087895 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

輝きの風景 Ocean View

輝きの風景 Ocean View

第四四部「決戦!壁魔術!!(中)」

「どうなっている?なんで、信号が青に切り替わらないんだ?」
クロスは、もう既にかなりの時間を費やして、信号機の前で立ち往生していた。信号が、一向に青にならない。待ちきれなくて、渡ろうとしたこともあった。渡ろうと思えば、渡ることも出来ただろう。しかし、クロスは気づいていた。その、赤い信号機の時に、渡るとどうなるのか・・・・。横断歩道の白線を見る。真っ白な白線。しかし、その裏には紛れもない黒い線も見えた。渡ったら、殺される。まさに、思いもつかない方法で・・・。
「でもなー・・・、なんかこのままここにいたんじゃ、一生わたれないような・・・」
辺りは、自分の住んでいた世界・・・現実世界・・・そのものであった。しかし、どうしたことか、人はもちろんいなければ、声も音もしないのだ。変わらないのは、葉が風邪でこすれる音、そして、この一向に青にならない信号、だけであった。
クロスは立ち上がった。
「こうしていても、なんにも起きない!よーっし・・・」
そして、赤の信号機を見つめ、そして横断歩道へと目を移した。その時、横断歩道がなんだか身構える様な気がした。絶対・・・なにかある・・・・。渡ったら・・・不吉なことがおこるに違いない・・・。
「よーっし・・・!戻ろう!!」
それがクロスの出した、答えだった。こうしていても、何も起きない。だからと言って、横断歩道を渡る?いや、死ぬ。あの横断歩道は、実際現実にあっても、心霊スポットやなんやら言われて、みんなから避けられる様な、そんな感じがしていた。いや、それ以上の憎悪の、そして死を頭によぎらせる物があった。・・・犠牲者だ・・・。信号とは反対方向へ歩きながら、クロスは思っていた。あの横断歩道・・・。使われたのは今回だけじゃない・・・。きっと、今みんなが巻き込まれている、あの「試練の壁」とか言うのは、今まで拷問などに使われたのだろう。罪人、レジスタンスにこの試練、横断歩道を渡る試練を試させ、そして失敗させたんだ・・・。みんな、渡ってしまったんだ・・・。赤信号のまま・・・、あの横断歩道を!!
途中で、クロスの足は止まった。今まで、いろんな事を頭によぎらせていたから気づかなかったのだ。移動したのは、わずか、100mだけだった。おかしい、もう五分以上は歩いているはずだった。それなのに、まだ並木道が続いていた。それどころか、信号はまだ赤だった。
「はぁ~・・・一体どうしたら良いんだろう・・・」
時間も、信号の色も変わらず、自分は100mわずかしか進んでいない・・・。ため息をつきながら、とりあえず、いつ信号の色が変わっても良いように、信号を見て、今度は向かうことにしたのだった。少しずつ、いつ変わるかどうか、と目を開けたまま信号を見、歩いていた。そして、ある事がおきた。
「・・・あっ!!」
歩道の横に立っている木が、邪魔して信号が見えなくなったのだ。慌てて、信号を見た。すると、どうだろうか。信号は、青になっているではないか。
「やったー!これでわたれる!!」
クロスは急いで信号へ走った。歩道の端の木が、クロスを過ぎていった。今まで一番早いスピードだったろう。前を見ずに、必死に横断歩道へ走った。
もうじきわたれると思い、信号を見た。思いがけなかった!!信号は、真っ赤に染まっていた。そんな!!今まで一番速いスピードで間に合おうとしたのに!!そして、そのスピードのせいで、止まれなくなり、横断歩道へ足が、はみ出してしまった。その瞬間、横断歩道から、黒い手が次々とクロスの足をつかんだ。
慌ててその力のある黒い手を必死に抵抗し、汗を流しながらも、歩道へ戻ることが出来た。
「おか・・・・し・・い・・・。さっきは・・・青だったのに・・・」
信号は、あざ笑うかの様に、少しだけ光った。

















「俺の道・・・?」
シールが言うと、案内板は変化した。
[そうだ。お前の道だ。お前は、俺たちのチームだ。仲間だ。隊長だ。だけど、あんたあいつらと仲良くしている。シール、どうしちまったんだ?俺たち仲間だろ?]
シールは黙ったままだった。それでも、案内板は文字を残しては消え、新しい文章へと形を変える。
[なあ、なんで俺たちこういう事でしか会えなかったんだ?なあ、今までみたいに、また戻ろ]
「黙れ」
沈黙を、シールが壊す様にぴしゃりと言った。そして、再び喋りだした。
「戻る・・・?・・・無理だ。もう、死んだんだ・・・。お前の知っている、シール・・・はもう死んだ・・・。そうだ・・・、あんたらの知っている、“シール・リメイド”は、もういない!!」
突然、怒り狂った様に、目まぐるしく案内板が変化した。
[ふざけるな!!お前はお前だ!!死んだだと!?妙なことを抜かすな!!お前はお前だ!!“シール・リメイド”!!]
まるで、誰かと話しているようにシールは叫んだ。
「そうだ!!俺は俺だ!!タク!!お願いだ!目を覚ましてくれ!!確かに俺は暗殺部隊の隊長だった!だが、なぜ自分の憎んでいる敵に味方しなくちゃ行けない!?お前もわかっているはずだ!!家族だろ!?家族を助けるんだろ!?家族を助けるためには、憎んでいるはずの敵に味方するしかなかった!そうじゃねえのか!?」
そして、激しく案内板も変化する。
[その通りだ!俺は、俺の家族が殺されると知って、入ったんだ!そう、理由はお前の言うとおりだ。家族を救うため。長は言った。我が城の兵士とならば、家族は生かす。そうおっしゃった!だから、入った。お前こそ目を覚ませ!シール!!
その後、しばらくの沈黙の時が流れた・・・。
「タク、俺はここから出るよ」













{ふむぅ。成る程・・・これが、昔の私か・・・}
デビクロアは、さっきからずっと優勢に戦っていた。黒い龍は、意識が無い状態のようで、試練の壁で戦っている、ということよりも、既に、神の試練と言った方があてはめているのかもしれない。
そして、もはや、その勝負は終わりに近づいていた。
「さらばだ。我よ」
オーロラの様に輝く炎を、黒龍に浴びせた。
デビクロアの勝利だった。











© Rakuten Group, Inc.