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音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2008年09月21日
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カテゴリ:クラシック音楽



 小川典子の12の練習曲を含む晩年の作品を中心に構成されたドビュッシー・ピアノ曲全集の第4巻が発売されていました。

今年の4月に発売になっていたようですが迂闊にも気がつきませんでした。

先月それに気づきやっと入手しました。

相変わらずあいまいさのないすっきりとした仕上がりです。

■練習曲が詩情豊かなことを発見??

 難曲として知られるこの練習曲の難しさを全く感じさせません。それどころかこの曲集の詩情豊かなことをこれほど知らしめる演奏も少ないのではないかと思ってしまいます。

 他の演奏を聴くと小川の演奏では、小細工していることを感じません。実際にはいろいろやっているのでしょうがそれが表に出てこないというのは大変なことです。特にテンポに無理がなく、ルバートも控えめなため、音楽の見通しがとてもすっきりとしています。
 
 従来だと、技巧からくる表現の制約を感じることもあるのですが、小川の演奏では全くそういうことが感じられません。

 暗闇の中を稲妻が一閃する趣を感じさせる第3曲「4度のために」のアルペジオの鮮やかさは比類がないです。そして暗闇の中も冷たい感じではなく温もりさえ感じられます。

 ドビュッシーの練習曲を聞いてこのような感情になったのは初めてのような気がします。練習曲ということを意識させない演奏であることが大きな要因だと思います。そういう意味で、まさに画期的な演奏といっていいと思います。
 
 第5曲「オクターヴのために」の豪華なワルツの装いとそれに続くコケティッシュな動きの対比の妙が素晴らしいです。
 
 第2巻の第1曲「8本の指のために」の猛烈な速さで疾走する様は、グロテスクであるだけでなく、ある種の美しささえ感じさせます。
 
 ドビュッシーの傑作である第2巻第2曲「装飾音のために」も実に鮮やかです。曖昧さのないアルペジオと詩情豊かな低音、幾分諧謔性を帯びた中間部のコントラストが鮮やかです。後半の大海原を思わせる雄大な表現はドビュッシーが「イタリアの海の舟歌」と表現した気分そのままを表しています。
 
 続く「反復音のために」も難渋さを全く感じさせません。遠くラグタイムの響きが聞こえてくるようです。
 
 終曲のパーカッシブでダイナミックな表現は聞き手をスカっとさせます。テンポは少し遅めですが、全く気になりません。中間部の豊かな表現力も魅力的です。
 
■新たに発見された曲がなかなか興味深い

 超重量級の練習曲の後のプログラムは最近発見された曲が3曲ありなかなか楽しい聴きものになっていたと思います。。
 
 まず『組み合わされたアルペジオのための練習曲』。練習曲第2巻第5曲の初稿ですが、全く違ったものです。デュラン版のドビュッシー全集を手掛けるエロイ・ホワット(Roy Howat)氏が1977年に発見しました。
 
 穏やかなテンポの中にアルペジオが繰り広げられます。アルペジオは輝かしく弾かれるというよりは、曲の枠内に収まっていると思います。練習曲集に収められている曲も比較的地味ですが、色気があり、諧謔性を感じさせる部分もありと多彩な内容ですし、アルペジオの輝かしい効果も発揮されています。
 
 この曲は練習曲に含まれた曲に比べやや地味なため外されたのかと思ってしまいます。個人的にはぬくもりがあり、出来の悪い作品とは思いません。出版されなかったのが不思議なくらいです。
 
 ピアノ三重奏曲からの編曲である「間奏曲」はユーモアを感じさせ、軽い内容ながら洒落た旋律が心地よいです。中間部のゆったりとした旋律もなかなか魅力的です。
 
 これもロイ・ホワット氏が2001年に発見したものです。個人的にはこの曲は聞いたことがないので、原曲に比べてどうなのかはわかりません。
 
 6つの古代の墓碑銘は、曲自体が異国趣味に彩られ、穏やかな雰囲気に満たされたものではありますが、その中にも第4曲「カスタネットを持つ舞姫のために」の鮮やかなアルペジオと目の覚めるようなスケールが印象的です。
 
 次の「エジプト女のために」を聞くとラベルとの相似性を感じずにはいられません。
 
 最後は、2001年に発見されたドビュッシー最後の作品。ボードレールの「悪の華」に収められた「露台(Le Balcon)」からの一節「燃える炭火に照らされた夕べ」を表題に持つこの小品は、第一次世界大戦による物資不足の中で石炭を送ってくれた石炭商M. Tronquin(トロンカン)に頼まれて作曲したものです。
 
 短いながらも、深く沈潜してゆく音楽の中に微妙なニュアンスが込められ、なかなか味わい深いです。。
 
 録音は相変わらず素晴らしいもので、強音でも全く崩れることがありません。
 
 ということで、今回もその素晴らしい演奏に惹きこまれました。あと一枚出るのでしょうか。
 
 

Noriko Ogawa Debussy Piano Music Volume 4(BISCD-1655)

1.12の練習曲 (1915) Douze etudes
  I 5指のための“チェルニー氏に倣って” pour les cinq doigts d'apres monsieur Czerny
  II 3度のための pour les tierces
  III 4度のための pour les quartes
  IV 6度のための pour les sixtes
  V 8度のための pour les octaves
  VI 8指のための pour les huit doigts
  VII 半音階の音程のための pour les degres chromatiques
  VIII 装飾音のための pour les agnements
  IX 反復音のための pour les notes repetees
  X 対比される響きのための pour sonorites opposees
  XI 組み合わせられたアルペジオのための pour les arpeges composes
  XII 和音のための pour les accords
2.『組み合わされたアルペジオのための練習曲』の初稿 (1915) pour les arpeges composes
3.間奏曲-ピアノ三重奏曲からの編曲 (1880/1882) Intermede
4.6つの古代の墓碑銘-独奏版 (1914/15)
  I. 夏の風の神、パンに祈るために(Pour invoquer Pan, dieu du vent d'ete)
  II. 無名の墓のために(Pour un tombeau sans nom)
  III. 夜が幸いであるために(Pour que la nuit soit propice)
  IV. クロタルを持つ舞姫のために(Pour la danseuse aux crotales)
  V. エジプト女のために(Pour l'Egyptienne)
  VI. 朝の雨に感謝するために(Pour remercier la pluie au matin)
5.燃える炭火に照らされた夕べ (1917)Les soirs illumines par l'ardeur du charbon

Noriko Ogawa(p)
Recorded in July 2007 at Nybrokajen 11,Stockholm,Sweden






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Last updated  2008年09月21日 19時06分53秒
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