大きく変わっているわけではないが、多少変化していることは確かだ。
多少鋭さが増したようだが、今のところ、どう変わったかはうまく言い表せない。
すべてスタンダードで、肩の力の抜けた情感のこもった丁寧な歌唱だ。
古いスタンダードが多く取り上げられていて、知らない曲の良さを教えてもらったような気がする。
私の好きな「You must Believe in Spring」で下げるところを上げて歌っていたのがちょっと違和感があった。
良く知られたスタンダードが多いのだが、アレンジに工夫が凝らされていて、どの曲も新鮮に聞こえた。
特に、あまり聞いたことのない「When The World Was Young」がヴァースから歌っていて、曲の良さがじんわりと伝わってきた。
この曲はペギー・リーの歌唱が有名で、代表作の「ブラック・コーヒー」に収録されているらしい。
私も、このレコードは持っているのだが、久しく聴いていないのですっかり忘れていた。
「It's Allright With Me」はバックの音型が面白く、少しワイルドで語りかけるような歌唱で一風変わった仕上がりになっている。
速い曲は少ないが、「Lemon Twist」は歯切れがよく軽快で、彼女のディクションの良さが感じられる。
ハロルド・アーレンの「When We're Young」は軽快なワルツで、滑るように進んでいくところがとても気持ちがいい。
最後のビートルズの「And I Love Him」ではジェーン・モンハイトを思わせるようなエモーショナルな歌唱が印象的だ。
バックは控えめなバッキングで、このアルバムの雰囲気にふさわしい。
決して埋没してるわけではなく、ところどころできらりと光るプレイが聴かれる。
ぐいぐいとドライブする曲がないためか、ジャズでは珍しく室内楽的な静けさが感じられる。
ピアノがユニークなフレーズを弾いてはっとさせるが、これはゲスト出演しているロマンティック・ジャズ・トリオのジョン・ディ・マルティーノがピアノを弾いている曲だ。
このトリオは聴いたことがないのだが、ここでのプレイを聴く限り、なかなかユニークな感性の持ち主の様だ。
機会があったらトリオでの演奏を聴いてみたい。
Hilary Kole:A Self Portrait(Victor VICJ-61699)
1.I REMEMBER YOU
2.YOU MUST BELIEVE IN SPRING
3.I JUST FOUND OUT ABOUT LOVE
4.THE MAN I LOVE
5.I ONLY HAVE EYES FOR YOU
6.WHEN THE WORLD WAS YOUNG
7.IT'S ALL RIGHT WITH ME
8.NIGHT AND DAY
9.LEMON TWIST
10.SOME OTHER TIME
11.WHILE WE'RE YOUNG
12.COME A LITTLE CLOSER
13.50 WAYS TO LEAVE YOUR LOVER
14.AND I LOVE HIM
Hilary Kole(vo,arr)
Tedd Firth(p 3,5-9,11-12)
John Dimartino(p 1,2,4,10,13-14)
John Hart(g)
Poul Gill(b)
Aaron Kimmel(Ds)
Recorded at Nala Studios,NYC on September 27th-28th