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神経内科医の徒然診療日記・コロナの時代

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takamatsu0224

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Jul 6, 2007
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カテゴリ:医学関連

[ パーキンソン病とうつ病の関係 ]


最近の調査ではパーキンソン病の患者さんの約半数に軽症から重症までを含めて何らかの抑うつ状態が合併していると言われています。ただし、重症のうつ病は数%程度iで、同じ年代のパーキンソン病にかかっていない人たちと比べても特に多いわけではありません。


うつ病の発症には、遺伝的、生物学的、環境、ストレスなどのさまざまな要因が複雑に関与していると考えられていますが、原因は未だ解明されていません。脳はたくさんの神経細胞のネットワークによって構築されていますが、神経細胞のあいだの情報伝達は神経伝達物質を介して行われます。

パーキンソン病の患者さんの場合、ドパミン神経終末の脱落に呼応して線条体のドパミンが低下していることがその運動症状の原因です。パーキンソン病では、この他にもセロトニンやノルアドレナリンという別の神経伝達物質も低下していると言われています。

うつ病の原因には、このセロトニンやノルアドレナリンの異常が関連していること示唆されていますので、パーキンソン病の患者さんがうつ病になりやすいことは充分考えられます。脳内でのドパミンの低下自体も抑うつ状態の原因となっているのではないかとも考えられています。


[ 治療について ]


パーキンソン病の患者さんが抑うつ状態に陥ってしまわれたときに、我々神経内科医はまず、パーキンソン病の病態、病状の変化の見通し、治療計画について患者さんがよく理解し納得していて、ご病気の将来について楽観してくださっているかどうかを確かめます。もし、誤解や不安があれば、それが解けるまで良く説明します。


それから、パーキンソン病の筋固縮や振戦といった運動症状を、患者さんが満足できる程度にまで、できるだけ早く改善して差し上げるように努力しています。これにはパーキンソン病の治療薬を使います。運動症状が良くなることによって、パーキンソン病にかかってしまった!というストレスから少しでも解放してあげたいからです。

もうひとつの理由は、パーキンソン病自体による動きの少なさや表情の乏しさなどが、うつ病によるものと見分けがつかないこともあるからです。パーキンソン病の運動症状がパーキンソン病の治療薬によって充分に改善しているのに、患者さんが満足できないような状況にあるときには、うつ病の合併が疑われます。


パーキンソン病の治療薬としては、本当は効果の強いレボドパ製剤を最初から服用して頂きたいのです。しかし、レボドパ製剤は数年後にいろいろな副作用を引き起こすことが多いので、最近ではドパミンアゴニストを主剤とした治療を始めることが一般的です。

ただし、ドパミンアゴニストは吐き気を起こすことがレボドパ製剤よりも多いので、少量から飲み始めて1~2週ごとに段階的に服用量を増やしたほうが飲みやすいのです。このため、パーキンソン病の運動症状が良くなったなあ、と実感できる投与量になるまでにどうしても1ヶ月くらいかかってしまいます。

ドパミンアゴニストによる治療により、抑うつという気分の障害自体を改善した例もあり、また、パーキンソン病でドパミンにかかわる神経細胞が減っていってしまうのを予防するものもあるのではないか、と期待されています。

このように長い目で見るとドパミンアゴニストを主剤として治療を開始するメリットがありそうなことはお分かりいただけるでしょう。とはいっても、中には一刻も早く仕事に復帰したい、という切羽詰った状況の患者さんもいらっしゃるでしょう。その場合には、レボドパ製剤で治療を開始したほうが良いでしょう。ドパミンアゴニストも併用しながら、レボドパ製剤の投与量を後で減らしていく方法もあるのです。


パーキンソン病の運動症状はかなり改善しているのに、抑うつ状態が1ヶ月以上も続いて毎日の生活や治療への取り組みに支障があるようでしたら、うつ病の薬物療法も考えます。幸い、うつ病に対する治療薬も進歩しています。

近年開発され、うつ病の患者さんに広く使わているSSRIやSNRIとよばれる脳内のセロトニンやノルアドレナリンを高める薬は、従来からの抗うつ薬や抗不安薬とともに必要に応じて使い分けたり、併用したりします。


うつ病はこのような治療をしないと数ヶ月から1年は続いてしまいますが、治療を受ければ数週間から3ヶ月位でおさまることが多いのです。ただし、再発することも少なくありませんので、この病気とは気長に付き合っていく必要があります。


万が一、うつ病のために生活に大きな支障がでてしまったり、「死んでしまいたい」と思ってしまうほどつらい状態でしたら、うつ病の治療を急ぐ必要があります。このような場合には精神神経科の専門医に治療を依頼する必要があります。

 

1 :

山本光利、パーキンソン病におけるうつ.山本光利編著、パーキンソン病、認知と精神医学的側面.中外医学社:2003年、p38-53


コメント : 昨日、昭和大学医学部神経内科教授の河村 満先生から「パーキンソン病の認知・感情障害:早期診断と機序」というテーマで小グループの講演を拝聴する機会を得ました。

その内容な上記とは少し異なりますが、大まかには類似しているので記憶のため引用しておきました。

少し異なるのは、パーキンソン病のうつ状態には積極的にSSRIを使用した方が改善がよいという話でした。パーキンソン病の運動機能の改善にもその方がよかったというデータかと思います。

残念だったのはせっかくの機会に出席された先生が少なかったことです。






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Last updated  Jul 6, 2007 06:08:02 PM
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大黒町@ Re:ギラン・バレーとジカ、やはり関連(03/08) 色々新しい病気が出てきて不安になります…
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