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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2007.11.13
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カテゴリ:ヒラカワの日常
白髭橋の会社の13階にある喫煙室の窓の下には、
隅田川が蛇行して流れている風景が見える。
今日のように快晴の日には、新宿、池袋のビル群の遥か後方に
くっきりと、白雪を置いた富士山。
八ヶ岳、丹沢連峰まで見渡すことができる。
気持ちがいい。

昨日は、リンクアンドモチベーションの小笹社長と
銀座の本社にて、長時間の対談。
モチベーション、働くことをめぐる随談のようなものである。
随談とは、随筆のような談話ということで、ラジオデイズの
大森美知子の造語らしい。
要素還元的な思想を排すというところでは
俺も、小笹さんも概ね同じような考え方を持っているので、
どうしても議論というよりは
もうすこしゆるいものになる。
それで、随談なのである。
キャリアデザインも、モチベーションも、インセンティブも
90年代後半から盛んに日本で使われ出した言葉である。
こういう言葉が、脈絡無く出てくるときは、注意が必要である。
なにか、新しいものが生まれたことを告げるよりは、
失われたものを隠蔽する場合の方が多いからである。

つまり、こういった外形的な概念を持ち出さなければ、
やっていけないような現実的、心理的な問題が
仕事の現場のほうで、顕在化しはじめているということに他ならない。

95年以降、アメリカの産業は、モノづくりやサービスの提供といった
商品を中心としたサプライヤーと顧客の間のコミュニケーションに基礎付けられた
ビジネスから、金融、知財ビジネスの方へ大きくシフトしてきた。
ITビジネスもまた、そのような流れを加速するところに
リソースを集中してきたといえるだろう。

それ自体は、産業資本主義から高度資本主義の流れの中での
なかば必然的なプロセスを辿ってきたということであり、
短期的な功罪を論じても何か新しい知見が見出せるわけではない。
ただ、商品創造や、サービス提供といったビジネス本来の手触りや興味といった
ビジネスプロセスそのものの中に生まれてくる充足感や、満足感、矜持といった
ものに代わって、情報システムや金融システムがはじき出す結果
がもたらす計量的なものが、ビジネスの方法も、価値観も支配するようになった。
プロセスよりも、結果だよということである。

情報システムや金融システムは、労働プロセスというものの標準化、
効率化にしか興味を示さなくなった。
しかし、それがどんなに標準化されようが、それらのプロセスを支えているのは、
充足感や、満足感、矜持といったものを糧として生きている人間である。
労働の現場そのものに胚胎していた労働への意欲そのものを
脳化したビジネスは、プロセスから追い出したのである。
その結果、失われた労働への意欲を恢復するためには、労働の現場の外側に
欲望点火の幻想を作り出す必要があった。
それが、モチベーションであり、キャリアデザインであり、インセンティブ
といったよく訳のわからない、言葉である。
誰かが、あるいは何かが、
個人の内面の中にこういった価値を吹き込んでくれるという物語である。

でもさ、個人の内面をどれだけ掘り進んだところで、
誰も労働への意欲や、キャリアへの渇望といったものを探り当てることなんか
できないのは、自明のことだ。
モチベーションがあるから働くんじゃないのだ。
働いているうちに、自分の内面に広がってくる充足感こそが、
あえていうなら、モチベーションというものの原風景だろう。


まあ、そんなことを、小笹社長と話したわけである。
(ほとんど違うけど)
この対談は近日中に、ラジオデイズで公開される。
同時に、年が明けて桜が咲く頃、本にもなる予定である。





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最終更新日  2007.11.13 14:06:52
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