1438459 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

     ヒジャイ        日々の詩

     ヒジャイ        日々の詩

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

2016/06/25
XML
 





新発売・沖縄内なる民主主義8 A4版  148ページ
定価1620円(税込み)

本土取次店 (株)地方・小出版流通センター
http://neil.chips.jp/chihosho/ TEL.03-3260-0355 
chihosho@mxj.mesh.ne.jp
県内取次店 株式会社 沖縄教販
電話番号098-868-4170
shopping@o-kyohan.co.jp



ホテルカーホニア

  タケオとユミオ

携帯電話のベルが鳴った。画面にはタケオと表示していた。
「ユミオか。タケオだ」
ユミオもタケオも本名ではない。ニックネームだ。ユミオはタケオの本名を知らない。タケオはユミオの本名を知らない。無論、住所も家族のことも知らない。知らないことがお互いのためでもある。二人はたまに会うことがあるが、ほとんどは携帯電話で話す。

「こいつは、まずい。流れがまずい」
タケオはため息をついた。
「そうだな」
ユミオは頷いた。
「エーマが取られて、ユナグニもだからな。まずいね」
「まずいよ。はっきり言って今の教員がだらしなくなった」
「そう、だらしなくなった。中学生も投票させたのにこのざまだ。中学生を誘致反対に洗脳できなかったからな。もう教員の神通力は消滅したのじゃないか」
タケオが舌打ちした。
「そうだろうな。このざまだからな。もう、教員の神通力なんかないよ」

 二人が話題にしているのは日本最西端のユナグニ島への陸上自衛隊「沿岸監視隊」の配備について賛否を問う住民投票の結果についてだった。20歳以上の投票なら町長が誘致に賛成であり、過去2回の町長選では陸自を誘致したフカマ町長が連勝していたから賛成派が有利であった。それを逆転させるために反対派は20歳以下のなんと中学生まで投票に参加させることを主張し、それを認めさせた。
「中学生を参加させることになったから勝てると思ったのにな」
「俺もだ。確実に勝てると思った。ところが大差の敗北だった」
「平和教育を徹底してやれば中学生が誘致に賛成するとは考えられない。なんのための平和教育だよ。平和教育も地に落ちたもんだ」
「まあ、今の教員は昔の教員と違って平和ボケしているからな。平和教育が下手なのじゃないか」
「そうだろうな。だから大負けしたんだ」
「俺はギヌワンのことが気になってしようがない。ユナグニがあんなざまだ。本当にギヌワンは勝てるだろうか。ユナグニの流れが止まらないかも知れないよ。怖いな。お前はギヌワン市長選は勝つと思うか」
「ウナガ知事の保守票と革新票が合わされるから楽勝じゃないか」
ユミオは自分の予想を話した。
「まあ、そうかもしれないと俺も思うが。しかし、ユナグニのことがあるからな。楽勝予想が敗北ということもあり得る。実は上はギヌワンを心配しているようだ」
「へえ、そうなんだ。上は楽勝とは思っていないんだ」
「思っていないようだ」
「まあ、教師の神通力は落ちて中学のガキさえ洗脳できなくなっているからな。だから、ユナグニでは負けたということだ。でもユナグニとギヌワンは状況が違うと思うよ。ユナグニは離島だ。ギヌワンは本島だからな。離党とは事情が違う。なにしろ、保守のウナガ知事と革新が組むんだ。ウナガ知事の神通力は強力だからな。ユナグニとは違う。ユナグニは離党だからウナガ知事の神通力が届かなかったのだ。
ギヌワンではウナガ知事の人気と革新の力が合わせられるからギヌワン市長選ではジミン党が勝てるはずがない。こっちの楽勝だよ。そう思わないか」
「俺もそう思う。しかし、上はそう考えていないようだ。接戦になると考えている。確実に勝てるという保証はないと考えている。とにかくユナグニの結果を重視しているようだ」
「そうか。上がそのように予想しているのなら、そうなんだろうな。上は俺なんかより何十倍も頭がいい奴らだからな。まあ、上の予想が正解だろうよ」
「だから、仕事が回ってきた」
「ああ、やっぱりな。話している内にそんな気がしていた」
やはり、仕事の依頼だった。タケオからの電話はゴルフをやるか仕事の依頼くらいだ。すでに終わったユナグニの話だから、ゴルフをしようという話になると思っていたが、上がギヌワン市長選を心配していると聞いた時からは、仕事の話になるだろうと予想した。予想した通り仕事の話だった。

タケオが提案している仕掛けは一度しか使えない。ギヌワン市長選で仕掛けたら、県議選では使えないということだ。ギヌワン市長選挙と県議選ではスケールが違う。できるならスケールがでかい県議選で仕掛けたいユミオであった。県議選で仕掛けて、勝利すればトミオの拍がつくというものだ。ギヌワン市長選で仕掛けるのがいやだったトミオだったが、上からの指令に背くことはできない。仕方がないがギヌワン市長選で仕掛けるしかない。
上が心配している通りに、もしギヌワン市長選で負けたら敵に勢いがつく、その勢いに乗ってしまったら県議会選で仕掛けても逆転できない可能性がある。それはまずい。それよりはギヌワン市長選で大勝して、その勢いで県議選に突入したほうがいいかも知れない。

 トミオが提案している仕掛けとは、那覇市のビジネスホテルで米兵に強かんさせるというものである。この案が浮かんだのは2年前だった。路上と違ってホテルの場合はフロント係が居て防犯カメラがある。ホテルで米兵に強かんをさせるというのはかなり難しい。しかし、トミオは実現できそうな計画を立てた。トミオが考えた仕掛けのポイントはフロント係をホテルに潜り込ませることだった。フロント係が仲間であるなら仕掛けることができる。
「お前の考え出した仕掛けはかなり効果があると思う。上も気に入っている」
「そうか。それはうれしい」
「嬉しそうではないな」
ユミオの声が沈んでいるのにタケオは気付いたようだ。
「本当は県議選で仕掛けたかっただろう」
「い。いや」
「まあ、お前の気持ちば分かるけどな。上が決めたから従わなければならない」
「分かってるよ。ギヌワン市長選で大勝して、その勢いで県議選に突入したほうがいいかも知れない。上の方針が正しいと思う」
「明後日の朝、ゴルフをしようか。ゴルフをしながら仕掛けの段取りを話し合おう」
「分かった」

 トミオはタケオとの電話を終えるとカツヤに電話した。カツヤはトミオの右腕となる存在であり、実戦の指揮を執る人間だ。
「カツヤか。上から指令があった。ホテルの仕掛けの準備に入ろう。明日、マタハーリに来い。三時にだ」
「分かりました」
 
ユミオとカツヤ

ユミオはカツヤとウラシー市のマタハーリというスナックで会った。マタハーリはユミオの女がママをやっているスナックである。昼は営業をしていないから邪魔が入らないで話ができる。
「女は由佳里と麻衣が居るな。カツヤはどちらが仕事をこなせると思うか」
ユミオの質問にカツヤは苦笑した。
「似たり寄ったりだよ。二人ともみっちりと手順を教えてあげないと使えないと思う。まあ、どっちでもいいかな」
「そうか。それではどちらが口が堅いかだな。どっちが秘密を守れそうか」
カツヤは腕を組んで首を傾げた。
「ううん。どっちだろうな。どっちもミーハーだが、秘密は守るんじゃないかな。ばらしたら痛い目に会うことは知っているから」
痛い目に会わすのがカツヤである。トミオは苦笑した。
「そうか。どっちも秘密を守るのは大丈夫だということか。それじゃ、由佳里にしよう。連絡は取れるか。仕事の手順を教えなければならないが」
「連絡はいつでも取れる。今電話しようか」
「ああ、明日は予定があるから明後日会おうと伝えろ」
カツヤは由佳里に電話した。
「由佳里か。明後日さ、喫茶店ミチルに来い。トミオさん、何時がいいですか」
「そうだな。一時頃でいいかな」
「由佳里。一時だ。一時までに来い。遅れるなよ」
トミオとカツヤはマタハーリを出てビジネスホテルカーホニアに向かった。そして、仕掛ける場所の廊下と部屋を確認した。

 翌日タケオとトミオはゴルフをした。
「仕掛けの女は大丈夫か。ミスは許されないよ」
「明日会う。米兵の動きに左右されるから、難しい面がある。しかし、成功させなければな。女にはみっちり教育する」
「お前が要求した必要経費は認められた」
「そうか」
「成功を祈る」

 トミオとカツヤが喫茶店ミチルに来ると、由佳里はすでに来ていた。
「おう、由佳里」
由佳里は立ち上がりお辞儀をした。
「ユミオさん、この子が由佳里です。ユミオさんだ。挨拶しろ」
「由佳里です。よろしくお願いします」
ユミオは軽く会釈した。ユミオが由佳里と会うのは今日が最初であり最後である。由佳里と会うのは避けたいが、自分の目で由佳里がちゃんと役をこなすことができるかできないかを確認しなければならない。女の能力の判断をカツヤに任すことはできない。カツヤには女の能力を見抜く能力が欠けているからだ。
 失敗が許されない仕事である。もし、婦女暴行がトミオたちに仕組まれたものと警察にばれれば米軍への反発が一気に一八〇度転換してしまうだろう。それでは敵に塩を送ることになる。由佳里が仕事をこなすことができるかできないかはトミオが直接判断する必要がある。
 三人は喫茶店を出て、ウラシー市にあるビジネスホテルに行った。トミオは仕事の心構えと手順を由佳里に教えた。そして、カツヤと何回も反復練習をすることを指示した。

 仕掛ける場所はナーファ市にあるビジネスホテルカーホニアである。カーホニアはアメリカ兵たちが飲み遊ぶ場所に近いところにあり、週末になるとキャンプ・シュワブやキャンプ・ハンセンからやって来た米兵が泊まるホテルだった。そのホテルで米兵に婦女暴行事件を起こさせるのである。
 フロントにはカツヤの仲間をすでに入り込ませてある。仕掛けをする女が居ればすぐに実行することができる状態であるが、それも準備できた。

 由佳里とトシロー

ギヌワン市長選は一月二十四日である。ホテルカーホニアでの仕掛けは正月明けの四日から始まった。この仕掛けは米兵の行動や気持ちに左右される。一回で成功すればいいがそうなるとは限らない。成功するまで何回も仕掛けなければならないのがこの仕掛けの欠点である。
一回で成功するのならギヌワン市長選の一週間前に仕掛けていた。一週間前ならマスコミが大いに騒ぎまくって選挙に大きな効果があるだろう。しかし、一回で成功するとは限らないから選挙の二十日前から仕掛けることにした。フロントには真司という仲間が入っているから、真司がフロントに入っている時は何回も仕掛けることができる。

仕掛けが成功するかしないかは米兵次第である。米兵がホテルに宿泊しなければ仕掛けることはできない。米兵が宿泊したとしても仕掛けにはまってしまう米兵でなければ成功しない。だから、一月四日から仕掛けてどんなに遅くても選挙前日までに成功させなければならない。仕掛けが成功してもマスコミに大々的に取り上げてくれなければなんの効果もないからだ。

四日の夕方に由佳里とトシローがホテルカーホニアの五階の部屋に入った。トシローはカツヤの子分である。しかし、四日と五日は米兵は宿泊しなかった。
六日にチャンスがやって来た。米兵三人が宿泊した。由佳里は泥酔したふりをして一時から三時まで部屋のドアの前で横になって米兵たちが来るのを待った。しかし、米兵三人がホテルに帰って来たのは朝の五時を過ぎていた。これでは仕掛けるのは無理だった。
 八日には五人の米兵が宿泊した。米兵たちは七時に出かけ午前二時に帰ってきた。フロントの真司はトシローに電話した。
「今、エレベーターに五人乗った。うまくやってくれ」
「了解」
トシローはドアを叩いた。ドアの音がしたので由佳里は部屋のトシローの声に耳を集中した。
「今、獲物がエレベーターに乗った。もう少しでここにやって来る。うまくやれよ」
「一人なの」
「いや、五人だ」
五人と聞いて由佳里に恐怖が走った。
「え、五人も。どういうこと。五人も相手にしろということなの」
何人の米兵を相手にするかということはカツヤとトシローは話していなかった。由佳里とも話していなかった。トシローは返事に困ったが、仕掛けを成功させるのが最優先である。
「まあ、そういうことだ」
「ちょっと、待って。五人も相手にやれないわ」
由佳里は断った。
「今さら、何を言うんだ。往生際が悪いな」
「いやよ。五人も相手にしたら私のあそこが壊れるわ。殺されるかも知れない」
「大丈夫だ。いざとなったら俺と真司が助ける」
トシローは由佳里が米兵の相手をするように説得したが、五人の米兵を相手にするのに恐怖している由佳里はトシローの説得を聞き入れなかった。
「嫌よ。開けて」
「ここまできて嫌はないだろう。やれ。やるんだ」
「開けて。開けて」
由佳里はドアを叩いた。米兵はもう少しでやってくる。ドアを叩いて叫んでいる由佳里を米兵に見せるわけにはいかない。トシローはドアを開けた。由佳里が部屋に入るとドアを閉めた。
「なんてことだ。ちゃんと決めた仕事をしろよ。金がほしいんだろう」
「冗談じゃないわ。お金は欲しいわよ。いくらお金のためとはいえ五人のアメリカ兵を相手にすることはできないわ」
由佳里の目から涙が溢れ、体は恐怖で震えていた。
「私は最低の女かも知れない。でもね、でもね、畜生ではないわ。畜生ではないわよ」
由佳里は座り込み、顔を伏せて泣き続けた。
トシローは仕掛けに失敗したことに「チェ」と舌打ちをした。

トシローはカツヤに電話した。
「カツヤさん。失敗した。由佳里が土壇場になった嫌がった」
「どういうことだ」
「米兵が五人だった。五人を相手にするのは嫌だといったんだ」
「え、五人。米兵は五人もいたのか」
相手が五人となると由佳里が嫌がるのは無理もない。
「まいったな。作戦を立て直す必要があるな。明日の昼会おう。由佳里も連れて来い」
「分かりました」
由佳里は朝まで泣き続けていた。トシローは由佳里をアパートに連れて行き、昼に迎えに行くと言って別れた。

 由佳里が消えた。携帯電話に何度電話しても由佳里は出なかった。トシローはグシチャーの由佳里のアパートに行ったが由佳里は居なかった。
「くそ、とんずらしやがったな。ただじゃおかねえぞ」
トシローはカツヤに電話した。
「カツヤさん。由佳里が居なくなった。電話に出ないしアパートにもいない」
「そうか」
「探し出してやきをいれなくちゃあ」
「そんなことは後でいい。もう一人の女、麻衣だったな。その女に連絡しろ。代わりを早く見つけないと」
「分かりました」

 カツヤはユミオに電話をして由佳里が五人の米兵を相手にすることを嫌がったこと、由佳里が居なくなったこと、由佳里の代わりに麻衣にやらせることを伝えた。
「五人を相手にするなら嫌がるだろうな。麻衣が駄目だったら、麻衣の代わりの女はいるか」
「居ないです」
「どうしても麻衣にはやってもらわなくてはならないというわけか」
暫く黙っていたが、
「報酬は倍にしろ。それから、もし、複数の米兵だったなら三十分以内には部屋に入って助けると言え。それなら招致するだろう」
「はい」
「しかし、三十分以内に入るんじゃないぞ。そうだなあ、二時間くらいは入らないほうがいいだろう。とにかく麻衣には麻衣が安心するような話をするんだ」
相変わらずのユミオの仕事を成功させる知恵にカツヤは関心した。

 麻衣

 カツヤは麻衣には五人の米兵を相手にしなければならないことが起こるかも知れないことを話した、麻衣も由佳里と同じように嫌がり断った。しかし、その時は三十分以内にはフロントの真司を呼んで鍵を開けて部屋に入ると言い、麻衣を安心させるように話した。五人の米兵を相手にしなければならない話をした時は嫌がった由佳里だったが、カツヤの話にほっとして、相手が五人でも仕事をやると言った。とにもかくにも麻衣以外に使える女は居ない。どうしても麻衣にやってもらわなければならない。報酬も上げると言ったら、由佳里は予想していたより高額を要求してきた。
 結局行き着くところはお金である。
カツヤは暴行した米兵が二人だったら一・五倍、三人だったら二倍の報酬にすると言ったが麻衣はOKしなかった。
麻衣は二人なら二・五倍、三人なら四倍を要求したが、二倍、三倍で決着が着いた。しかし、金のことになるとカツヤが決めることはできない。ユミオの許可が必要である。もし、かなり増額する金額が大きければユミオが決めることもできない。タケオが上と交渉しなければならない。
麻衣の要求する金額はユミオの管理範囲内だった。ユミオは了承した。

麻衣がホテルカーホニアで仕掛けに入ったのは一月十五日の金曜日だった。タケオは真司にできるだけ五人の米兵を由佳里と同じ階に宿泊させないで、三人以下の米兵を宿泊させるように指示した。
 三人の米兵が宿泊を申し込んだので、フロントの真司は麻衣の部屋の向かいの部屋を手配した。三人は部屋に荷物を置くとすぐに出かけた。

麻衣とコンビを組むのはトシローである。米兵がホテルに帰って来るのは一時を過ぎてからだろう。麻衣とトシローはぐでんぐでんに酔った真似をして酒とつまみを買いに部屋を出る。そして、麻衣一人だけつまみを持って帰る。しかし、鍵を持っていない。トシローが鍵を持っているというわけだ。トシローの帰りを待ってドアの前で座っているが麻衣は寝てしまう。そこへ三人の米兵が帰って来る。三人は麻衣を部屋に担いでいき、麻衣を強かんする。麻衣を担いだ米兵たちが部屋に入ると防犯カメラで廊下を見張っている真司がトシローに連絡する。トシローはホテルに帰り、部屋に入るが由佳里が居ないことに気付く。廊下に出て米兵の部屋のドアを叩く。その時に麻衣は悲鳴を上げる。トシローはフロントと警察に電話するという計画である。
 
 ぐでんぐでんに酔っている振りをしている麻衣がホテルに帰って来た。エレベーターに乗り、六階で下りた。よたよたと歩いて部屋の前に立ち、鍵を探す。しかし、持っていないことに気づく、ドアの前で麻衣は座り込んだ。
 三十分ほど経過すると三人の米兵はホテルに帰ってきた。エレベーターに乗ったのでフロントの真司は麻衣に電話しで米兵たちが来たことを知らせた。
「麻衣さん。米兵三人が帰ってきました」
「わかったわ」
「頑張ってください」
麻衣は真司の励ましに苦笑した。真司は麻衣との電話をきるとすぐにトシローに電話した。
「来たよ来たよ」
「何人だ」
「三人」
「そうか。防犯カメラをちゃん見とけよ」
「オーケーオーケー」
真司はわくわくしている。

 米兵たちが来た。いよいよだ。恐怖が走る。逃げ出したい。しかし、逃げ出すわけにはいかない。麻衣はなるようになるさと流れに身を任せる気持ちになっていた。

トニー、ジョン、ポール三人の米兵はエレベーターから下りて部屋に向かった。
「あれ、人が倒れているようだよ」
「ほんとだ。死んでいるのかな」
「病気で倒れているかも」
「どうしたのだろう」
トニーが近づいて、しゃがみ込み麻衣の顔を覗いた。ジョンもしゃがんだ。
「死んではいないだろう。寝ているだけだ」
「病気かもしれない」
トニーが麻衣の肩を揺すった。すると麻衣は、
「ううん」
と言いながら寝返りした。
上着のボタンがはずれ胸のブラジャーが見えた。ミニスカートから太い腿が露わになった。麻衣の傍に並んで座っているトニーとジョンは色気丸出しの麻衣の寝姿に唾を飲み込んだ。二人は顔を見合わせた。
「ヘーイ、大丈夫か」
と言いながらがトニーは肩を揺さぶった。麻衣はぐっすりと寝ている振りをしながら、色気を振りまいていたが、麻衣の本当の気持ちは三人の米兵を相手にしなければならないことに憂鬱だった。
麻衣の寝姿を見ているトニーとジョンの下腹部が大きくなっていった。胸を触りたくなった。太腿を触りたくなった。
「フロントか。六階の廊下に女性が倒れている。病気かも知れない。急いで来てくれ」
二人の後ろに立っていたポールはフロントに電話した。ポールの電話でトニーとジョンは我に返った。
 仕掛けはポールがフロントに電話した性で失敗した。トニーとジョンの二人だったら成功していたかもしれない。
 ポールがフロントに電話して麻衣のことを報せるというのはカツヤが予想していなかったことである。酔っている若い米兵はみんなスケベーである。廊下で寝ている女を見つけたら部屋に連れ込んで強かんするとカツヤは決めつけていた。まさかフロントに電話する米兵がいるとは予想していなかった。

 翌日の土曜日は二人組の米兵を麻衣の部屋の向かいに宿泊させたが、二人が帰って来たのは朝の五時だった。仕掛けの時間をとっくに過ぎていた。

 一月二十四日がギヌワン市長選である。選挙前の最後の週に入ったが、フロントの真司からカツヤにクレームが入った。
「カツヤさん。毎日仕掛けるのはまずいですよ。内のホテルには廊下で寝ている変な女が居るという噂が広まるかも知れない。週一回か二回が限度です」
真司の言うことはもっともなことであった。麻衣の寝ている姿を携帯カメラに撮っていた米兵も居た。麻衣の寝姿を画像を知り合いの兵士に流している可能性もある。同じ女がホテルカーホニアの廊下に寝ているという噂が米兵たちに広まればまずい。真司の言う通りだ。仕掛けは減らしたほうがいい。選挙は一週間後に迫っている。どうしても一週間以内に成功させなければならない。
 カツヤは悩んだ結果、週二回、水曜日と金曜日に仕掛けることにした。

 水曜日は四人の米兵が宿泊したが、麻衣か寝ているのを見るとフロントに連絡してきて計画は失敗した。金曜日は二人の米兵が宿泊したが、帰って来たのは夜が明けてからだった。 ホテルカーホニアの仕掛けが成功しないでギヌワン市長選挙は始まった。ホテルカーホニアの仕掛けは失敗に終わったのである。
 ギヌワン市長選の結果は二人を顔面蒼白にさせた。
楽勝すると思っていた。楽勝しなくても勝つことは確実であり、負けるのは考えられないことであった。ところが結果は大敗だった。最悪でもぎりぎりの勝利を疑ってなかったが、負けたどころか大敗したのだ。
「まいったまいった。上から散々絞られたよ。ホテルで米兵が沖縄女性を強かんすれば選挙に勝っていたはずだとね」
「すまない。まさか失敗するとはな」
「失敗したのは予想外だったな。仕掛け方が下手だったのではないか」
「ううん。甘く考えていたつもりはなかったのだが、失敗したのは否定しようのない事実だ。甘く考えていたと言われれば返す言葉はない。しかし、弁解になるかも知れないが、仕掛ける前には予想できなかった問題が多くあったことも事実だ」
ユミオは米兵たちはグループ行動をしていたこと。一人にさせることができなかったこと。それにグループの米兵の中にはスケベーではない米兵も居て、全員を婦女暴行する気持ちにさせることは困難であったことを話した。
「米兵はみんなスケベーだと思っていたがそうではないんだ。スケベーではない奴も居るんだ。ただ、失敗は失敗だからな。上に弁解することはできない。平謝りするだけだ」
「これじゃあ。もう、仕事は来ねえだろうなあ」
ユミオばがっかりした。
「そうかもしれないな」
タケオもユミオと同じ考えだった。

 指令再び

 だが二人の予想は当たらなかった。一週間後にホテルの仕掛けをやるように指令が来たのだ。ただ、今度は絶対に成功するようにという厳しい指令が付いた。

 絶対に成功するにはどうすればいいか。ユミオとタケオは話し合った。しかし、いいアイデアは浮かんでこなかった。
「ひとつ、重要なことは廊下に米兵は一人にすることだ。複数人だと成功することは難しい」
「中には助平じゃないのが居るからな。一人ならなんとかできるが複数だと難しい」
「ホテルには宿泊費を安くするために五、六人泊まるのだろう。一人にするのは難しい。やっかいな問題だ」
「グループで行動するのは軍の教育かもしれないな。一人だと事件を起こしやすいがグループだと事件を起こしにくい」
「軍の教育か。あり得るな。一人にするというのはかなり難しい問題だ」
二人ではいいアイデアが出てこないのでカツヤも参加させた。

「一人にする方法はある。しかし。金がかかる。金さえあれば簡単にできるよ」
カツヤは言った。
「本当か」
「ああ、本当だ」
 カツヤはタケオとユミオに米兵を一人にする方法を説明した。
カツヤの説明では、もし宿泊した米兵が五人だった時、米兵が行くスナックに四人の米兵をホテルに連れ込むホステスを準備する。店が終わったときに一人を残して四人の米兵はホテルに行くようにする。一人の米兵だけをホテルに帰らせるという方法だった。
「米兵たちが入ったスナックのホステスにそんなことを頼めるのか」
「頼めるホステスも居れば頼めないホステスもいる。不足すれば別の店のホステスを連れてくればいい」
「そんなことができるのか」
「俺のダチにホステスを斡旋するのを商売にしているのが居る。彼に頼めばできると思う。ホステスが米兵とホテルに行くようにすれば米兵一人をホテルに帰らせるというのは確実にできる。米兵とホテルに行くホステスを四、五人集めるのは難しいことではない。ママさんやホステスにそれなりの報酬を上げなければならないから資金が必要だ」
「なるほど。どのくらいの資金が必要か見積りしてくれ。上と相談する」

 カツヤとトシローが出した見積りを上は承諾した。
 しかし、予想していなかった問題が生じた。麻衣が断ったのである。何度も失敗した麻衣は疲れ果てていた。成功した時には報酬は高かったが、失敗した日は日当だけであり精神的な負担に応じた報酬ではなかった。このまま続ければうつ病になるかもしれない。疲れ果てた麻衣は失敗することしか想定できなくなっていた。トシローがどんなに説得しても麻衣は首を縦に振らなかった。トシローが脅した翌日に麻衣は行方不明になった。
「くそ。由佳里にしろ麻衣にしろ根性の足りねえ女たちだ。次に会ったら締め上げてやらな」
トシローは怒ったが怒ったところで麻衣が見つかるわけでもない。トシローは困った。麻衣の次の女がいない。トシローは麻衣が居なくなったこと、麻衣の代わりの女がいないことをカツヤに伝えた。カツヤは他の世話人に当たってみたが新しい女を見つけることはできなかった。
 カツヤはそのことをユミオに伝えた。ユミオはタケオに伝えた。
 資金は準備できたのに肝心の仕掛け役の女が居ない。タケオとユミオは困った。
「仕方がない。本土の奴に頼むしかない」
ユミオはため息をついた。
「仕方がないか」
本土に頼むとなると資金はもっと必要になる一方タケオとユミオの報酬は減ってしまう。できるなら本土に頼みたくないが、肝心の女を見つけることができないのだから仕方のないことであった。

 
 大阪からの女は十日に沖縄に到着する。仕掛けの日は一日目は計画の手順ついて話し合い、三月十三日と十五日に仕掛けることが決まった。もし、失敗すれば次の女を探すことになる。

 第三の女キヌ江

 十日に大阪から田沼キヌ江と後藤志郎が来た。迎えに行った。初対面であったから携帯電話で連絡しながら那覇空港のロビーで会った。タケオとユミオが会ったのは四十代の男女だった。
「やあ、後藤です。こっちはキヌ江です」
「タケオです」
「ユミオです」
「ところで女性の方は一緒ではないのですか」
タケオの質問にに二人は顔を見負わせて笑った。
「キヌ江がその女性です」
タケオとユミオは驚いた。二十代の女が来ると思っていたが、なんと四十歳を超えたおばさんが来たのだ。
「まさか、あんたが」
呆然としているタケオに、
「アメリカ人は日本の女の年齢なんて分からない。キヌ江だって若い服装をすれば二十代のピチピチギャルと思うだろう。心配することはない。成功するよ」
後藤はそう言った。実際は二十代の女を探したが見つけることができなかった。三十代も見つけることができなくて、やっと見つけたのが四十代のキヌ江だった。
 苦笑しているユミオに後藤は近寄り、
「でも、気になるが。本当にそんなことをやって大丈夫なのか」
ユミオは後藤がなんのことを大丈夫かと危惧しているのかわからなかった。
「ホテルでだよ、廊下で寝そべってアメリカさんに強かんさせるなんて、考えられないよ。そんなこと本土のホテルではできっこないぜ。沖縄だからこんなことができるのか。沖縄のホテルの管理はずさんだな。まあ、俺らには関係がないがな」
四十過ぎのおばさんを連れてきて言いたい放題言う後藤にタケオはむかついた。文句を言うならぴちぴちした若い女を連れて来いと心の中で怒鳴った。

 十三日が来た。予定通り田沼キヌ江と後藤志郎は部屋で酒を飲んだ。
八時にフロントの真司から五人の米兵が向かいの部屋に宿泊する手続きをしたことが後藤に伝えられた。
「え、五人もか。まさか五人を相手にするというのではないよな」
「さあ、僕はホテルのフロント係で、他のことは分かりません」
「そうか。余計なことを聞いたな」
「は、いいえ。米兵たちは間もなく向かいの部屋に行きます。外に出ないでください。米兵たちがホテルから出たら連絡します」
「分かった。よろしく」
真司は後藤に電話した後、カツヤに電話した。
「カツヤさん。米兵がやってきました。
「何人だ」
「五人です」
「分かった。サービス券は準備しているな」
「はい」
「必ず渡せよ」
「はい」
カツヤは電話を切ると隣のトシローに、
「米兵が来た。戦闘開始だ。俺は待機させている女たちを例のスナックに連れていく」
「米兵は全員スナックに行くかな」
「サービス券を渡すからなきっと行くと思う。行かなかったら、次の手を打つ」
トシローが車から下りた時に、後藤から電話が掛かってきた。
「はい、もしもし」
「後藤だけどよ。フロントの奴から聞いたがアメリカ兵五人が向かいの部屋に泊まったらしい。というと、キヌ江は五人ものアメリカ兵を相手にするということか。そいつはまずいぜ」
「いえ、キヌ江さんの相手は一人です」
「本当だろうな。五人ではないよな」
「はい。大丈夫です」
「それならいい」
後藤は電話を切った。

 米兵五人がエレヘーターから下りて来た。真司は五人を呼び止めた。
「一人千円サービスする店があるが行かないか」
真司はサービス券を五人に渡した。五人は真司の話に喜んだ。
「店の名前はなんというんだ」
真司は店の名前がメヌエットだと教えたが、誰もメヌエットを知らなかった。
「場所を教えてくれ」
場所を教えたが、那覇には二、三度しかきたことがない五人には場所が理解できなかった。五人がメヌエットに行かなければ計画は失敗する。真司はトシローに電話した。
「トシローさん。この兵隊たちはメヌエットの場所を教えても分からないです。どうしますか」
「ミユをホテルに送る。五人の兵隊たちを待たせておけ」
「分かりました」
真司はホステスが迎えに来るということを五人に伝えた。

 トシローはミユにホテルカーホニアに行くように指示した。そして、カンナに電話してメヌエットに行くように指示した。準備するホステスは四人だ。ミユとカンナは他の店のホステスであるが、今日はメヌエットで働かせ、残りの二人はメヌエットのホステスを使う。メヌエットのママとホステスとは話をつけてある。
トシローはメヌエットのママに電話した。
「もう少しで、ミユが五人の米兵を連れて来る。カンナも来るはずだ。ミユがきたらナビーとウシーの手配を頼む」
「分かったわ。トシ、なにを企んでいるの。警察沙汰になるのは御免よ」
「警察沙汰にはならないよ。心配するな。俺ももう少ししたら店に行くから。じゃ店でな」

 ミユと五人の米兵がメヌエットに入ってきた。五人の米兵は奥のテーブルに案内された。ミユとカンナにメヌエットのホステスであるナビーとウシーの四人とママが米兵たちの相手をした。

 トシローが店に入ってきたのでママはカウンターに戻った。
「なにを企てているの。なにを企ててもいいけど、店に傷をつけるならお断りよ」
「それは大丈夫だ。ここでは酒を飲ますだけでなにもない。ミユを呼んでくれないか」
ママはミユを呼んだ。
「五人の中で一番スケベそうな奴は誰だ」
「ううん、ジョンとロバートかな」
「じゃあ、ミユはジョンの傍に座れ。ジョンに刺激を与えてやれ。しかし、ミユとホテルに行くのは別の奴にするんだ。ジョンとはホテルに行かないように他の奴にも伝えろ。ジョン以外の奴とホテルに行くようにしろとな」
「分かったわ」
ミユは米兵たちのところに戻った。
「トシロー。なにを企んでいるの。気味が悪いわ」
「あははは。まあ、一種の賭け事だな。気にするなよママ」

 米兵とホテルに行くと約束をしたホステスが次々とトシローに報告した。最後にウシーが報告した。
「よし、これで完璧だ」
トシローはホテルカーホニアに居る後藤に電話した。
「後藤さん。こっちは手配が終わった。一時過ぎに米兵を一人ホテルに行かせる。準備をしてくれ」
「了解」

 メヌエットは一時に閉店である。閉店三十分前にトシローはメヌエットを出た。外にはチズルが待っていた。
「もう少しでアメリカ兵が出て来る。ここで待っておこう」

 深夜一時を過ぎると次々とメヌエットから男たちが出てきた。五人の米兵とミユたち四人のホステスも出てきた。すると一人の米兵を残して四人の米兵たちはホステスと手をつないで四方に散っていった。
「チズル。あの一人になった米兵だ。行け」
チズルは一人取り残されたジョンに近寄った。
「一人なの」
「ああ」
「私と楽しまない。どう。サービスたくさんやるわよ」
チズルはジョンを誘った。すぐにジョンはチズルの誘いに乗った。
「あなたのホテルで楽しみましょう」
部屋は五人で借りている。楽しんでいる途中に仲間がやってくる恐れがあると思ったが、他の四人はホテルに行った。朝まで帰ってこないだろう。ジョンはチズルとカーホニアホテルに行くことにした。

 二人がホテルカーホニアに入ろうとした時に、チズルの携帯電話が鳴った。トシローからだ。
「もしもし」
「トシローだ。ジョンはやる気満々か」
「まあね」
「それじゃ、理由をつけてユミは離れるんだ」
「わかったわ」
「うまくやれよ」
「まかせて」
ミユは電話を切ると深刻な表情になった。
「ジョン。ごめんなさい。兄さんが病気で倒れて入院したって。命が危ないって。私は病院に行かなくてはならないの。ごめんね」
そういうと、ミユは去っていった。
 がっかりしたジョンはホテルに入り。エレベーターに乗った。フロントの真司は部屋に居る後藤志郎に電話した。
「後藤さん。アメリカ兵がエレベーターに乗りました」
「そうか。分かった」
後藤は電話切ると、ドアの横で腹這いになり、キヌ江に言った。
「お客がエレベーターに乗った。あとはよろしく」
「分かったわ」

 キヌ江は午前零時に部屋を出て、ホテルの外に出た。近くのコンビニ店で日本酒を買ってホテルに戻り、部屋のドアを開けようとしたがオートロックの鍵がかかっていて開けることができなかった。鍵を探したが持っていない。ドアを叩いたが中に居るはず男は寝てしまっていてドアの音に気が付かないようだ。キヌ江のドアを叩きながら座り込み、寝てしまった。キヌ江の演技は防犯カメラに一部始終が映っていた。

ジョンはエレベーターから降り、部屋に向かった。部屋に近づくと、反対側の部屋のドアの前に人が倒れているのが見えた。病気で倒れているのだろうかと思いながらジョンはゆっくりと近づいた。女のようだ。
「ヘーイ」
声をかけたが反応がなかった。肩を軽く叩いた。すると女は「ううん」と言って寝返りを打った。
 病気ではないようだ。寝ているだげだ。
「ヘーイ。大丈夫か」
肩を叩きながら言うと、女は「ううん」と言ってジョンのほうに体を寄せてきた。
 ジヨンは男の本能に火が付いた。火はついたが理性で押さえた。ジョンは「大丈夫か」と言いながら女を起こした。女は「ううん」と言いながら女はジョンにしがみついてきた。ジョンの男の本能は理性が押さえきれないほどに燃えてきた。女の脇に腕を入れて抱えながら歩くと女もジョンに合わせて歩いた。ジヨンは自分の部屋に女を入れた。

 ドアに耳を押し付けていた後藤であったが、ドアの閉まる音を聞いて、
「よし」
と言い、拳を握った。そして、携帯電話が鳴るのを待った。もし、いつまでも携帯電話が鳴らないならキヌ江がやばいことになっているかも知れない。その時はフロントの真司を呼んでドアを開けさせる。二時間キヌ江から連絡がなければそうする積りの後藤であった。
 一時間を過ぎた頃に携帯電話が鳴った。キヌ江からだ。キヌ江がワンタッチボタンで後藤の携帯に電話を掛けたのだ。それは米兵がことを済ませたことを知らす合図の電話だ。後藤は携帯電話のベルを切ってからフロントの真司に電話した。
「計画成功。急いで鍵を持ってこい」
「分かりました」
後藤は廊下に出るとあたりを見回した。するとジョンの部屋からキヌ江の叫ぶ声が聞こえた。後藤はドアを叩いた。後藤は防犯カメラ用の演技をした。
「キヌ江。キヌ江。大丈夫か。開けろ、開けろ」
真司が来た。合鍵でドアを開けた。後藤は部屋に入りながら110番に電話を掛けた。
「警察ですか。強かんです。早く来てください」
後藤と真司は米兵と殴り合いになる覚悟だったが、米兵はキヌ江とは合意でセックスをしたと懸命に訴えるだけで、殴り合いをする様子はなかった。
 警察が来て米兵は逮捕された。翌日、ウチナーの新聞などはナーファ市のホテルで本土からの女性観光客が米兵に準強かんされたことが大々的に報道された。
 米兵は泥酔し寝ている女性を強かんしたということでウチナー検察に準強かんで起訴された。

 エピローグ

「準強かんというのがあったとはなあ。気が付かなかった」
「強かんに準ずるということか。強かんよりランクが落ちるということだ。そんなものがあったとはなあ」
タケオとユミオはホテルカーホニアの仕掛けが準強かんになったことに愕然とした。
「準強かんでしかも四十過ぎのおばさんが被害者だぜ」
タケオはため息をついた。タケオよりがっかりしたのはユミオだった。予想していなかった多くのアクシデントを乗り越えて成功した仕掛けだったのに結果は強かんではなくランクの低い準強かんだった。これでは県民へのショックは小さくなる。それにタケオの言う通り四十過ぎのおばさんが被害者だ。もう、この仕掛けは何年も使えない。せめて二十代の女で仕掛けを成功させたかった。苦労したわりには見返りが小さかった。ユミオはため息さえ出なかった。
「県議選に効果はあるかな」
ユミオは訊いた。
「ないことはないだろう」
タケオはため息をつきながら言った。
「ないことはないか・・・・・・準強かんの四十過ぎのおばさんか。上はなんと言っているか」
「なにも言わない」
「そうか。上はもうなにも仕掛けないのだろうか」
「さあな。仕掛けるかも知れないし仕掛けないかも知れない」
「仕掛けなかったら県議会選はギヌワン市長選の二の舞になるかも知れない。上がなにもしないというのは考えられない」
「まあな。しかし、県議選がどうなろうが俺たちには関係ないことだ。関係ないというのはではないな。関係はあるが、もう俺達にはなにもできない。とにもかくにもなにもできない。
ユミオよ。俺たちは俺たちの仕事をやったんだ。そうだろう。だからあとは野となれ山となれだよ」
「そうだな。野となれ山となれだな」

【沖縄の声】米軍犯罪防止に県民大会は何の効果もない、政府のパトロールの方が効果がある[桜H28/6/17]
2016/06/17 に公開
平成28年6月16日木曜日に放送された『沖縄の声』。本日は、キャスターの又吉康隆­氏が19日の県民大会が米軍犯罪防止に何の効果もないことを解説すると共に、コラムコ­ーナー”又吉康隆のこれだけは言いたい”では「日米地位協定の抜本的改定要求は米軍基­地撤去要求と同じ」のテーマについて解説いただきます。
※ネット生放送配信:平成28年月6月16日、19:00~
出演:
   又吉 康隆(沖縄支局担当キャスター)
※チャンネル桜では、自由且つ独立不羈の放送を守るため、『日本文化チャンネル桜二千­人委員会』の会員を募集しております。以下のページでご案内申し上げておりますので、­全国草莽の皆様のご理解、ご協力を、何卒宜しくお願い申し上げます。
http://www.ch-sakura.jp/579.html
◆チャンネル桜公式HP
http://www.ch-sakura.jp/

チャンネル桜






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016/06/26 10:36:39 AM
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.