Helene Grimaud:Water
エレーヌ・グリーモーのコンセプト・アルバム「Water」発売当時に入手したのだが、レビューが滞ってしまっていた。最近購入しているアルバムが多く、それぞれ何度か聴いているのだが、なかなかアップしていない。アップするためには、何回か聴いて考えをまとめなければならないのだが、それが億劫なのだ。年を取りすぎたのかもしれない。グリモーはグラモフォン移籍以来、こういうコンセプト・アルバムを何枚かリリースしている。個人的にはこういう意欲的なアルバムは大賛成だ。月並みな曲をいい演奏で残すということも大切なことは分かるが、長い目で見ると、確実に残るのは、このようなコンセプト・アルバムだ。ジャズの例だと同じ曲でも全部の演奏が違うので、存在意義があるがクラシックはそうでない。たとえ優れた演奏でも長い年月が経ってしまうと淘汰されてしまう。いまスタンダードとして名声?を博しているアルバムでも、今後どうなるかわからない。そういう環境で、これしかないというアルバムをリリースすることは、とても良いことだし、それが販売につながればそれに越したことはない。今回のアルバムは「水」を題材にした曲を集めている。それも単に曲を並べるだけではなく、新作の組曲を柱として、その組曲の曲と曲の間に過去に発表された様々な曲を入れているところが新鮮だ。この新作が良くできていて、そのほかの名曲と違和感なく収まっている。作曲者はニティン・サウニー(ソーニー)(1964-)というインド系イギリス人だ。このアルバムではプロデュースの手がけている。プロフィールを見ると、プロデューサー/アーティスト/DJ/作曲家。クラシック・ピアノ、ジャズ・ピアノ、フラメンコ・ギターの名手でもある。彼の作品は、ワールド・テクノ・ジャズ・ヒップポップ等、多岐にわたり、ひとつの分野に当てはめることができない。最近では、クラシック音楽の作曲にも手を出している。(出典:http://nozomiakanuma.blogspot.jp/2006/12/nitin-sawhney.htmlまあ、俗にいうマルチタレントだ。ここで収録されている「Water」も、とても最近クラシックの作曲を始めたとは思えない。この組曲はどの曲も一分足らずだが、サウンドは透明感が特徴で、とても耳に馴染む。いろいろなサウンドが聴こえてくるが旋律らしい旋律は聞かれない。一種の環境音楽だろうが、不思議に耳に馴染む。かえって他の曲の方が透明度が悪いというか俗っぽいというか、場違いに感じることがある。特にフォーレは感情の高ぶりが感じられ、生臭く感じてしまったのは意外だった。リストの「エステ荘の噴水」も同じように聞こえる。いいのは、ベリオとヤナーチェク。ベリオの「水のピアノ」は、テーマが類似しているので、サウニーの曲とは親和性が高いのも無理はない。ドビュッシーの「沈める寺」は透明度は高いが、スケールはさほどでもない。ところで、クラシックに限れば、最近ユニバーサルの元気がないのが気にかかる。今一番元気なのはワーナーだろうか。新譜のリリースが盛んで、どれもがとても魅力的だ。勿論再発のボックス物も怠りない。ついでソニー。ここも魅力的な新譜が続いている。ユニバーサルは新録音が単発でいまいちだ。再発も格安ボックスがなく、見劣りする。私の知るジャズ部門は頑張っているので、クラシックも、もう少し頑張ってほしい。Helene Grimaud Water(DGG 00289 479 5268)1.Berio:Wasserklavier2.Nitin Sawhney:Water Transition 1 3.Rain Tree Sketch II (Toru Takemitsu)4.Nitin Sawhney:Water Transition 2 (Nitin Sawhney)5.Barcarolle No.5 In F Sharp Minor, Op. 66 (Gabriel Faure)6.Nitin Sawhney:Water Transition 3 (Nitin Sawhney)7.Jeux d’eau, M. 30 (Maurice Ravel)8.Nitin Sawhney:Water Transition 4 (Nitin Sawhney)9.Almeria (Isaac Albeniz)10.Nitin Sawhney:Water Transition 5 (Nitin Sawhney)11.Les jeux d’eau a la Villa d’Este (Franz Liszt)12.Nitin Sawhney:Water Transition 6 (Nitin Sawhney)13.In the Mists 1. Andante (Leo? Jana?ek)14.Nitin Sawhney:Water Transition 7 (Nitin Sawhney)15.La cathedrale engloutie (Claude Debussy) Hélène Grimaud(p)NITIN Sawhney(key,guitar,Programming)Recorded New York City,Park Avenue Armoy,December 2014(Grimaud)London,Summer 2015(Sawhney)