「今日はついてるな。強盗を強盗なんて笑わせるぜ。アンタならいくらでも持ってるハズだろ? ・・・・・・早く出せやァ!」 「そんなこと言われましても・・・・・」 まずい。早くアイツに金を渡して帰ってもらわないと。 明日の仕事に支障をきたす。 しかし今金はない。 金が必要だな。 どうする? 9回目も、同じ提案が可決された。 俺は目の前の男に向けて銃口を見せる。 「強盗を強盗なんて、笑わせますね」 「なっ!?」 「さぁ、有り金全部、頂きましょうか」 銃声。 男のポケットをあさると、中から財布が出てきた。 それを今にも命が潰えそうなそいつの手に握らせ、 最後に一言言ってやった。 「約束どおり、これで有り金全部、お渡ししましたよ」 あなたも考えてください。 今すぐ金が必要。 どうする? 模範解答はこうです。 「強盗でもしろよ」