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調子に乗って、また経理の話題です。
今回は「のれん」について、IFRSと日本の会計基準の違いについても触れていきたいと思います。 経営財務No.3045における「コーポレート・ガバナンスにとってIFRSとは何か~IFRS3号によるのれん会計とガバナンス」を読んで自分なりにまとめてみました。 【のれんって何?】 会計の教科書を開くとよく出てくる文句は「超過収益力に対する対価」という説明がなされ、その定義というか意味合いとしては、「所属する業界の平均的な利益率を上回っている額」ということになります。 具体的には「超過収益力」は、過去数年間の純資産利益率の実績が、業界平均のそれを上回る金額(超過収益力「年次」)に、その超過収益力が継続すると見込まれる年数をかけたものになります。 つまり以下の計算式で求まるということになります。 「純資産」×(「被買収会社の純資産利益率」-「業界平均の純資産利益率」)×「超過収益直が継続する年数」 で、今回感じた問題としては、日本の会計基準にしたがって、計算された「のれん」の金額が本当に上の定義で言う「のれん」の金額になっているのか? 何か余計なものは混じっていないか?ということになります。 では、まずは一般的なM&Aのプロセスとその会計処理から見ていきましょう。 【M&Aのプロセスと会計処理】 一般的なM&Aは大ざっぱに以下のような形で行われます。 ●被買収会社の業務・法務・財務内容の精査(いわゆるデューディリジェンス Due diligence) ●買収金額を巡るバーゲニング、合意内容の公表 ●買収の実行(支配取得) ●経営統合 会計処理(日本会計基準)は以下の通りです。 ●被買収企業の株式取得(付随費用含む※1) ●被買収企業の資産・負債を時価評価※2 ●資本連結 ※1:この場合の付随費用は弁護士費用、会計士へのデューディリ費用、不動産鑑定士への手数料などになります。 またIFRSでは「費用」処理されます。 ※2:被買収企業の資産も日本会計基準とIFRSでは違いがあります。 例えば、開発費について、日本会計基準では「研究開発費」として、「費用」処理されます。 一方IFRSでは「開発費」として「資産」処理されます。 以下では、以上のM&Aに関する過程における論点っぽいのをまとめていきます。 もちろん、始めに提起した問題点に沿って。 つまり、「日本の会計基準にしたがって、計算された「のれん」の金額に余分なものは混じっていないか?」という問題点です。 【被買収会社の業務・法務・財務内容の精査(デューディリジェンス)】 デューディリジェンスでは表題の通り、企業の業務、法務、財務内容の精査を行います。 これは以下のようなリスクを見積もるためと思われます。(M&Aの実務をしていないので、内情は分かりません) ●業務がきちんと法律及び社内規定に準拠した形で行われているか(コンプライアンスリスク) ●訴訟になる可能性がある揉め事を抱えていないか(法務リスク) ●後に追徴課税等になる可能性がある税務申告を行っていないか(税務リスク) ●偶発債務などのリスクを抱えていないか(会計上のリスク) ●無形資産などの評価(まだ特許などに至っていない研究開発中の技術などで会計上の資産ではありません) ●リストラ費用(M&A時は負債計上されていません) 以上のうち「無形資産などの評価」以外は基本的に被買収会社の評価を下げる方向に向かうと思われます。 つまり「のれん」の評価額を下げる方向 しかし「無形資産などの評価」については、日本基準の会計上「資産」計上されていないものに評価額が付くことになります。 したがって、その分「のれん」の評価額が増加することになります。 問題点としては、この「無形資産」の評価額は「超過収益力」といって良いかどうかです。 M&Aの作業の流れから考えると、明らかに違うような気がします。 つまり、この「無形資産」は被買収会社の資産負債の評価をする中で評価されるものです。 一方「超過収益力」は上記の定義は以下の通りです。 過去数年間の純資産利益率の実績が、業界平均のそれを上回る金額(超過収益力「年次」)に、その超過収益力が継続すると見込まれる年数をかけたもの したがって、「超過収益力」を算定する中で、資産負債の評価は無関係なのです。 となると結論としては、「無形資産」の時価評価を行わないことで、日本の会計基準上の「のれん」には「超過収益力」以外の何かが混じっていることになります。 一方で、IFRSでは、「開発費」などの「無形資産」は「資産」計上する可能性もあるため、この部分において、IFRS上の「のれん」と日本の会計基準上の「のれん」に差異が出る可能性があります。 次にリストラ費用ですが、日本の会計基準では「負債」認識する可能性があります。 したがって、その分「のれん」の評価額が増加する可能性があります。 【買収金額を巡るバーゲニング、合意内容の公表】 バーゲニングなので、要は値段交渉の意味になります。 値段交渉の過程で「のれん」の評価額に影響を与えうる事柄をまとめます。 まず、「のれん」の評価額に影響を与えることになる過程としては、会社を買収する際に、買収会社は出来るだけ安く買い取ろうとし、被買収会社(の株主)は出来るだけ高く買い取ってもらおうとします。 その意味でお互いの利害が一致していません。 そんな中では、少し状況が違うことで結果が大きく変わってくると思われます。 例えば、買収会社の他に協力なライバル会社がいる場合、買収会社とライバル会社の間で買収金額を競り合うということにもなりかねません。 すると本来の評価以上に高い買い物をする可能性があります。 逆に不景気の中で救済型M&Aということになれば、本来の評価よりも安い金額で買収できる可能性もあります。 当然これは「超過収益力」とは別の次元で決まるものであります。 既に書きましたが、あくまでも「のれん」とは、「過去数年間の純資産利益率の実績が、業界平均のそれを上回る金額(超過収益力「年次」)に、その超過収益力が継続すると見込まれる年数をかけたもの」だからです。 価格交渉の過程から生まれるものではありません。 したがって、上記理由でも「のれん」は「超過収益力」で構成されているとは言い切れません。 ちなみにこれは日本の会計基準でもIFRSでも起こりうることであり、日本の会計基準とIFRSの間に相違はありません。 【買収の実行(支配取得)】 これは被買収会社の株式を実際に購入し、被買収会社に対する「支配」を獲得するということになります。 ここでは以下のような場合に「のれん」の評価額に影響を与えうると考えられます。 ◎被買収会社の株式評価額に弁護士費用などが含まれている場合 ◎段階取得の場合 ◎株式交換により支配を獲得する場合 一つ一つ整理していきます。以下の通りです。 ◎被買収会社の株式評価額に弁護士費用などが含まれている場合 この時点で被買収会社の株式評価額は以下の計算式になると思われます。(現金買収の場合) 株式評価額=「資産負債の時価評価額(無形資産除く)」+「無形資産の時価評価」+「超過収益力」±「交渉による値段の変動」+「弁護士費用等」 日本の会計基準における「のれん」は「無形資産の時価評価」+「超過収益力」±「交渉による値段の変動」+「弁護士費用等」の合計で構成されていると考えられます。 IFRSでは、「超過収益力」±「交渉による値段の変動」の合計額になるので、「弁護士等の費用」分「のれん」の評価額に差異が生じます。 ◎段階取得の場合 支配獲得以前に取得していた株式がある場合には、その支配獲得以前に取得した株式には、支配獲得時の「超過収益力」等が反映されていません。 またIFRSにおいては、支配獲得以前に取得していた「被買収会社の株式」も時価評価しますが、日本の会計基準ではそれは行いません。 したがって、日本の会計基準では、「支配獲得以前取得していた株式の価額」と「その株式を支配獲得時に時価評価した価額」に差異がある場合、その金額は「のれん」に含まれることとなります。 ◎株式交換により支配を獲得する場合 株式交換により支配を獲得する場合、親会社の株式は多くの場合割高になっている可能性があります。一方で被買収会社の株式は逆の場合が多いです。 となると買収の発表があった時点で、基本は交換比率は決まっております。 その買収の発表により、通常の場合両社の株価はあるべき株価に収斂されていき、支配獲得日には交換比率に基づいた株価になっているはずです。 すると「買収発表時の両社の株価」と「支配獲得日の両社の株価」は当然違っているはずです。 この場合、「支配獲得日の株価」の方がより株式の交換比率に基づいた株価を付けているはずであり、あるべき株価になっていると思われます。 つまり「時価評価」をどの時点で行うかにより「のれん」の評価額が変わる可能性があります。 【買収の実行(支配取得)及び経営統合】 買収の実行は被買収会社の株式を実際に購入する時であり、経営統合はその後の合併によるシナジー効果を出すために、上手いこと経営を行っていくということになるかと思います。 この段階では、「のれん」の評価は決まっており、影響を与えることはないと考えられます。 【まとめ】 長々と書きましたので、簡単にまとめます。 まず被買収会社の株式の評価は以下の合計になっていると考えられます。 ◎資産負債の時価評価(無形資産除く) ◎リストラ費用(負債計上された場合) ◎無形資産の時価評価 ◎超過収益力 ◎買収交渉に伴う価額の上下 ◎弁護士等の費用(IFRSでは入ってません) したがって、日本基準における「のれん」の中身は以下の通りです。 ◎リストラ費用 ◎無形資産の時価評価 ◎超過収益力 ◎買収交渉に伴う価額の上下 ◎弁護士等の費用 次にIFRSの場合 ◎超過収益力 ◎買収交渉に伴う価額の上下 このように考えるとIFRSの方がより「のれん」の定義に近い評価をしていると考えられるかもしれません。 [経理]カテゴリの最新記事
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