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テーマ:冤罪事件 公判の記録(44)
カテゴリ:冤罪(狭山事件等)
*弁護人中田直人氏の最終弁論(一九七四年九月二六日/第八一回公判)より抜書きしました^^;
昭和四三年一〇月一日の第二九回公判で事実調べはいったん終了し、同年一一月一四日から弁護人の弁論が予定されていた。弁論準備中私は、自白調書添付の図面の中に、鉛筆で書かれた地図や文字の線にそって、あるいはこれと重なって、鉄筆か骨筆のような物でつけられたと考えられる跡があることに、あらためて気づいた。 被告人に確かめてみると、わら半紙を二枚重ねて地図を書かされたが、中には遠藤さんが先に二枚を重ねて書き、下の紙に写った跡をなぞって被告人が書いたものである、ということであった(第三〇回公判) 裁判所は審理を再開した。・・・「筆圧痕」と命名された、図面上のこの不可怪な跡は・・・遠藤警部補が・・・いっさいないと断言した(第三一回公判証言)。・・・被告人は、「最初のころは、遠藤さんがこう書けるといって自分が書いたのと同じように書いて見せたです。下に写っているから同じように書けるわけです。五日ぐらいたって、今度はあべこべに遠藤さんが上に書いて遠藤さんのあとを私が書いたような紙もあります。随分失敗して破かれたこともありますけれども、それでも書いたです。おれが(最初から)書いた方が随分多いような気がします」と述べている(第三〇回公判供述) 筆圧痕と鉛筆跡のどちらが先に紙面に印されたのかという鑑定は、これまでにその例をみないようである(宮内義之介第五九回公判証言)。 (以後、図面の原本は「二〇四九丁」のように記録の丁数で示し、これに対応する謄本もしくは写については、埼玉県警本部から取寄せたものを「二〇四九丁乙」、埼玉県狭山署から取寄せたものを「二〇四九丁丙」と呼ぶ。) 現在の証拠関係からいえば、ただ一つの結論だけが許される。ほかでもなく上野鑑定がみずからが指摘し・・・つまり、「被告人以外のものが骨筆の類で筆圧痕をつくり、この後に被告人をして鉛筆でその跡をたどらせ」たという結論である(上野正吉第五九回公判証言)。 被告人も「下の紙に写った跡にやってみろといわれて書くときにはずれてしまうことがあるのです。そうすると怒られて、それは破ってしまって又新しいのを書くのです」と述べているのである(第三〇回公判供述)。 取調官が取調室に地図を取寄せたり、必要な図面をあらかじめ作っておいたり、被告人に参照させたりしても、任意な取調べであればむしろ当たり前である(長谷部梅吉第五一回公判証言、青木一夫第五二回公判証言)。それなのに、遠藤警部補が地図はなかった、被告人に見せたことはなかったと言い張ることこそ異常である(遠藤三第三一回、第五六回公判証言)。 被告人は、図面の日付は、じぶんから進んで書いたというより、「書けと言われたと思います」と供述するのである。自白を始めた六月二三日から三〇日の間は毎日地図を書き、連日連夜に及んだという(第二六回公判供述)。・・・ 第五六回公判調書中証人遠藤三の速記録には、面白い記事がある。 松本弁護人(次に同三八年六月二四日付警察官調書添付図面の内二〇七五丁を示す) それ時計を捨てた場所について本人が書いたものですね。 遠藤警部補 はい。 松本弁護人 この作成日付を見ますと六月二九日になっていますね、本人の書いたものが。 遠藤警部補 はい。 井波裁判長 最前その点について尋問がありましたね、証人はそれを六月二九日とよむといったんですが、すぐ前のページにある図面と合わせて見せて下さい。比較した上で答えさしてほしいんです。 松本弁護人(同二〇七四丁の図面を示す) これは何の図面ですか。 遠藤警部補 石川君がいわゆる、とった時計の型を書いたんでしょう。 井波裁判長 それは図面に日付が両方とも書いてある、その一番目の日付を読まして下さい。 遠藤警部補 これがね、なかなか書き方が上手に書いてあるから、四とも読まれるような字になっているんですよ、これは。 井波裁判長 前の字は何て読むんですか。 遠藤警部補 四です。 井波裁判長 あとの字は九と言ったんですか。 遠藤警部補 九のような格好になっているんで二十九と申し上げました。比べてみますと、二十四と二十九とは大体まあ・・・ ・・・。 第三一回公判で遠藤三警部補は私(中田直人弁護人)と次のようなやりとりをしている。 中田弁護人 あなたは、前にできた図面を何日かあとで調書に綴じたり、それから、調書自体綴じ込まないで置いといたりしたということはありませんか。 遠藤警部補 ありません。 中田弁護人 できた調書をあとから二、三枚差し替えたということはありませんか。 遠藤警部補 とんでもない話だ、それは。 中田弁護人 とんでもないことですね。 遠藤警部補 とんでもないことです。 中田弁護人 あなたはないですね。 遠藤警部補 ありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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