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焼酎讃歌

「鮭野夢造さん」のページが閉鎖されそうなので、緊急事態としてコピーさせていただきました。著作権はいうまでも鮭野夢造さんにあります。

別冊・辛口批評
西酒造のバニラエッセンス添加問題 決定版!
               (11月12日 記)
   これまで何回かに分けて「号外」という形式で特集を組んできた西酒造の問題、新情報が出るたびに疑問点を提示してきたが、たまたまHPを見た技術屋の方からの指摘で、これまで提示した疑問点がほぼ氷解したので、今回一応の結論を出す。
 結論は、
「現在の醸造技術からすれば、西酒造は自社商品「ちびちび」にバニラエッセンスを添加していたのはほぼ疑いようのない事実であり、それにも関わらず、なんら反省もせずに特約店に嘘でぬり固められた説明をしていた西酒造の商品、及びそうした西酒造に肩入れをする酒屋に対して、消費者は不買運動でもって対抗せよ」
である。以上の結論について、事実誤認だと信じて疑わず、反論をお持ちの業界関係の方、是非実名でご一報いただきたい。今後、承ったその意見については、お名前を紹介させていただいた上で、その見解の是非をこのHPにて説明させていただく。以下、長くなるがその根拠を述べる。

 本格焼酎や、泡盛、そして清酒にほのかなバニラ香がすることはある。なぜバニラ香がするかについて、1996年、日本農芸化学会誌(第七十巻六号)に、当時国税庁醸造研究所に所属されていた小関卓也(現、酒類総合研究所主任研究員)、岩野君夫(現、秋田県立大学教授)両氏による論文(ミニレビュー)が掲載されている(上掲誌24~26頁)。その内容をわかりやすく要約しよう。

  【香りの成分】
  ・泡盛の古酒にはウイスキーのような芳香がある。
・その芳香は、フェノール化合物のバニリン(以下、VAとも表記)であり、麦焼酎や清酒にも存在する。
・ウイスキーなどは、バニリンは樽貯蔵の工程で木材から移行する。 ・バニリンが検出される焼酎などには、バニリン以外にフェルラ酸(以下FAと表記)、4-ビニルグアイアコール(以下4-VGと表記)、及びバニリン酸(以下VAAと表記)等も存在し、新酒と熟成酒では含有量が明らかに異なった。
・分子構造上、FAがVAの前駆物質であると予想、実験した。
  【実験】
  FA(1ml)のみ含む100mlクエン酸緩衝(pH5.0)のアルコール濃度15%のモデル焼酎溶液を合成し(とっても重要な鮭野注:発酵もろみではない)、減圧蒸留し、留出物を初期(鮭野注:いわゆるはなたれ部分)、中期及び後期とに分けた後、分析した。
  【結果】
  初留部分:主にFA(フェルラ酸)が検出(鮭野注。フェルラ酸は比較的揮発しやすい物質であることがわかる)
  中留部分:4-VGが検出。
  後留部分:4-VG及び若干のVA(バニリン)及びVAAが見いだされた。
  【ここまでの結論】
蒸留中に、フェルラ酸が熱により4-VGに変換される。また、もろみ工程での酵母の代謝作用では、バニリンは生成されない。また、もし特殊焼酎でもろみにバニリンが存在していても、蒸留工程で、そのバニリン採取されることはありえない(バニリンの沸点による。この点は、号外のバックナンバーで指摘済み)。
  【貯蔵】
  4-VGを主に含有する中留部分を37℃で20日貯蔵すると検出される化合物はVA及びVAAである(鮭野注:あくまでも検出されただけ。4ーVGが完全にVA及びVAAに変換されたわけではない)ことから、貯蔵中に4-VGはVA(バニリン)に変換され、さらにVAA(バニリン酸)にまで変化したと考えられた。
また、常温に近い状態でも変換が進むことが示された。またpHが低いほと変換が進む。さらに、アルコール濃度が高いほどVAが高く、アルコールがスカベンジャーとしての機能があることが判明。
  【結論】
 焼酎におけるフェルラ酸は、蒸留中の酸及び熱によって4ーVGとなり、貯蔵中の酸化(鮭野注:酸化還元反応)よって4ーVGがVA(バニリン)及びVAA(バニリン酸)となる。
  【メカニズム】
フェルラ酸 →(酸化、熱) →4-VG → (酸化)→バニリン
   ↓                         ↓
(酵素によるケミカルコンバージョン)         (酸化)
   ↓                         ↓
 4ーVG→’(酸化、熱)→バニリン→(酸化)→ バニリン酸
 (以上、前掲論文による)

【「ちびちび」について考えると……】
   西酒造は、特約店に対し、「黄麹を使用するに際し、補酸の為にフェルラ酸を添加した。フェルラ酸はバニリンの前躯体であり、前駆体が増えたから蒸留後の商品にも風味が残った云々」と説明をしているらしい(複数の情報筋からこの情報を得たが、西酒造から直接聞いたわけではないので、一応伝聞とする)。
一見、もっともらしい説明であり、これまで、西酒造の専務を「鬼才」とか持ち上げていた(お馬鹿さんな、というと非難を浴びそうなので、勉強不足の)酒屋及び飲み屋連中ならこの説明でころっとだませそうだが、ほんの少し頭を働かせよう。「ちびちび」は初留部分の商品であり、上記実験で、初留部分で検出されたのはフェルラ酸である。フェルラ酸が長期熟成により、酸化還元反応を起こすことにより、4ーVGを経て、バニリンに変質するわけである。「ちびちび」は長期熟成された商品ではないので、バニラ香がするのは「明らかに不自然」である。また、「蒸留後の商品にも風味が残った」という説明を本当にしていたならば、西酒造の誇る優秀な(笑)技術陣、高校レベルの化学の知識もないことがわかる(そもそもバニリンは発酵中に代謝で生成されないし、バニリンの沸点は200℃を越す。もろみに残存していても、蒸留した留出物には残るはずがない)。
さらにだめ押しだが、フェルラ酸の研究で知られる和歌山県工業技術センターのHPによると、同センターは、2000年に、「フェルラ酸と各種アルコールとのフェルラ酸エステルが酵母やカビに代表される真菌類に対して顕著な抗菌活性を示すことを企業と共同で見いだした」として、特許を申請している。
酒の発酵は、麹カビにより澱粉から糖化されたブドウ糖を、酵母が代謝するという工程だ。もし、雑菌対策として、フェルラ酸を(黄麹は、黒麹や白麹よりも酸が少ないので、昔黄麹で仕込んだ焼酎は、温暖な地方で仕込むため。雑菌の侵入を許し、腐敗することが多かった)それ相応にしたならば、フェルラ酸の抗菌活性により……結果は容易に想像できる。余談ながら、上の実験では、蒸留前のものは、あくまでも合成した溶液である(私の勝手な推測だが、西酒造サイドは、読売の報道後、問い合わせにはしばらく応ぜず、苦し紛れの言い訳をする際に前掲論文を基に考えたが、所詮バニリンが蒸留後に残らないことも知らないとしか思えない程度の人たちである。フェルラ酸がどういう物質であるか確認せずに失笑を買うような嘘を思いついたのではないか)。

 また、上記実験では、エチルアルコールとバニリンの化合物である「エチルバニリン」は検出されていないことに留意したい。私は、某メーカーが告発した際、その根拠は「エチルバニリン」が検出されたからだと聞いている。
実は、西酒造の商品が話題になった当初、主力商品にはバニラエッセンスを添加していたというのが業界筋の見方であった。現在、本格焼酎とは縁のないDSなどの酒屋が主な取引先である、完全に斜陽傾向にある大手の洋酒メーカーや日本酒メーカーが、時期を見て、西酒造の商品の分析をしようとしているというまことしやかな噂がある(できすぎた作り話かもしれないが)。エチルバニリンが商品から検出されれば、則ちバニラエッセンスを添加していたことになるし、二の矢が放たれれば、西酒造のみの問題ではなく、焼酎ブームを終焉に導くきっかけとなりうる(それが目的か)。
 ともかく、西酒造がどうなろうと、同情の余地はないのは以上の議論からおわかりいただけると思う。

 焼酎業界、桶取引の問題をはじめとして不透明な部分が多すぎるが、将来の展望を持った上で、さまざまな不正(甘味料の添加や国産商品と宣伝しながら輸入焼酎の使用する等)に対して、業界として毅然とした対応をとってほしい。不見識なごく少数の蔵のせいで、本格焼酎が見棄てられた酒とならないように……。
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