地球温暖化に揺れるここ数年ですが、この傾向は今後ますます厳しいものになってくると想像できます。今から5年も経てば世界の状況は大きく変わり、どこの国が二酸化炭素の排出量をどれだけ減らすかで戦争(経済戦争)が勃発している可能性も大きいのではないでしょうか。10年も経てば、自動車は高級品で金持ちの乗り物に、航空機による海外旅行も金持ちの証となる、そんな世の中になっているかもしれません。
地球温暖化の防止には二酸化炭素排出量の低減が絶対要件となりますが、原子力発電、風力発電や太陽光発電などは別として、今日のエネルギー利用の大きな部分を占める石油・石炭・天然ガスの、いわゆる化石燃料の使用では必ず燃焼により生じた二酸化炭素が大気中に排出されてくることになります。
この二酸化炭素の発生を防ぐ方法として、メタンから水素を取り出してエネルギー源として利用し、炭素は子孫のために固形の形で蓄える。このようなことができれば、水素社会の実現に一歩近づくことができるのではないでしょうか。
CH4(メタン、天然ガス) → C(炭素) + 2H2(水素)
特許支援流通チャート 水素製造技術 (平成17年度) p13
http://www.ryutu.inpit.go.jp/chart/H17/ippan20/frame.htm
によると、この反応は天然ガスにプラズマを照射して1300~1500℃で熱分解することにより行います。年間5000万Nm3-H2と20000t-炭素を得るプラントが既に稼働しています。炭素は自動車タイヤ充填材や金属精錬用還元剤として用いられています。
さて、この反応を行うために加えるエネルギーは、1.25kWh/m3-H2です。これは860kcal/m3-H2に相当します。一方、水素1Nm3が燃焼したときに発生する熱量は3040kcalとなります。今仮に、天然ガスの分解で得られた水素を用いて、天然ガス分解用の電力を作り出したと考えた場合、現在の発電効率は約40%ですので、3040kcalのうちの約1200kcalが電気に変換されることになります。発電所から天然ガス分解工場までの送電ロスを考慮すると、この値は更に小さなものとなります。
天然ガスの分解には先ほど示した860kcalが必要ですので、先ほど得られた水素の燃焼エネルギーのほとんどが、次の天然ガスの分解に当てられることになり、その結果、余分のエネルギーを作り出せないサイクルに落ち込みます。水素社会は遠い遠い未来となる計算です。
触媒を用いて天然ガスを熱的に分解する検討もなされていますが、触媒が生じてきた炭素によりコーティングされてしまって触媒活性を失うなど、お世辞にもうまくいっているとはいえないようです。
キーワード:水素社会 地球温暖化 天然ガス分解 プラズマ分解 触媒分解