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テーマ:思い出の味・懐かしの味(159)
カテゴリ:私の日常
入院中の母にとって、楽しみなことは限られています。子供たちの顔を見ること、そして食事です。母は週に3回、腎不全もあり、人工透析を受けているため、本来は食事制限が厳しいのですが、あまりに体重、食欲が落ちてしまっているため、病院側から「何でも欲しいものがあれば食べて良い」と許可されています。そこで母に会いに行く時は、なるべく母の好きなものを作って行ったり、買って行ったりするわけです。
今回の帰省では、最初のうちは母の大好きなお刺身や握り寿司、ケーキ、練り製品、果物などを買って届けていました。(親のため、と思えば、普段自分たちは滅多に買えないような高価なものでもポンポン買ってしまえますね♪)それらを喜んで食べてくれた母でしたが、最後に食べたくなったのは、ポテトサラダやうま煮(筑前煮)、バラ寿司(五目ちらし)、ハンバーグなど母の大好物の手作り料理でした。 (お金はそんなにかからないけど、手間がかかるものばかり!笑) 中でも大好きなバラ寿司(母の生まれた広島・呉ではそう呼んでいました)は、私にとっても「思い出の味」で、作りながら昔の風景が懐かしく思い出されました。 芝えびの背わたを丁寧に取って、ごぼう、人参は細くささがけにし、ごぼうは何度も水をかえながらアク抜きをします。干ししいたけは何時間もかけてふっくらと戻し、その戻し汁は具を煮るときのダシに使います。油揚げは油抜きしてから細かく刻み、蓮根はイチョウ型の薄切りにして酢水でアクを抜きます。・・・こうして下ごしらえだけで何時間もかかるわけです。 (やっぱり、手間がかかるものほど美味しいんだなぁ~) 呉のおばあちゃんの家では、何か特別な行事があるときには、よくこのバラ寿司をみんなで作りました。小学生だった私たち姉妹は、大きなボウルを囲むように輪になって座り、叔母たちに教わりながらみんなで大量のごぼうをささがけにしました。ご飯を炊いている間に、薄焼き卵を何枚も焼き、絹さやのヒゲを取り、塩ゆでにします。今度は卵と絹さやの薄切りです。脇では叔母がアナゴを網で焼いて、細く刻んでいきます。そしてご飯が炊き上がると、今度はみんなでうちわを持って、いっせいにパタパタとあおぎます。あったかい湯気の中に混じって酢のツーンとした香りが鼻をついてきます。そして混ぜ終わったころ「味見だよ♪」と、一口ずつ口に入れてもらうのが大好きでした♪ (*母自身も幼少時代にこれを祖母からしてもらっていたようです。母の書いた「とうせんばと私」の中に、バラ寿司についてのエピソードも入っています) 「ほら、頑張ってパタパタやって~!」 「こらっ、ヒデキ!ママの顔じゃない!ご飯をあおぐんだよっ!」 ・・・4人の子供たちが手に手にダンボールやパンフレット、下敷きを持って(うちわがなかったので)ご飯をあおいでいます。具を混ぜ終わると「ほら、あ~んして♪」と、4人の口の中に一口ずつ入れて、、、懐かしい風景は、時と場所を移して、そっくりそのまま再現されていきます。最後の飾りつけはそれぞれが思い思いに、、、どの子も真剣な眼差しです。 「ママー!美味しいね♪」 と叫ぶ子供たち。 ・・・こんな何でもない風景が、やがてこの子たちの「思い出」になっていくのでしょう。 母も「まあちゃん、美味しいねぇ~」とじっくり味わいながら食べてくれました。(ほんの少ししか食べられませんが・・・) ごぼうのささがけは、大変だけどやっぱり大事ですね。機械で刻むより「優しい」味になるような気がします。 サキにもちゃんと教えてあげないと! 母の書いた本の表紙、サンプルが2案、昨日届きました。母が今とても心待ちにしている出版です。一昨日帰ってきたばかりですが、すぐにこれを見せてあげたいので、今日はまた浜松までドライブしてくるつもりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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