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カテゴリ:雑学
「古事記」でイザナキが妻を連れ戻しに黄泉の国に行く神話は、実はギリシャ神話のオルフェウスの神話と類似点が多いです。
今回は、これら2つの神話の比較を書こうと思います。 1 黄泉下りの経過 ~古事記~ イザナキ・イザナミは、2人で天地創造をしていましたが、あるとき火の神を生んだイザナミがやけどで死んでしまいました。 イザナキは火の神を切り殺し、その後イザナミを取り戻しに黄泉の国へ行きました。 ~ギリシャ神話~ オルフェウスの妻・エウリディケは、ある日蛇にかまれて死んでしまいました。 オルフェウスは妻がいないことに絶望して、妻を取り戻しに冥界に行ったのです。 ~共通点~ どちらの神話も、「2人が夫婦であること」と「妻が有害な存在に殺されたことに夫が絶望した」という点が同じです。 2 黄泉の国に着いてから ~古事記~ イザナキ「迎えに来た。まだ天地創造は完成していないから、一緒に帰ろう」と言いました。 イザナミ「お気持ちはうれしいのですが、先ほど私は黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。 本当ならもう戻れないけど、黄泉の国の神様に相談してみましょう。 それまで、私の姿を見ないで待っていてください。」 ~ギリシャ神話~ オルフェウスは、自慢の竪琴で冥界の邪魔者をおとなしくさせ、ついにハデスの元へたどり着きました。 オルフェウス「(竪琴を弾きながら)私は妻を愛していたので、妻が死んで絶望しました。 どうかお願いです。妻を生き返らせてください。」 ハデス「そなたの勇気に免じて、今回は生き返らせてやろう。ただし条件がある」 オルフェウス「妻が生き返るならどんな条件でも飲みます」 ハデス「地上に戻るまで、後ろを振り返ってはいけない。もしも失敗したら、そなたの奥さんはもう地上には戻れない」 ~共通点~ 日本神話もギリシャ神話も、「生き返ることの条件」として「絶対に妻を見てはいけない」という条件をつけています。 ちなみに「一緒にご飯を食べたから黄泉の国の住人」というのは、ペルセポネと同じです。 これは、「一緒の食事をしたから仲間である」というおきてを表しています。(「同じ釜の飯を食べた」と言いますね。) 3 復活が失敗した経過 注 ここから先は一部怖い描写があるので、気の弱い方の閲覧はご注意ください。 ~古事記~ イザナキは、「妻が黄泉国の神との交渉を終えるまで待つ」ということを決断しました。 しかし、いくら待ってもイザナミは黄泉の神との交渉を終えません。 我慢できなくなったイザナキは、ついに黄泉の国の扉を開いてしまいました。 するとそこには、生前の美しい姿とは変わり果てて腐敗したイザナミがいました。 体の周りには雷神が取り付いていたのです。 いくら神といえど、腐敗した死体を見せられれば怖くなるのは当然、イザナキは逃げ出してしまいました。 イザナミは、醜い自分の姿を見られたことに激怒して、黄泉の国の軍隊を連れてイザナキを追いかけてきたのです。 イザナキは桃を投げつけ、その間に黄泉の国の外へ出て、地上と黄泉の国の境目を岩でふさいでしまいました。 イザナミは激怒して、「私は黄泉の神として、1日に1000人の人を殺してやる」と宣言しました。 イザナキは売り言葉に買い言葉で「私は1日1500人の人間を生んでやる」と宣言。 2人は「さよなら」といい、離婚してしまいました。 ~ギリシャ神話~ オルフェウスは、エウリディケと一緒に冥界から地上へとつながるトンネルを歩き、2人でこの世への帰還を成し遂げようとしました。 生き返ったら何をしたいか、妻とどのように暮らしたいかを考えていたと思います。 しかし、オルフェウスは冥界から地上へ出たとき、妻の足音が聞こえない(冥界だから当たり前ですが)のを不安に感じました。 そして、ハデスに禁じられていたのにもかかわらず、後ろを振り向いてしまったのです。 エウリディケは、まだ冥界の中にいました。 ハデスがあれほど命令したのに、後ろを振り向いてしまったのですから、当然約束違反になります。 エウリディケは「なぜ約束を信じなかったの」といいながら、冥界の奥へと消えていきました。 ~共通点~ イザナキもオルフェウスも、「この世に戻るまで、妻を見てはいけない」という約束を破ってしまったので、「妻を生き返らせよう」という計画は失敗に終わってしまいました。 なお、日本神話では夫婦喧嘩をしてますが、ギリシャ神話では喧嘩をしないで妻と別れています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.01.16 21:07:45
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