Sadao Watabanbe:Round Trip
またまたJAZZコレクション1000のレビュー。去年ジャズ・批評で渡辺貞夫特集号で後藤誠一氏が渡辺貞夫の記念碑的作品と激賞していた「ラウンド・トリップ」がJAZZコレクション1000で再発されていたことを知り速攻で購入した。内外共廃盤だったので、とても有り難かった。個人的に渡辺貞夫を聞き始めたのはそれほど前のことではない。それまでも、グレイト・ジャズトリオとのパーカー・ナンバーを取り上げた2枚(1976,1977)は私の愛聴盤だったが、それ以外はほとんど聴いていなかった。もちろんフュージョン時代の音楽は聴いていたが、いまいちフィットしなかった。本格的に聴き始めたのは、ライブを聞いたことがきっかけで、以来新譜は欠かさずフォローしている。録音は1970年で当時のジャズシーンを彷彿とする録音だ。この年は、モントルでのライブと「Aroud The Time」それにこの[Round Trip」をリリースしている。この3つのアルバムはすべて6月の録音で、場所もモントルー、ハンブルク、ニューヨークとみんな違う。このアルバムはモントルージャズ祭に続く「ニューポート・ジャズ祭り」に出演した後の録音。ライブがあるとはいえ1年で3つの作品を録音したなんて当時の充実ぶりがうかがえる。チックとデジョネットはマイルス・バンド在籍中で、チックがサークルを結成するのは3カ月後だ。ヴィトウスはハービー・マンのところをやめてショーターと共同委作業に取り組んでいる最中だった。何回も聴いている値に、ウエイン・ショータのブルーノートでの緒作の雰囲気に似ていることに気が付いた。特にラテンフレーバーが強く、アルバム「スーパー・ノヴァ」(1969)に似ていると思った。表題曲なんて、渡辺貞夫の「スーパー・ノヴァ」みたいなものだ。録音時期が近く、サイドマンが当時の若手のバリバリなので、雰囲気が似てしまうことありそうなことだ。もっとも、ソプラニーノはショーターでなく、コルトレーンのプレイに似ていたと思う。最初の曲なんてソプニーノではなくトランペットと言われてもおかしくないほどの鋭角的なサウンドだ。サウンドは当時の演奏を彷彿させる暗めのカラー。ストイックな演奏にあっている。打楽器が多く埃っぽく雑然とした雰囲気はいかにも1970年代を感じさせる。この打楽器、4人にしては音が多すぎてオーバーダブしたのかと思ったが、スタジオに遊びに来ていた渡辺貞夫クインテットのメンツが担当していたという説もあるらしい。最後の「Sao Paulo」はその名の通りサンバの音楽で、湧き立つリズムで踊りたくなるようだ。3曲目の「Pastral」は1969年の同名のアルバムで録音されている。全くの偏見だが、今回のアルバムではソプラニーノが主だが、後半少し出るフルートの部分はいまいち緊張感が薄れたような気がする。この曲でのヴィトウスのイマジネーションあふれるベース・ソロは聴き物だ。ということで名盤であることは確かで、1970年代あたりを重点的に聴いていこうと思う。Sadao Watabanbe:Round Trip(Sony Music Labels SICP 4233)1. Round Trip~Going & Coming2. Nostargia3. Pastral4. Sao Paulo渡辺貞夫(sn,fl)チック・コリア(p,el-p)Ulpio Minucci(p Track 4 Only)Miroslav Vitous(b 1,3,4)Jack DeJohnette(Ds 1,3,4)Recorded July 15,1970,Allegro Sound Studio,NYC