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森博嗣「ZOKUDAM」(光文社)を読んだ。
最初、書店でこの本を見つけた時は、ビックリした。 森博嗣と言えば、緻密な構成と極度に工学的かつ論理的な内容と文体から「理系ミステリィ」と呼ばれる新ジャンルを築き上げたことで名高いミステリー作家である。僕も何冊か読んだ。 それが、表紙や帯を見る限り、ロボットものを出したらしい。 思わず手に取って、パラパラと中身を見てみた。 理系ミステリィとはまるで違う、軽妙で軽薄で軽快な文章だった。 ハードカバーの新刊。価格は\1,700+消費税。ちょっと高いかも。 しかし、その場で即購入した。 往年の宮田珠己をもしのぐ軽妙で軽薄で軽快な文体が、かなりツボに来たのだ。 読んでみた。 ストーリー自体は、意外性はそこそこあるが、それほど特筆するものでもない。 しかし、まあ設定そのものも相まって、とても面白かった。 読み終えて、思った。 この本は、ジャンルとしてはSFなのだろうか。 どうやら、発表はSF系の雑誌への連載だったらしい。 しかし、どう見てもSFには見えない。というか、空想科学に属すると思える内容は皆無だ。科学の部分があまりにも現実的過ぎる。それも悪い意味で。SFに付き物の、未来や技術に対する希望、期待感が全くない。(それこそがこの作品の味でもあるのだが) そして、タッチはあくまでも軽い。そんじょそこらのライトノベルなんかよりはるかに軽い。これに比べたら秋山瑞人の小説の方が全然重い。(元々僕は秋山瑞人の小説が題材以外は通常の小説とどこが違うのか疑問を持っていたが) もっと大きな疑問は、ライトノベルとはなんなのか、ということである。 題材なのか? 対象年齢なのか? だったらブレイブストーリーはどうなるんだ?ハリー・ポッターは? 実際、この「ZOKUDAM」だって、作者名を変えてライトノベルの書棚に並んでいても、内容も文体も全く違和感ないと思う。 ライトノベルにも、萌えキャラが必須とかそんなことは全然ない。 はっきり言って、もうそんなジャンルとかに意味は何もないんだろう。 単純に、その作品が最初に扱われたのがどの出版社か、どの雑誌か、どのシリーズか、それだけがその後の作品のレッテルを作っていると言っていい。 マンガが、連載された雑誌によって、少年誌か少女誌か青年誌か麻雀専門誌か、そのシリーズで出版されるのと、全く一緒。 そのレッテルとジャンルには、大まかな対象読者層があるだけで、他には意味なんてない。 作品については、もうすでに、ジャンル分けなんてもの自体が、ナンセンスなのかもしれない。 深く考えずに、一つの娯楽として受け止めるべきだろう。 この本は、僕にとって素晴らしいエンターテイメントだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007/07/27 12:59:37 AM
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