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3年ほど前にリリースされていたが、価格が高かったため購入を見合わせていたNAXOSの日本作曲家選輯のシリーズの一枚である、東京藝大フィルハーモニアによる橋本邦彦作品集を聞く。
橋本邦彦の作品数はこのシリーズで2002年にリリースされていた。 |
その時は交響曲第1番と交響組曲「天女と漁夫」の組み合わせというヘビーなプログラムだった。
ディストリビュータの紹介記事によると、今回は橋本の母校である東京藝術大学の全面的な協力のもと、演奏から録音、ジャケット・デザインに至るまで、すべて藝大の音楽部と美術部の教授、准教授らが担当するプロジェクトによるCDとのこと。
第11回サライ大賞(2011)のCD・DVD部門賞を受賞している。
サライ大賞とは寡聞にして知らなかったが、小学館が発行している雑誌の「サライ」が主催している賞だ。
今回は交響曲第2番とバリトンをフィーチャーした三つの和讃、それに感傷的諧謔という管弦楽曲の組み合わせ。
交響曲第2番は2楽章構成だが33分という長い曲。
戦後の新憲法制定を祝う祝賀会のために、「憲法普及会」による委嘱で書かれた。
別名「祝典交響曲」といわれるが、作曲者自身「平和の喜びの歌と舞踏と行進を、ソナタ形式と返送形式で表現した」と祝賀会のプログラムで語っている。
ダンディーとかプーランクを思わせるようなフランス風な作品だ。
平易な作風で明るい曲調と相まってとても親しみやすい。
それにメロディックで洒落ていて、とても日本人作曲家が作った曲とは思えないほどだ。
「感傷的諧謔」は弦楽合奏曲「特徴ある3つの舞曲」の第2曲として昭和2年に作曲され、昭和3年に管弦楽曲に拡張された。
日本風の旋律が使われているが響きはモダンだ。
日本の平和な風景が見えるような、のんびりとした作風は悪くない。
正月に聴くと、しっくりくるような感じだ。
「三つの和讃」は仏教音楽ということもあり、あまり面白くなかった。
東京藝大フィルハーモニックの演奏は曲の紹介以上のレベルで、とりあえずこの演奏があれば十分と思うに足る演奏だった。
メジャー・オケでないが水準が高く安心して聞くことが出来る。
管も弦も音色も美しく、演奏に関して言えば現時点では特に不満はない。
なお、ブックレットが日本語のみで、CDの番号も末尾に「J」がついているので、日本向けのリリースなのかもしれない。
日本作曲家選輯 東京藝術大学編: 橋本國彦(NAXOS 8.572869J)
1. 交響曲第2番
3. 三つの和讃
第1曲《宝林宝樹微妙音》
第2曲《清風宝樹をふくときは》
第3曲《一一の花のなかよりは》
6. 感傷的諧謔 |
福島明也(バリトン)
藝大フィルハーモニア
湯浅卓雄(指揮)
録音:2011年2月20,21 東京芸術大学奏楽堂