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カフェ・ヒラカワ店主軽薄

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2008.04.07
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カテゴリ:ヒラカワの日常
昨晩、夜中の一時二十分まるが死んだ。
先週の金曜日あたりから急に容体が悪くなり、
日曜日の夜、三宿の病院へ運び込んだときには
自分の足で立てない状態であった。
そのまま入院となった。
夜十時ごろ大量に吐血。その後は苦しがる力も無くなって
最後は眠るように死んだそうである。
多臓器不全ということであった。
享年、不明。
春爛漫の花の下。
野良犬らしい死に方であった。

「始めより今にいたるまで、曾て端首無し」
空海の『三教指帰(さんごうしいき)』の言葉である。
われわれは、何処から来て何処に行くのかを知ることはできない。
端首は、人間の知性の埒外に朦朧と霞んでいる。
そんなに、哲学的な話は、似合わないが
まるもまた、何処から来たのか
分からない野良犬であった。
保健所で、処分されるところを救い出され
機縁があって俺のところへやってきた。
俺は、生まれも、育ちも、年齢もわからない野良犬をハッチバックに乗せて
東京の町を彷徨し、会社に寝泊りした。
四年前俺が住んでいたところは、ペット禁止だったからである。
最初は人間を怖がって目を合わせようとしなかったが
慣れてくると育ちの悪さが前面に出て、
食うことと、走ることだけに貪欲な馬鹿ぶりを発揮した。
芸のない犬であったが、ただひとつだけ美点があった。
それは底抜けに臆病で優しいということであった。
どんな犬に寄せていっても、吼えたり、噛み付いたりすることはなかった。
吼える犬の前を通るときは、見てみぬ振りをしていた。
噛み付かれたこともあったが、反撃することはなかった。
それでも、誰にでも寄って行って頭をなでられるとすぐに
踵を返して帰ってきた。
まるが吼える声を聴いたのは四年半で数えるほどしかない。
よく多摩川の川原に出て、走り回った。
「生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終りに冥し」
空海はこうも言っていた。
俺はまるの、生についても死についても、何も知らないが、
生死に挟まれた一時を光の溢れる草むらで過ごせたのは幸いであった。





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最終更新日  2008.04.07 19:51:02
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