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カテゴリ:★★★★☆な本
北極グマの剥製に顔をつっこんで絶命した伯父。死んだ動物たちに夜ごと刺繍をほどこす伯母。この謎の貴婦人は、はたしてロマノフ王朝の最後の生き残りなのか?失われたものの世界を硬質な文体でえがく、芥川賞作家のとびきりクールな傑作長編小説。 <感想> ★★★★☆ 小川洋子さんの感想をUPするたびに、同じようなことを書いているような気が しますが、とにかく近著(『博士の愛した数式』『ミーナの行進』)と、それ以前に 書いていた作品の作風があまりにも違いすぎます。 長年の愛読者としては、それをこの場で否定したり、肯定したりするつもりは ありませんが、コビトカバにまたがって登校する微笑ましいミーナの姿を思い 描きながら『まぶた』や『ホテルアイリス』を読んだなら、おそらく小川洋子 さんが大嫌いになると思います。 できるならそういう思いを抱いてほしくな いなぁ~というもファン心理のひとつなのかもしれません。 さて、この作品の存在を知っていながら手を出さなかったのは、あらすじや 帯からグロさに打ち震えるコトを覚悟して読めというメッセージを受け取って いたからです。(汗) しかし、読みはじめこそ、多少グロ感が漂っていましたが、語り手の女子大生 がことのほか健康的なせいか作品全体は暗くありません。 語り手の義理の叔母に当たる「貴婦人A」がロシア皇帝の末裔では・・・という 物語の展開もコミカルだし、語り手の恋人ニコと剥製業者のオハラがクールな 文体に潤いを与えています。 以前、『凍りついた香り』の感想に新・旧の小川洋子ファンにオススメします♪ と書きましたが、それ以上に最近の小川作品に馴染んでいる読者でも受け容れ ることのできる作品だと思います。 とは言うものの、まだ小川作品を一冊もお読みになったことがないという方には 『博士の愛した数式』→『ミーナの行進』→『ブラフマンの埋葬』→『貴婦人Aの蘇 生』→『凍りついた香り』という順番をオススメします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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